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第二十七話:重吉の正室、桃子


 そして、いよいよ御曹司の家に正室がやってきた。

 名は桃子。その女性は公家の5人娘の末っ子であり、両親から大層甘やかされて育ったからなのか高飛車でプライドが高い性格であった。


 位は嫁のほうが高いため、義理の父となった御曹司の父親と母親も反論することができなかった。


 重吉は正室が来た途端に聞いたことがない優しい声に近くで聞いていたキヨは唖然とする。


『ちょっと別人じゃないわよね』


 思わずキヨはじっと凝視するが本物である。それにしてもあんな猫撫で声で言われたらと思うと鳥肌が立ってしまった。


 使用人を連れてミスから出てきた桃子の顔は垂れ目でまる顔、余分なものを食べているのだろう、桃のようにふっくらとしたふっくらとした体つきであった。


「ようこそいらっしゃいました、桃子どの」


「ああ、お久しぶりです重吉さま いえ、今日から旦那様と呼ぶべきなのかしら」


 桃子の言葉にそばで聞いていた重吉の両親は嬉しそうに声を上げた。


「ふふ 仲が良いことね 二人ともお似合いよ」


「まあ、お似合いだなんて」


 桃子の様子から見て、彼のことを気に入っているのか嫌なそぶりも見なかった。


 これならこの二人をくっつけた方がいいのではとキヨは考え、重吉の顔を見るが目は笑っているが口元は引き攣っていた。


 新しい奥様が来たばかりだというのにその顔はまずいでしょとキヨは先が思いやられられて不安になる。


 貴族の結婚はほとんどが政略結婚である。当事者ではなく、家長(かちょう)または親権者が自己や家、または一族の利益のために当人たちの意向を無視してさせる結婚、政治的な駆け引きとして決めてしまう結婚のことを指す。


 今回は桃子の家が大金持ちのため、貴族だが田舎に住んでいる鈴木家は経済的に乏しかった。それでも農民に比べたら十分に贅沢な暮らしをしている。そして彼の隣にいるキヨを見て桃子は声をかけた。


「この女性は?」

 

 キヨのことを聞かれた御曹司の母親の桐子は答えた。


「はい、その娘が重吉の側室になります キヨという娘です。早く首を垂れるように」


 桐子の強烈な目線に、慌てたように装ってキヨは頭をさげた。


「キヨと申します」


「ふ〜ん、あなたが側室ね」


 初対面なのに上から舌を見下ろすような不躾な視線にイライラが募る。夫婦揃って私がそんなに珍しいのかと思った。


「どんな娘かと思えば、ふ〜ん」


「この娘は色々と料理、洗濯、掃除、裁縫など色々とこなしてくれるので助かっています」


「そうなのですね」


 キヨの扱いを聞いた桃子は自分の方が上だと優越感に浸った。人を使用人扱いしないでくれと言いたいが、重吉の相手をしているよりははるかにマシである。


「これからは私が正室になるのだがら、あまり調子に乗らないでよね」


 ふんと鼻で笑う桃子にキヨは心の中で『どうぞ、どうぞ』と思いながらうなづいた。


 こうして滞りなく、二人の結婚は終わりつつがなく初夜を迎えたのだが、それ以外は正室の寝所に行こうとしない。キヨに言い寄ってくるのである。そしてキヨは一緒に寝たくもないので眠らせる。そして私に対して正室は苛立つのであった。その繰り返しである。


 悪循環に疲れてしまったキヨはそろそろいいかしら、もう貰えるだけ貰ったし、母と父も結構いい暮らしができるているみたいだし。


 キヨは何度も考えていたある計画を実行することにした。それは重吉の精気を奪っていくことだ。自分が性の対象でなくなれば向かうことはなくなるだろうと考える。


 御曹司が来るたびに気づかれないうちに精気を振り絞っていき、やがてキヨの部屋に来なくなった。



 だが予想外なことが起きたキヨが精気を絞りすぎてしまい、顔色が悪くなってしまう。桃子は心配になり医者に診てもらうことになった。



〇〇


 医者が重吉の容体を調べるが何が原因なのか判明しなかった。それならと母親の桐子は京から腕のいい医者に来て貰えばいいと思ったが、


 この鈴木家に嫁ぐときに山をいくつも超えてようやく辿り着いたのだ。京にはたくさん腕のいい医者はいるが、その間容体がどうなっているのか不安になる。


『病気が原因じゃなければ 一体』


 一向に治らないのを診かねた医者はこう呟いた。


「医者でも治せないと、物怪の仕業では」


「物怪?」


 桐子と重蔵は化生の類など生まれて診たことがなかった。そんなバカなと言いたいが、無碍にすることはできなかった。


 医者は何かできないかと考え、あることを思い出した。


「そういえば熊野から参詣に来ていた修行僧が隣の村長の屋敷に来ているみたいですね、そこの娘さんが物怪がついていたみたいなのですが その僧が退治したとのこと、それからその娘さんは回復して元気な姿になったそうです」


「それは本当なの!?」


「はい、私もにわかには信じ難いのですが」


 その話を聞いた母親は藁にもすがる思いで使用人を呼んだ。急いで手紙を書かせた。


「今すぐ隣の村に行ってきて、その僧を呼んでくるように!急病人がいるといえば下手に断らないはずよ」


「かしこまりました」


 屋敷の中で足がはやい飛脚は支度を整えてすぐに向かった。その様子を影から見ていたキヨは青白い表情をする。


『やばい、やばい どうしよう』


 キヨは耳がいいので、桐子たちが何を話をしているのか一言一句聞き漏らさなかった。その能力が仇になり、みるみる顔色が悪くなっていく。


『嘘でしょ!?ここに僧がやってくるの』


 ここから逃げたほうがいいとすぐに考えるが、父と母はこのことを知らない。もし自分の正体がバレると両親が危なくなるかもしれない。キヨは身動きが取れなかった。


 どうしたものかと考えていると、使用人から声をかけられた。



「キヨさま お呼びです」


「はい…かしこまりました」


〇〇



 一方大急ぎできた使用人は隣の村までに半日でたどり着き、屋敷へと向かった。


 しかし屋敷の周りは人だかりができていてまるでお祭り騒ぎである。使用人は仕事でなければ、混ざりたいぐらいだがクビになりかねないと気を引き締めた。噂を聞きつけて物怪を退治にきた僧を見にきたんだろうと考える。


 使用人は門番に桐子が書いた手紙を渡すと門番が使用人に、使用人が村長へと渡した。


「旦那さま、隣の村から使いの者が来たのですが」


「何? 隣の村から?」


 隣の村であってもあまり交流のないのに、一体何事だと村長は手紙を読み上げる。


「ふむ、隣の村の息子殿が物怪に憑かれたかもしれないと、これは一大事!すぐに安珍様をここへ」


「はい、直ちに」



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