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第三十七話:上の空

本編に戻ります。



 花月はいつも通り朝を迎えて行ったまでは良かったのだが今日の彼女(朝日)の様子は違った。どんよりとした顔の朝日に花月は大丈夫なのかと尋ねても大丈夫の一点張りである。


 よほどショックのことがあったのだろうと花月は真澄や志郎に聞いてみた。


「ああ、少し私の息子がきついことを言ってしまったらしく落ち込んでいるんです。私も注意したのですが、電話をしても連絡がつかないのでどうしたものかと」


 志郎の眉が八の字になりため息をついた。


「それに私にも原因がありますので、すみません」


 大の男に朝から頭を下げられて花月は慌てた。


「いえ、早く良くなるといいですね」


「ええ」


 それに志郎は深くうなづいた。志郎のそばで聞いていた真澄と香散見と合歓も。そして花月たちはご飯をたべ学校に向かう途中、いつもの花屋さんに挨拶をした。



「おはようございます、りんさん」


「おはよう、はなちゃん、朝日ちゃんに真澄ちゃんも」


 それに朝日と真澄は挨拶をした。


「おはようございます」


 3人の顔を見た瞬間にりんはじっと一人の顔を見つめた。じっと見つめられた朝日はたじろいた。


「な、何ですか」


「何かあった?」


「え、いや 何でもないですよ」


 その言葉に思わず吐露しそうになったが、周りに朝日と真澄がいることにグッと堪えた。


「いえ、大丈夫です」


「そう、本当に?」


 やけに聞いてくる彼に朝日は困惑した。


「本当に大丈夫です」


「そう、本当に悩んでいたら何でもいいから相談してね」


 優しく言われたことに朝日は何だか恥ずかしくなった。いつも花月に話しかけるのが多いので気恥ずかしい気持ちになった。


「それじゃ気をつけてね」


「はい、行ってきます」


 りんと別れを告げて朝日たちは学校に向かった。その後ろ姿をりんはずっと見つめていた。




 花月はりんが朝日が悩んでいることを気づいていることに驚いていた。


『どうしてわかったんだろう』


 小さい頃からずっと見てたからからなのか、それでも意外感は消えなかった。



〇〇


 りんに言われた朝日もまた衝撃だった。自分の顔をグニグニとするが何も変わりがない。


「私、何か変な顔していますか」


 聞かれた花月と真澄は何とも言えない表情になる。それに花月は口を開いた。


「う〜ん、一見は普通なんだけど やっぱずっと見ていると落ち込んでいるのはわかるんじゃないかな」


 花月のもっともらしい意見に朝日は苦笑する。


「そっか、私、よっぽど暗い顔をしていたんだ」


「はい、ですが あれは避けては通れないことですし」


「そうだね」


 朝日と真澄の話に花月は何だがあえて口を出さなかった。そうして学校につき、桃華、友希子、麻里子と会い、昼休みはご飯になった。


 そして唐突に話を提案するのが麻里子なのだが。


「今度、隅田川で花火大会があるんだけど一緒に行かない?」


「花火大会?」


 それに答えたのは花月である。


「そう、今度の月曜日にあるらしんだけど ここにいるみんなとどうかなって」


 ここにいるのは花月、朝日、真澄、桃華、友希子の5人である。大人数で行くのなら花月はつい最近友人になった子のことを思い出す。


「あ、他にも人を呼んでもいいかな?」


「お、いいよ じゃんじゃん呼んでいいからね」


 桃華は花月が誰を連れてきたいのか気になった。


「一体誰を連れてくるの?」


「うん? あの子なんだけど」


「ああ、あの子ね いいんじゃない」


「うん、一回連絡してみる」


 それに聞き耳を立てていた朝日は『あの子』が気になってご飯が喉を通らなかった。



〇〇


 あの子というのが気になった朝日は花月に聞いた。


「えっと彼女と出会ったのはゲー」


 その時、桃華の手が花月の口を封じたのだ。


「ふへ!?」


 いきなりの口封じに花月はなんだと驚く。


「ちょっとごめん」


 桃華は花月に耳打ちする。


「それ言ったらまずいでしょ、そのことを知ったら」


「あ、」


『そういえば』


 意識を失った麻里子を助けるためにゲームの中に潜入することになり、そこで出会ったのだ。けれど花月は朝日に行くことを伝えていなかった。


 そんな危険なところ一緒に行こうと言えないし、危険な目に合わせたくなかった。みんなは花月は言いかけた、ゲの続きが気になり見つめていた。


「えっと、ゲームセンターであったの、ものすごくうまい子がいて すごいな〜って見ていたら、桃華ちゃんも気になって、ね」



 それに話を合わせるようにこくりとうなづいた。


「へえ、そうなんだ」


「それじゃ その子も連れてくれば」



「うん、連絡してみる」


 花月が嘘をついたことに気づいているのはあのゲームの中にいた朝日と真澄である。


『まあ、バレたくないだろうね あんな危険な中にいたら絶対に志郎に説教されるだろうし』


 それに真澄は心の中でうなづいた。


〇〇




 花火大会に行くことになり学校にいない糀と聖子も集まった。朝日、志郎。真澄、糀、聖子、志郎の娘の香散見と合歓の7人である。


「さて今年の花火大会は隅田川で毎年恒例で行われますが 8月の祭りは台風で延期となり、9月となりました。それですこやか保育園の子供達も先生を引率して遊びに行くのですが人が多いと身動きが取れないでしょ。もしもの時のために【限定解除】ができます」


「!」


 限定解除というのは普段妖力を封印している彼らだが、本来の姿に戻ることを指す。香散見はそのことを隣に座っていた聖子に話す。


「それなら何かあった時にいいですね 聖子姉さん」


 同意を聖子に求めるが返事が返ってこなかった。聖子はどこか上の空である。


「聖子姉さん!」


「…え」


 呼ばれていることに気づいた聖子は、みんなからじっと見られていることに気づきハッと我に返った。


「すまない、ぼっとしていて」


 歯切れの悪い回答に何だか気まずくなる。


「大丈夫?」


 朝日は心配そうに伺う。それに聖子は目を見開きふっと笑う。


「はい、大丈夫です」


「なんかあったら言ってね」


「はい、わかりました」


 それから滞りなく、会議が終わり朝日と真澄は花月たちと聖子は周辺の異変があったら知らせる、糀は園児たちの護衛、香散見と合歓は朝日の護衛となった。


「あ、そういえば兄さんどうするんです」


「私から話をしておきましょう」


 その後、藤次郎に電話をして用件を伝えた。


「わかりましたの」一言だけ、機械的な返答に志郎はため息をついた。


〇〇



 藤次郎のことも気になったが、朝日は聖子のことが気になった。


「何か聖子さんの様子がおかしくなかった」


 聖子に異変に気づいたのは香散見だった。


「なんていうか上の空というか」


「あれは恋する乙女ね」


 それを聞いていた朝日は驚いた。


「え、聖子さん 誰かに恋をしているの?」


 朝日の驚きように香散見はおかしそうに笑った。


「それは誰でも、恋をするのは自由じゃないんですか?」


 何ともないことのようにいう香散見に朝日はそうだねと返すのが精一杯だった。




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