第四十話:菊理、憲暁と鉢合わせする
いいタイトルが思いつきませんでした。思いついたら変更します(^_^;)
花月たちは屋台を見ながら回っていると一人の少年にぶつかった。ぶつかったのは菊理である。
「あ、すみません」
「ああ、こちらこそすまない」
菊理はペコっと頭を下げるだけでよかったのだが聞き覚えのある声に顔を見た。
『まさか こんなところで』
そこには見覚えのある顔があったのだ。菊理が引きこもりになった元凶がそこにいたのだ。菊理が憲暁の顔を見たまま顔が固まっていると憲暁は不思議そうに首を傾げる。
「お前、どこかで…」
憲暁が思い出そうとした時だった。
「菊理ちゃん〜!」
その声は花月たちだった。菊理がいないことに気づき戻ってきてくれたのだ。
「あ、はなちゃん」
「どうしたの」
菊理が申し訳なさそうに花月達に説明した。
「えっと、私がこの人にぶつかってしまって」
花月たちが憲暁の方を見た瞬間一人が声を上げた。憲暁の後ろにいた秀光だった。
「あれ、君たちこの前あった。確か平野さんだったかな?」
「え、はい、覚えているんですか?」
「うん、可愛いなって思っていたから」
「か、可愛い…」
可愛いと真正面からあまり言われたことがない花月はほおを真っ赤に染める。そのことに花月の後ろにいた朝日にとって非常に妬ましい光景であった。じっと黙っていることなんてできなかった。
「久しぶりですね、賀茂秀光君でしたっけ」
「ああ、君もいたんだね。代永朝日ちゃんだったかな」
「はい」
朝日は淡々と返事をするとじっと凝視してくるものがいた。それに気づいた朝日は面倒臭そうにちらっと見た。
『何だってこっちを睨むんだよ』
あまり面倒なことに関わりたくない朝日だが憲暁から声をかけられてしまう。
「聞きたいことがある」
朝日は話しかけられたので無視するわけにはいかないと仕方なく答えた。
「誰に聞いているんですか?」
自分に聞かれていることは分かっていたが、憲暁に対しつっけんどんに話す朝日に麻里子と友希子は驚いた。
友希子は花月に話をした。
「知り合い?」
「え、うん、知り合いなんだけど、ちょっと仲がよろしくないというか」
「へえ、珍しいね 代永さんが感情的になるのって」
「そうだね」
そういえば、と花月は朝日が口調を荒げるのはあまり聞いたことがない、というか皆無に近かった。
「よ、代永さん、あなたに聞きたいことがある」
「…何でしょう」
一応話を聞く態度の憲暁に朝日は渋々とうなづいた。
「つい最近のことなんだがオンラインゲームをしたものが巻き込まれた事件が大量発生した」
「ああ、それは知っていますよ 結構ニュースが取り上げられていましたね 犯人は捕まったそうですね」
「…ああ」
実際に犯人は朝日に対峙されて亡くなったのだが。
「そこで俺はその人に助けられたんだ、だからお礼を言いたい」
その言葉に朝日は嬉しく感じた。
「代永さんに行ったのはその時のアキっていう少年に似ていたからだ」
憲暁の心からの感謝の言葉に朝日と真澄は胸が高鳴った。そしてそれを聞いていた花月、麻里子、桃華、菊理もである。
『その名前って確かあの時の』
花月はアキと聞いて思い出す。
「そうだったんですね 一人っ子ですし似ている親戚もいません」
朝日はバッサリとフラグを折った。
「そ、そうか」
黒髪で黒目であるが彼は男性だったのだ。だが目の前にいるのは女の子にしか見えない。
「え、でもアバターって性別変えられるよね」
余計なことに気づいたのは秀光である。そのことを忘れていた憲暁ははっと思い出す。
「確かにそうだな」
二人の会話を聞きながら花月はどこかで見たなーと思い出そうとした時だった。浴衣の袖を引っ張られた感触に何だと思い見ると菊理だった。ふと顔を見ると菊理の顔が真っ青になっている。
「どうしたの?菊理ちゃん」
「っ えっと、ちょっと体調が」
「そうなの 休憩所に行く?」
その言葉に申し訳なさそうにこくりとうなづいた。それを近くに聞いていた朝日はすかさず発した。
「すみません、友達が気分が悪いみたいなので ちょっと休憩所に行ってきます」
「え、あ、ああ」
朝日は憲暁たちに挨拶をして花月たちの元に向かった。
『ふ〜、助かった』
朝日の後ろ姿を見ながら憲暁はしわを寄せた。
「ああ、ふられちゃったね」
「は? なんでふられているっていう話になるんだ?!」
そういうムキになるところが図星なのだろうがと秀光は思ったが逆上するのは目に見えていたのでやめた。
〇〇
休憩所に行くと各々の人たちが休んでいた。その一か所を借りて花月は菊理を座らせた。
「みんな、ごめんね 楽しんでいる時に」
「いいよ 体調が悪い時は誰でもあるから」
「ありがとう」
桃華は菊理の動揺する表情や言動を見てもしかしたらと思い、口を開いた。
「もしかして、あいつなの?」
菊理は肩をこわばらせる。
「あいつってさっきいた人?」
花月は憲暁か秀光のことなのかと思い出す。桃華はどちらに元凶があるのか推察する。
「賀茂秀光は賀茂憲暁の従者で、胡散臭いけど口調は丁寧ね、となると彼しかいないわね?」
「は、い」
桃華に言い当てられた菊理は苦笑するしかない。花月は菊理と憲暁が知り合いだと思わなかった。
「知り合いだったの?」
それに菊理は少し遅れて首を傾げた。
「…向こうは私のこと覚えているが分かんないけどあの感じだと忘れられているかな…?」
花月は菊理が引きこもりになった経緯を知っている。その原因を作ったのが憲暁だったのかと驚愕する。そして菊理とは仲が良くなった分に複雑な気持ちになる。
頼りなさそうに笑う菊理に花月はどういえばいいかわからなかった。桃華は菊理を見て目を細めた。
「今も怖い…?」
桃華の言葉に菊理は素直に笑った。
「今ですか……。
最初は怖かったんですけど、みんなが一緒にいるので」
「ならいいんじゃない…それで」
「え」
「あんたはもう一人で悩まなくていいんだから」
温かい言葉が菊理の強張った心をほぐしてくれる。それに花月たちはほっこりとした。
「さすが、師匠です」
「師匠って?」
友希子はその面白そうな呼称に首を傾げた。花月はそれにどう説明しようかした時に真澄はあることに気づいた。
「それにしても休憩する人、多くないですか?」
ちらほらと見ると女性ばかりである。そのことにあまり違和感を感じなかったのだが一人の少女が人を連れて駆け込んできた。
「すみません、ちょっと通してください」
その声に聞き覚えのある花月、朝日、真澄、桃華は一斉にそちらの方みた。彼女は確かと。
「霞ちゃん!?」
自分の名を呼ばれて振り向いた。すると知っている顔に霞は驚いた。
近くにいた看護師に病人に症状を言って渡した。
「すみません、彼女に手当を」
「はい、わかりました」
霞はすぐに花月たちの元に向かった。
「お久しぶりです、花月ちゃん 代永さんに白河さんですね」
「はい、そうです お元気そうで」
花月は気になっていたことを聞いた。
「葵ちゃんは元気ですか?」
「え、うん 元気ですよ たまにあなたに会いたいって言っています」
「そうなんですか」
そのことになんだか嬉しくなり花月は久しぶりに会いたくなった。