第十二話:異母兄弟
今回は文字数少なめです。
会合が始まり一人ひとり席につく事になったその時に声をかけてきたものがいた。
「私も同行してもいいですか?」
兄の雅博に光彦は承諾を得てきたのだ。そばにいる菊理と百合絵は驚いた。普段は隅っこにいる分家の末端に連なる一家が本家の間近にいることに雅博、百合絵、菊理は落ち着かずにいる。
「私たちと一緒でよければ」
性格上、名誉や家柄などは家族の二の次である彼らにとって避けたい状況であるが、移動すると立場上が悪くなることはわかっている為、動くことはできなかった。
前に出てきたのは着物を着た男性だった。菊理は誰なのかと面識はないが知っていた。現当主の土御門定信が口を開いた。
「さて今回集まっていただいたのは皆さんもご存知の通り、妖怪に陰陽局を襲撃されたのが記憶に新しいでしょう。私たち土御門家は妖怪を退治することを生業としている陰陽師の家系です、なのにも関わらず新しくなった陰陽局の代理は敵と懇談する形を取ったのです。これは由々しき事態ではないでしょうか?一体どこに長年敵対関係にあった相手と話が通用すると思いますか?」
その言葉に聞いていた一族のものはうなづきながら定信の言葉に拍手という称賛を送った。
「代理に話してもこれはもう終わってしまったこと、ならば次の一手をどうするかと本家で考え、私の息子からある提案をいただきました」
定信の息子が前へと進み出た。菊理はその息子を見て驚きで目を見開いた。
『あの光彦って人、当主の息子さんだったんだ』
どの時代にも当主の息子だからといって当主になれるわけではない。二人はその当主としての素質が十分に備わっていたのだろう、通りで兄と姉が恐縮するはずだと思った。
「皆様、土御門光彦です。私が提案したのは少数精鋭のチームを作ることだと思いました。相手はあの鬼族、並の相手では務まらないでしょう、なので集まっていただき誠に勝手ながら一人選出いたしました」
『いたしました』という過去形に周りがざわつく。
一体誰が選ばれたのだろうと菊理はキョロキョロと見回していると光彦と目が合った。その時嫌な予感がした。
「紹介しましょう、百合絵さん、菊理さん、きてくださいますか?」
名前を呼ばれたので行かないわけには行かなかった。
「姉さん」
「…菊理、いくわよ」
百合絵が覚悟を決めて前に出て壇上に立つと二人は注目の的になった。
『あれは分家の百合絵さんでは、彼女なら心配ないだろう もう一人の子は?』
ヒソヒソと話をしているが、閉ざされた空間の中ではあまり意味をなさない。
当の本人は立っているだけで精一杯だった。撫子は自分より目立つ菊理を見て歯噛みするしかなかった。
「何かご質問はありますでしょうか?」
すると数人のものが手をあげた。
「私は分家の隆弘という者です。百合絵さんが選ばれたのは納得できるのですが、彼女はどのような功績を収められているのでしょうか?」
男性の指摘はなんらおかしい者ではない。菊理はごもっともであると心の中でうなづき、光彦の次の言葉をまった。
〇〇
光彦は注目される中、言葉を発した。
「確かにここにいる百合絵さんは優秀な成績を収めていますが、彼女はあまり表に出ていませんでしたが、ある活躍をされているんです」
それに一同はざわついた。彼女が一体何かしてくれたのだろうかと考える。不審から興味へと意識が変わった。
「それはなんですか?」
「皆さんは夏のあのVRMMOの事件を覚えていますか?」
それに何人もの人が声を上げる。
「ああ、覚えている あれか!?」
「あの事件の中で彼女は一役買っていたんです」
「ええ!?」
光彦からの思いもよらぬ言葉に皆が一同に驚愕する。あの大事件は誰もが魂を囚われてしまった被害者を救えないことを諦めてしまったものは少なくないだろう。それは不審や興味よりも、家柄など関係なく尊敬の念さえ抱くだろう。
「そうだったのか」
「あのお嬢さん、すごいわね」
人々が菊理のことを褒めるのに壇上にいる百合絵は妹のことを褒められて誇らしかった。
「彼女は百合絵さんの妹の菊理さんと言います。もしこれを知って異議を唱えるものがいれば私に直接言ってください」
にこやかに言っているが文句があるのなら自分を超えてみろと言っているんだ。手を挙げたものは先ほどの話を聞いて目の色が変わり、異議を唱えるものはいなかった。だが菊理だけが違った。
『誰か私に反対してよ あの事件、私はあまり活躍していないし、巻き込まれただけだし』
その時菊理は違和感を感じた。あのVRMMOの事件は機密事項で関わったものが限られていたはず。なのにどうして知っているのだろうと。菊理の情報網ではわかるはずもなかった。
それよりも誰か一人反対してくれたらと思いつつ、チームの一員になることに決まってしまった。
光彦の話が終わり、もう一人の男性が隣に立った。その人物に菊理はハッとなった。
自分を先ほど凝視されていた人物だったからだ。
「こんばんわ、今日は集まっていただき恐縮です。土御門健三郎です、チームに貢献したいと思います」
スラスラとまるでお手本のように話す彼に菊理はすごいと思った。彼は礼をすると元の位置に戻った。光彦の隣にいるから本家の人間なのだろうと菊理は思った。
〇〇
撫子は百合絵に呼び止められた。
「百合絵さん、頑張ってくださいね」
笑顔で言っているが、逆に不気味なほどである。
「ええ、頑張るわ」
ギリギリと聞こえてきそうだが、取り巻きを見ている中で無様なことはせず近くにいる当主候補の二人に挨拶をした。
「健三郎様も応援しております」
「ああ、ありがとう」
一礼して、撫子らがようやくいなくなったことに百合絵はほっとした。
「あの、初めましてですよね」
声をかけられたのは菊理、かけたのは健三郎だった。
「はい」
「私は土御門健三郎、光彦と母は違いますが兄弟になります、一緒に頑張りましょう」
「はい、よろしくお願いいたします」
菊理は差し伸べられた手を握り返したのだった。




