第八話:御三家と朝日の父親の関係性
朝日の母親の名前を変更しました(26日更新)
〇〇
話は一旦終わり、志郎たちは昼ごはんを作りみんなで食べた。
「さてと近況報告をしましょうか」
お茶などで一服した後は今回一同が集まることになった会議をすることになった。進行は志郎が務める。
「この夏、VRMMO事件が発生しVRキットがつけた者が意識を失い目を覚まさないプレーヤーが出たがどうしてそうなったのか」
聖子と糀は首を傾げた。二人もこの情報は警察、陰陽局の秘匿とされているのでまだ知らなかった。知っているのはその場にいたプレーヤーと関係者のみである。
「はい!」
糀は勢いよく手を挙げた。
「眠たかったら!」
その答えに朝日は思いっきり滑りたかったがなんとか堪えた。それに答えたのは藤次郎だった。
「目を覚ますことができなかったのは、意識がなかったから…?」
「正解、意識というよりも魂ですね、呼び寄せられてあのゲームの中に捉えられてしまった」
藤次郎は仕事モードに入ると私情は無くなる。
「そんなこと、いったい誰が」
「あの大ボスは自分を鬼族と言っていた、鬼神族に仕える鬼族と」
朝日は大王と戦った時のことを思い出す。そういばあの大王は気になることを言っていた。
『ゴサンケ、クレノイチゾク』
耳にこびりついて離れない。恐れを抱くようにまるで夢でも見ているかのように大王が言っていた。朝日が大王を倒す前に朧げに記憶は残っていた。彼が言っていたことをふと思い出した。
「僕の姿を見て、そう言ったんだ」
御三家というのは名君の家を指す単語でそんな一族がいるのかと漠然としか思えなかった。暮、呉、昏…「クレ」とはどんな感じを書くのか、朝日は考えた。
朝日の言葉に耳を傾けていた一同が首を傾げる。皆んなも何なのことかわからないのだ。黙っていてもしょうがないので話を進めたのは志郎である。
「もしかしたら、その御三家というのはあなたの父親と何か関係があるかもしれません」
その一言に朝日は驚いた。
「僕の父親…?」
朝日は思わぬ単語に声をあげたが両親の記憶がないため、思い出すことができない。
そんな朝日の表情に藤次郎はじっと見つめた。
「僕の父親が何か関係あるの?」
不安そうに朝日は志郎に聞いた。
「その可能性があるということです。私が出会った時には両親と死別しているということを聞いていたので」
何も覚えてないというのに死別という言葉に途端に寂しさが募った。次に話をしたのは真澄だった。
「朝日様のお母様は水気を司る宮司の家系に生まれて、代々「龍神」の式神を継いでいました。なので朝日様のお母様、翠子様は人間であったと保証するのですが、お父様の朔夜様は何となく…人間ではない感じかしました」
真澄は思い出すように語った。
「私よりも先代の式神の方がお二方のことを知っていると思いますが、土地神としてなかなか離れることができませんし、一度尋ねにいきたいと思いますが」
真澄の言葉に志郎はうなづいた。
「そうですね、情報が少なすぎる以上は真澄さんの情報が頼りになりそうです、それともう一つの問題がある大王の共犯者がまた捕まっていないということです」
あんな大胆不敵なことを成し遂げた人物は単独犯であるはずがないと警察、陰陽局も調査するが影も形も見つからず暗礁に乗り上げていた。
「その共犯者を炙り出すために藤次郎あなたの力をお借りしたい」
父親の真剣な眼差しに藤次郎もしっかりと見返した。
「はい」
朝日は何か起こらないかとヒヤヒヤしたが何も起こらなくてほっとした。
「もしかしたら、その共犯者が朝日様を狙ってくる可能性が高い」
その一言に予想もしていなかった朝日はどきりとした。
「そうね、あの渋谷での映像はテレビで流れちゃって、SNSでもバズっていたって、うちの常連の子が言っていたわ」
「あ〜、あれ かっこよかったよね、こうずばっとバケモノを倒すところか もっとみた ーーモガ」
緊張感のない糀のセリフを止めたのは志郎である。
「話が逸れましたが、香散見と合歓は家での身辺を警護して欲しいのですができますか」
父からあまり頼まれることがないので双子の娘は嬉しそうに胸を張った。
