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第十四話:青野


 立川と足立はひとまず上司に現状を報告して陰陽局に派遣してもらうことになった。警部は陰陽局に電話をかけた。


『すみません、お忙しいところ』


「いえいえ、お互い様ですよ。何かあったのですか?」


『実はあの事件の共犯者を捕まえるために陰陽局の人員を派遣してもらいたいのですが』


「担当は阿倍野裕司と加茂野照良でしたね。代わりのものを手配しますので」


「よろしくお願いします」


 話が終わり警部と話していた陰陽局の管理官、壺井桐枝は電話を切った。





「すみません、話の途中に」


「いえ、お仕事中にきたのは私ですので」


 彼が謝ったのは向かい側に座っているものにである。スーツ姿をしてメガネをかけた志郎だった。髪色もやや変えており、普段はメガネをかけてないが変装に役に立つのでしている。


 志郎が陰陽局にきたのは朝日達が個人で使っていたVRデッキを返すためである。壺井を幼い頃から知っているのでお互いに花を咲かせている時に電話がかかってきたのだ。


 聞き耳を立てるつもりがないが人より数倍もいい聴力は何を話をしているのか筒抜けであった。聞こえなくても志郎は読唇術もできるのだ。


「すみません、盗み聞きしたくなかったのですが 阿倍野さんと加茂野さんたちは大丈夫でしょうか?」


「はい、今朝起きたばかりで、健康そのものらしいのですが、様子を見て復帰してもらいます」


「そうでしたか、良かった」


 志郎はもともとあまり感情を表に出さない、何かと心配をかけることが多いのは朝日の突飛な行動が主に原因である。肩の荷が降りたように見えたのが壺井の目からも分かった。


「何か心配事がありましたか?」


 壺井は気になって志郎に聞くと彼は少し逡巡し、おもむろに口を開いた。


「いえ、ゲームの中、あの大王の奇襲から朝日様をかばった時には流石に肝を冷やしました」


 目を瞑る志郎に壺井は目を細めた。


「それはまた…」


「憲暁君の血に塗れた背中を見てしまい、感情の箍が外れてしまい そして、朝日様は姿を変えて、大王を倒したーーですが」


 志郎の苦悩に満ちた声で吐いた。


「私はもうこれ以上憲暁君と関わるのは危険すぎると判断しました」


「…」



「ですがそれは私のわがままです」


 グッと拳を握る志郎に壺井は静かに話を聞いた。


「わがままだと分かっているのですが、もうあの時のような思いは」


「あの時とは…?」


 壺井は志郎との付き合いが長い。何を悩んでいるのか分かったがあえて聞いてみた。


「はい、朝日様が150年前のあの事件で重傷を負い、体が弱体化しました。でもその原因は当時の賀茂家の当主を助けるために彼を庇ったからです」


 壺井も朝日がどういう人物なのか直接はあった事がない。人となりしか知らない。


「それにそっくりなんです。あの時の当主の顔と憲暁くんの顔、すぐに彼の子孫だと分かりました」


 自分が同じ立場だと考えると何がなんでも彼を憲暁から遠ざけるように仕向けるだろう。志郎には幼い頃からお世話になっているので壺井は何かできないかと考えた。


「それでは、私も協力いたします」


 壺井の言葉に志郎は目を見開き頭を下げた。


「よろしくお願いいたします」


 深々と頭を下げる志郎に壺井は思った。


『こんなにも志郎様が尽くされる朝日様とは、一度会ってみたいものですね』


「そうだ」


 思い出したように志郎が壺井を尋ねた。


「先ほどの、阿倍野さんと加茂野さんが出れないんですよね」


「ええ」


「共犯者の後を追うためにフォローは必要なはず……私じゃだめでしょうか?」


「え」


 まさかの申し出に壺井は考えたが、渋谷での映像が流れたことで人員は割いていたので余裕がなかった。ありがたい申し出に快くうなづいた。



〇〇



 志郎は家に帰り、学校から帰ってきた朝日に憲暁達が無事なことを知らせた。


