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第一話:鬼族の狙い



 陰陽頭(おんみょうのかみ)である安倍政則の号令の元に召集が開かれる。陰陽三家の賀茂家、土御門家、安倍家。そして陰陽寮の上層部に警察も呼ばれた。四神家はモニターで参加することになった。場所は陰陽局の上の階にある大広間で行われる事になった。




〇〇

 

 警視庁特別捜査課の一室で早朝から電話が鳴り響いた。発信者は自分たちの上司である井原警部だった。


「おはようございます、警部」


「ああ、朝からすまない 緊急な要件がでてしまってな」


「え、何か事件ですか!?」


「ああ、場所は陰陽局である 詳細は足立に伝えているから連絡するように」


「はい、了解です」


 立川は返事をして電話を切った。


『陰陽局というのは、もしかして妖関係なのか』


 ふと思い当たった時に少女のことを思い出す。高橋菜乃葉、兄を殺された女子高生のことを。足立が精神的なケアが必要ということで、妖怪関連ということもあり立川が担当している。


「気になるけど、まずは準備しないと」


 まずは顔を洗いに洗面場に向かった。洗い終えるとまずは足立に電話をするとすぐに出てくれた。


「あ、おはようございます 足立先輩」


「ああ、おはよう。 立川、すまないな今日は非番なのに」


「いえ、大丈夫ですよ とりあえずどこで待ち合わせしましょうか」


「そうだな…時間は正午だから11時に集合でどうだ?」


「分かりました、了解です」


 その会話を最後に電話を切った。


「よしまずは朝食を作ろう」


 朝ごはんを食べて時間が来るまでゆっくりとして支度を整え陰陽局に向かった。到着すると駐車場に多くの車にひしめき合っていた。ロビーに行くと、足立がもうすでに来ていた。


「おはようございます」


「おはよう、立川」


 軽く挨拶をして、話を進めた。


「それにしても車の数すごかったですね」


「ああ、そうだな」


 足立はそろそろと目を泳がせている。いつもは冷静な彼が落ち着かない様子に立川は気になった。


「先輩、どうしたんです」


「いや、ここはちょっと」


「そういえば、前もそんなこと言っていましたよね 大丈夫ですか?」


 心配そうに伺う後輩に足立は笑った。


「いや、悪い感じではない…多少落ち着かないだけだ」


「そうですか」


 本人が大丈夫だというのなら、立川はそれ以上追求はしなかった。上の階に行くとそこは数多くの人たちで溢れかえっていた。あまりの多さに右往左往しているとある人と目が合った。


「おお、久しぶりって、この前会ったばかりか」


 軽快な声で声をかけてくれたのは何かとお世話になっている加茂野照良だった。


「加茂野さん」


 立川は思わず声を上げた。足立は立川ので加茂野に気づき挨拶をする。


「この前はありがとうございます」


「いえ、それはこちらこそだ 俺たちがやったのは後始末ぐらいだったからな」


 あの花火大会の後で分かったのはあの夏に起きたVRMMO事件の犯人は後で判明する。その犯人が火原という鬼族だったということを。その鬼族は妖怪の中でも特殊らしく、というくらいにしか認識していない。そしてその数日後に至急開かれた会合にはいつにもましてひりつくような緊張感があった。


「そういえば、あの時退治したのは御影様でしたね」


「ああ、御影様がいなかったらどうなっていたことか」


 それを考えると立川は寒気がした。別のことを考えようと視線を逸らすと見覚えのある人物を見つけた。賀茂憲暁と賀茂秀光の二人の少年だった。


「こんにちは立川刑事」


「こんにちは、憲暁くんと秀光くん」


 名前で呼ぶのは親しくなったというほどではないが、賀茂という名字が多すぎるため名前呼びになったのは自然な流れである。


「今日は人が多いけど何かあったの?」


「それは」


 憲暁は事情を知っているのか。キリッとしたまゆは眉間に皺を寄せていた。彼の横にいる秀光がそれをフォローした。


「それはこれから話し合うと思います」


「そうだね」


 話はここまでにして、各々の自分の席に座って行った。


〇〇


 時刻は12時になり、会合が始まった。まずは40代くらいの水干姿を纏った男性が壇上に上がった。


「お忙しい中、集まっていただきありがとうございます。陰陽頭の安倍政則と申します。集まっていただいたのは火急の知らせがございます」


 その言葉に関係者がざわく。


「静粛に」


 低く通る声が響き渡る。静かになり、話を再開する。


「襲撃に遭い管理官の壺井がしばらくは出席することはできません」


 壺井という名前に、前の会合で壇上で話をしていた人のことを立川は思い出した。あの人が出れなくなったということは出れない状況になったということ。立川は不安に駆られた。


「襲撃をしたものは鬼族と呼ばれるものとのこと」


 鬼族は人の力を軽く凌駕してしまう。それが陰陽師であっても、力がなければ歯がたたない。しんと静まり返る中、政則は話を進めた。


「負傷した壺井の代わりに、代理をご紹介します。ここに」


 カーテンの奥から出てきた人影に皆がギョッとする。人の気配などまるでなかったからだ。そこには狐のお面を被った着物姿の男性が立っていた。その姿は関係者たちの注目を浴びた。




〇〇




 

 それは忽然と表舞台に現れた。


 骨格で男性だとわかった。背の高さは170ぐらいだろうか身長が高く、着ている服装が着物だった。そして顔にはお面が付けられている。どういう顔をしているのか関係者たちは気になった。


