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第四十五話:夜を照らす大輪の花



  戦いは終わった。林を抜け出すと志郎の姿があった。そして陰陽局のものたちが控えていた。志郎は朝日と藤次郎の戦いに邪魔をされず、朝日の仮面が取れて正体がバレないように結界を張っていたのだ。


「志郎!」


 朝日の声に志郎は気づき駆け寄った。


「大丈夫でしたか?」


「うん、僕は大丈夫だったよ、みんなも」


 後ろには火原を抱えた藤次郎と、聖子と安久がいた。


「どうやら、色々とあったみたいですね。聖子さんもご無事で」


 志郎は聖子を心配そうに見つめる。それに聖子は申し訳なさそうに頭を下げた。


「済まなかった、心配をかけて」


 聖子が力を使ったことは志郎にもわかっていた。そして駆けつけることができなかったのは人間たちを守ることができなくなるからだ。


「いえ、何事もなくて良かったです、それで聖子さんの隣にいる彼は」


 いきなり話を振られた安久は志郎に向かい挨拶をする。


「私は高橋安久と申します…鬼族です」


「鬼族…」


 志郎は青野として変装していた時に安久と一度接触している。安久は志郎にあっても青野とは気づかなかった。


「安久の主人がそこにぐるぐるまきにされて気絶している男だ」


「この者が」


「その男は朝日様を捉えようとしていた」


「ほう」


 飄々とした声から声色が変わり安久はゾッとした。何かこの畏怖感は覚えがあり嫌なものを思い起こさせる。


「それではこの男に事情聴取をしないといけませんね」


 にっこりと微笑む志郎に朝日は敵であるが火原に合掌した。ふと周りを見るとそこには陰陽局のものと警察のもの自分たちを凝視して話し込んでいた。


「あれが噂の狭間区の御影様!?」


「うわ、初めて見た」


「ご利益ありそう」


 なんだか上野動物園のパンダになった気分の朝日であった。そしてじっとこちらを見ていたものがいた。


 その顔に朝日はお面の下で顰める。憲暁と秀光、阿倍野と加茂野、そして足立と立川だったからである。


「ご苦労様でした。怪我とかされていませんか」


 話しかけてきたのは阿倍野である。


「はい、多少怪我をしかしたが大丈夫です」


「そうでしたか、それは良かった」


 心からの言葉に朝日は嫌な考えをしたくないがじっと見られるとどうしても気になってしまう。


「なんですか?」


 御影様に話しかけられた憲暁は肩を揺らす。


「まだ何も言ってないだろ!?」


「それじゃジロジロと見ないでください」


 喧嘩腰に言う朝日に憲暁は反論しようとするがグッと堪え、気持ちを抑える。今すべきことはそれじゃないと憲暁はそこまで子供ではない。


「わ、悪かったな それで今回の首謀者はどこにいる」


「今回の首謀者はそこにぐるぐる巻きにされている男ですよ。それとー」


 朝日はチラリと安久を伺う。いくら聖子の親しい者であってもやっていたことは消えない。安久は朝日が気遣っているのが分かりこくりとうなづいた。


「私も彼と同罪だ」


 安久の告白に阿倍野と足立はうなづいた。


「なら彼も事情聴取ですね」


「あと、林の奥でもう一人眠っているんですが、彼が起きたら告げてほしいことがあります」


「なんだ」


「娘さんを家族を大切にしてくださいって」


 火原と安久は人間ではないので陰陽局が、山田は人間なので警察が対応することになった。朝日は花月たちがどうしているのか気になり念話を送った。


『真澄』


『朝日様、ご無事でしたか?』


『うん、僕は 聖子さんとかも大丈夫だよ』


 聖子という名前に真澄は反応する。


『聖子さんは無事でしたか』


「うん、無事だよ」


 真澄は聖子の妖気が暴走していることを感知していたが花月たちを守るこで身動きが取れなかった。


「ありがとう、水汀」


「いえ」


 主人に本当の名前を言われた真澄は嬉しそうにほおを赤らめる。


「それとはなちゃんたちはどうしている?」


「あ、はい 花月さんたちは烏丸さんたちと楽しそうに屋台を回っています」


「そうか、良かった。僕もそっちに向かうから」


「はい、お待ちしています」


 真澄との念話が終わった時だった。安久が陰陽局のものに連れていかれそうな時だった。朝日は聖子に目がいった。何かを耐えているようにどうしたのかと見ると安久を見ていた。



「聖子さん」


「あさ、御影様」


 つい公の場で名前を言いそうになる聖子だがなんとか御影様の名を呼んだ。人が近くにいなければ朝日の名前を出せるのだが。それに朝日は苦笑する。


「そばにいてあげて、彼の元に。彼を一人にしたらダメだ」


「ですが、私は」


 いつにない朝日の強気な口調に聖子は戸惑う。聖子は一時的とはいえ感情的になり妖気を暴走させてしまったという負い目があった。


「僕からの命令だ、いいよね。志郎」


 朝日の眼差しに二人の動向を見守っていた。志郎は目をふせる。


「しょうがないですね、主人の命令ならば」


 聖子は朝日と志郎の言葉に押されて前へと進み出た。


「あの、私も一緒に行けませんか?」


 声をかけられた阿倍野と加茂野は驚く。


「あなたはえっと?」


「私は真砂聖子、彼の知り合いだ」


「分かりました、一緒にいきましょう」


 そして気を失っていた豊島は発見され警察病院へと搬送された。



〇〇



「はあ、朝日ちゃん…。ちゃんと友達と会えたかな」


 麻里子は残念そうに口をひらく。


「ふふ、会えていたらいいね」


 花月はそう話しながら気が気ではなかった。確かにせっかく知り合った菊理と遊べるようになったのに、花月も妖気を感知してそれどころではなかった。それは桃華と菊理も同様である。


 何があったのかわからないが前よリも空気が柔らかくなったことに事件は終わったらしいと胸を撫で下ろしてせっかくの花火大会である屋台にあるかき氷やイカ焼きなどに舌鼓を打つ。そして時刻は9時になった頃だった。


「それでは、最後の花火となります」


 女性のアナウンスが流れた。


「ただいま、はなちゃん!」


 その声に花月は振り返ると別れたはずの朝日がいた。


「あれ、朝日ちゃん!?」


「うん、えっと…友達は少ししか遊べなくて。もう帰っちゃったんだ」


 残念そうにいう朝日に花月はそうだったのかと納得した。


「そ、そうなんだ」


「良かった、一緒に花火を見ることができて」


「うん」


 朝日の言葉に花月は嬉しそうに笑った。菊理たちと一緒にみるのもいいが、友達と約束していたらのならしょうがないと思っていたのだ。嬉しい誤算である。


 空を見上げながら一つ二つと炸裂した音が鳴り響き、夜空を鮮やかに光る大輪の花が周囲を明るく照らし、大勢の観客たちを喜ばせて大盛況で終わりを迎えた。


花火大会イベントなんとか書けて良かったです。

海、水着イベントがゲーム事件でなくなってしまったので(-。-;

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