「おまかせください お父様 精一杯努めます」
「私も頑張ります」
そこでお開きとなり、由恵と双子は朝日の家に泊まることになり、藤次郎は外見とか目立つので、都内のホテルを借りることにした。
双子の娘、香散見と合歓は真澄を慕っているので久しぶりに話せることにウキウキであった。
「真澄姉様と話すのってどれぐらいでしょう。朝日様が目覚めてから50年ぶりくらいでしょうか」
妖である志郎と人である由恵だが、妖の血が濃ゆい双子時間の感覚が乏しくなる。
〇〇
「は〜」
時刻は6:00。窓から差し込む太陽の日の光を浴びて花月は背を伸ばしながら大きなあくびをした。
「よく寝た〜」
花月は昨日のことを思い出す。
(昨日は楽しかったからな〜)
昨日は花月、桃華、そしてプレーヤー仲間であった土御門菊理と現実の世界で初対面して、彼女と友達になった。
(それにしても菊理ちゃんが陰陽局の見習いだったとは)
桃華から諭された菊理は涙ながらに号泣し、うなづいていた。その後は初対面だったし、軽くおしゃべりするぐらいだったけど菊理は桃華に向かい声をあげた。
「私、基礎訓練からやり直して必ず見習いに復帰します 桃華さん!」
いきなり名前を呼ばれた桃華はびっくりした。隣にいた花月もである。
「私、ゲームの世界でお世話になりましたが」
もじもじと菊理は口ごもる。花月は話のフレーズを聞いて何を言おうとしているのかわかった。
「私を桃華さんの弟子にしていただけませんか?」
「!?」
桃華は菊理の突然の申し出に困窮する。
これが何の関係もない間柄であればバッサリと断っていた彼女だったが、菊理の勇気を振り絞る姿にすぐに答えが出なかった。時間は数十秒だが、桃華には長く感じた。涙目になる菊理に桃華は根負けした。
「…わかった、訓練が終わってからよ」
「…! はい、ありがとうございます 師匠」
その呼び方に桃華は何だがくすぐったかった。それに気づいた花月も呼んだ。
「烏丸師匠ってなんかかっこいいね 桃華師匠ってのも」
「おお、そうですね」
二人の呼び方になんだか居た堪れなくなり、桃華は師匠呼びをやめさせた。そのことを思い出しながら朝の準備を整えて、朝日の家に向かった。
〇〇
会議から翌日になった朝日の家は事件の共犯者が見つかるまであ志郎の妻、由恵と双子の娘、香散見と合歓の仮住まいとなった。
双子の娘は幼い頃から両親、特に父親から躾けられているので居候のみとして惰眠を貪るなどもってのほかであり、自然と早起きになった。
「あ、そろそろ朝日様を起こしましょうか」
時刻は6時過ぎになり、妹の合歓は話しかけた。それに気づいた姉は妹を呼んだ。
「合歓、ちょっと」
「え、なに姉さん」
姉の突拍子のない行動に淡々とする合歓。
「何、じゃないわよ 朝日さんを起こすのは真澄さんの役割でしょ」
当たり前のように話す香散見に合歓は首を傾げる。
「そうなの?」
「そうよ、きっと」
香散見をいつものことである妄想を膨らませた。
『おはようございます 朝日様 起きていらっしゃいますか』
真澄が部屋の中に入り、朝日の布団を揺り動かす。
『朝日様、朝ですよ』
がし
『きゃ』
真澄の体を朝日がぎゅっと抱きしめる。そしてそこで優しく笑いかける朝日が一言。
「まだ寝たいから一緒に眠ろう」
きゃあきゃあと朝からハイテンションな姉に合歓はいつものことと大人しく聞いた。
(最近ハマっているからなラノベに)
主従ものが好きな姉は朝日と真澄の関係にハッと気づき、拍車が止まらずついには現実までに及んでしまった。この暴走を止めるのは本来なのなら姉の役割なのだが、妹の方がわりかし冷静だった。
双子が真澄が朝日のことを慕っていることに気づいたのは小さい頃からだった。真澄と仲良くなるうちに朝日に向けるその眼差しが母が父を見つめる眼差しに似ていたからだ。だからこそ、応援したくなるのだが。
『っと、そろそろ止めないと』
ようやく朝日の父親、朔夜の名前を出すことができました。前に出ていたらすみません(・_・;
読んだいただいてありがとうございました。
次回もお楽しみいただければ幸いです。