「そうなんだ 良かった」


 普段は顔を合わせるだけで歪みあってしまうが、自分を庇って負傷を負ったことに朝日は負い目を感じていたので本当に安堵した。


「それにしてもまさかあいつが僕を庇うなんて思わなかった」


「咄嗟の行動だったのでしょう」


 その当時のことを朝日は思い出す。


「それに…」


【誰か前にも同じような事があったような覚えが…】


 チリつくような胸の痛んだ瞬間に声をかけられた。それを何か思い出しそうな時に遮るかのように志郎が声を上げた。


「大王が倒された後は傷が治ったらしく少し休養したら復帰するとのことです」


「そっか…それじゃひとまずはひと段落なのかな?」


「はい、そうですね 明日から大王の共犯者を探すために警察のフォローに入ります」


「え、志郎が?珍しい」


 朝日は目を見開いた。


「はい、阿倍野さんと加茂野さんは生身の体なので、一時的に魂と体を切り離しているので時間は必要でしょう」


「え、でも僕普通に動けたけど」


「それは朝日様が妖の血が入っているからかと」


「なるほど…」


 人間と妖、身体能力はやはり妖の方が数倍高い。そして生命力も。


「夕食にうどんとかどうですか?」


「うん」


 そう言って志郎は台所に向かった。朝日は自分の部屋に戻ろうとした時志郎の様子に違和感を感じた。


『ふわっとしたものなのだが、いつもより目を合わせなかったような。何かを隠している…』


 朝日はそう考えたが志郎が隠していることを無理やり暴こうとは思わなかった。少し元気がなさそうに見えたのが気になったが朝日はあえて気づかないふりをした。




〇〇



 翌日になり志郎は朝日と花月、真澄を学校に見送った後に警視庁に向かった。警視庁は東京都が設置した警察組織であり、東京都内を管轄区域としている。


(さてと、まずは挨拶からですね)


 志郎は髪の毛を若干茶髪にして、メガネをかけて30代前半くらいに設定した。刑事部の部署に向かうと見知った二人が見えて入り口から挨拶した。志郎に気づいた立川は声を上げた。


「あ、もしかして おんみ モガ!?」


 立川がどうして変な声を上げたのか、その口を封じたのは足立だった。


『お前、それは公の場ではいうな』


 『陰陽師』と言いかけたのだろうと志郎はすぐに分かった。自分の失態に気づいた立川はハッとして先輩に謝るが舌が回らなかった。


「は、しゅみません!」


 二人の様子を見て志郎は笑った。


「ふふ、仲がいいですね」


 志郎は一礼して自己紹介を始めた。


「初めまして 私は青野と申します 陰陽局から参りました。どうぞよろしくお願いします」


 立川は慌てて姿勢を正した。


「こちらこそ、私は刑事の立川慶吾と申します」


 それに倣い、後ろにいる足立も挨拶を述べた。


「自分は刑事の足立国繁と申します」


 それぞれに自己紹介が終わった。別室に移動して、防音の整った室内で話すことになった。とりあえず志郎は盗聴されないように結界の札を貼った。


「それでは目星がついたところを一つ一つ潰していきましょう」


 場所などを確認して話を終えた。警視庁を出るまでに女性婦警が騒いでいた、というより視線で分かった。立川で慣れている足立もそうだが、今日はやけに大きいと感じた。


「確かに青野さん格好いいですもんね。阿倍野さんと加茂野さん、それに憲暁くんと秀光くんも将来かっこよくなりそうですし」


 立川は4人の容姿を褒めちぎると志郎はうなづいた。


「確かにあの4人は女性にモテそうですね」



 立川と志郎の話を聞きながら足立は違和感を感じていた。


(年は32って言っていたが、なんだか)



 阿倍野と加茂野の代わりにきたのだから それなりに実力のあるものだろうと足立は仕事モードに切り替えた。



ようやく聖子の過去編に取り掛かり執筆しています。

終わるまでの道のりが…^^;


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