 男性は政則の隣に立つと一礼した。政則は返礼して声を上げた。


「それではご紹介します。壺井の代わりを務めることになりますリンドウと申します。以後お見知り置きを」


 いきなりの展開に関係者一同は状況についていけなかった。壺井が襲撃されたことは知っていたが、代理が紹介されるとは思っていなかったのだ。そして陰陽頭が狭間区との言葉に気になった。動揺や不安を鎮静化するために政則は質問を引き受けた。


「何か質問したいことがあれば今のうちにお願いします」


 するといくつかのものが手を上げた。


「練馬区所属の陰陽師の山内です。狭間区というのは公認の特区というのは存じているのですが…見たことがないのでどうにも信じられなくて」


 尻すぼみになる彼の言葉に『得体の知れない者に陰陽局を任せて大丈夫なのかと告げている』それに答えたのは政則である。


「それは私、陰陽頭が保証しましょう」


 しっかりとした政則の声に人々がざわめき出す。自分の肩書きをかけるほどの存在であるということをさしている。


「私よりもいえ、彼の方が数倍、いえ数十倍強いです」


 安倍政則、陰陽頭になる前から霊力、霊感、そして身体能力、頭脳、全てにおいて優れており、学生時代は神童と呼ばれていた。そんな人が推すほどの存在に誰が文句を言えようか、手を挙げていた人々も気持ちが鎮まったのか上げていた手をおろした。


「他に何か質問がありますか?」


 一人の人間が手を上げた。


「私は新宿区所属の陰陽師の川松です。陰陽頭自らが認められるほどということは分かりました。それと別なのですが、どうしてお面をされているのかお聞きしてもよろしいでしょうか?」


 それに政則が答えようとした時に隣にいた男性がマイクを握った。


「質問ありがとうございます」


 思った以上に若い声に足立と立川、憲暁と秀光、裕司と照良、集まったものたちは驚いた。安倍政則は齢47歳である。てっきり同じ年齢くらいかと思っていたが、先ほど聞いた声は若すぎないかと立川たちは耳をすませる。


「狭間区に住む住人は稀少な能力を持つ一族のため、その存在は秘匿とされています。狙われることを避けるために本来の姿を隠す必要があるのです」


 男性は嘘をついていない。稀少な能力を持つものもいるし、ただ人よりずっと長命で、強いものがいれば人間は忌避してしまう。それは自己防衛であることを理解していた。男性の説明を聞いて、新宿区の陰陽師は納得し席についた。


「他に何か聞きたいことはありますか」


 そして次に手を挙げた人物を見て男性はーー志郎はお面の中で目を見開いた。手を挙げたのは一人の少年陰陽師の賀茂憲暁だった。政則は彼を見て娘の許嫁を無視するわけにはいかない。志郎の方を一度見ると、コクリとうなづいたのを確認して彼の名を呼んだ。


「千代田区所属の陰陽師の賀茂憲暁です」


 賀茂家という名字に少し周囲がざわついた。賀茂家というのは陰陽三家の一つで大家である。そして憲暁は次期当主であるため注目を浴びた。けれど好意的な視線を向けるものもいれば、それ以外のものも少なくなかった。


『賀茂家はあんな若造しかおらんのか』


『栄華を極めていた大家とは昔のこと』


 そう揶揄する言葉を志郎の耳に届いた。志郎は賀茂家に対しての義理などはない。けれど朝日が幼児化してしまった原因は賀茂家にもあるため少なからず複雑な気持ちを抱いていたが、ゲームの中とはいえ身を挺して主人を庇った恩は忘れるなど薄情者ではない。


「…賀茂憲暁さん」


「はい」


「別件ですが、今年の夏に起きたあの大事件が起きましたね」


「は、はい」


 いきなり別の話になったことに憲暁は困惑する。


「あの事件を解決できたのはあなたが一役買ってくれたことを壺井から聞いています」


 志郎の発表に周囲は驚いた。夏に起きた不可解な事件は陰陽師でも不可思議で危険な事件だと誰もがわかっていた。魂を獲られるということは肉体の死につながる。それすなわち自死である。


 陰陽師であっても尻込みするものがほとんどだった。あの事件は謎が多くて誰が解決をしたのか情報は秘匿されていたからだ。けれどその謎が一つ公開された。


 憲暁を見る視線がガラリと変わった。それを志郎は肌で感じ取った。陰陽師も一人の人間である。あの事件で死傷者が出なかったということはあの事件を解決したものが尽力したからに他ならない。


「いえ、私は何もできませんでした」


 憲暁はあの時のことを思い出す。自分ができたのはあのアキと名乗る少年を身を呈して庇ったことぐらいである。

憲暁は自分が成果を上げて家を再興させたいうという思いを幼少期から抱えている。それにプレッシャーも大きい。


「責任感を持つことはいいことだと思いますが…自分を褒めることも大事ですよ」


「!…はい」


 志郎からの労いの言葉に憲暁は自然と顔をほころばせた。


「話は戻りますが、質問でしたね」


「はい、今回鬼族の襲撃のことですがどうして襲われたのか、そして狙いはなんなのかと」


 それに志郎は政則と口裏を合わせていたので躊躇いなく答えた。


「それは先月にとらえた鬼族の解放です。そしてそれを叶わなかった場合、人間を一人一人殺していくと、そして鬼族をとらえた者に興味を持ったこと」


 憲暁たちはその場にいたので知っているが周囲のもの達は鬼族を誰を捕えたのか知らなかった。


「鬼族を捕らえたのは御影様という守り人です」


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