第十八話:誰も死なせない
大王は朝日達の目の前に降り立った。
「優勝おめでとう、君たちには私は挑発する権利が与えられそして勝ったら何でも願いを叶えることができる」
「何でもですか?」
「ああ、何でもだ」
朝日はふと視線をずらして紅姫達をみた。
「少し話をしてもいいですか」
「ああ、いいだろう」
朝日は紅姫達に話をした。
(願いってそういえば考えてなかったですね)
志郎はある提案を思いつく。
(それならこれはどうでしょう…?)
朝日達は話が終わり、大王の元に向かった。
「話は終わったかね?」
「ええ、終わりました。ここに四人のうち三人は大金持ちになることです、そして最後はこの世界からのログアウトです」
「……何」
その願いにぴくりとシワを寄せた。朝日は不思議そうに首を傾げる。
「あれ? 何でもいいと言いましたよね?」
朝日はわざとらしく首を傾げる。だが大王は小さな揺さぶりは通じなかった。
「ああ……言ってなかったことが一つある。唯一この世界からログアウトできない」
「……どうしてですか ーーゲームをやめるだけですよ」
願うだけでゲームがやめれるなら越したことはないのだは、そう簡単にはいかないかと朝日は心の中で嘆息する。
「それはできない………
なぜなら君たちはここで魂を喰われるのだからーー」
朝日は大王の目つきが変わったことに気がつき後方に飛び去った。その異変に紅姫達は動揺が走る。それは大王の言葉を聞いていた観客達も同様だった。
「どういうことだログアウトができないって魂を食われるって!?」
「おい嘘だろ なあ!?」
「冗談じゃねえぞ」
一人の絶叫は伝染するかのように広がっていった。花月達と憲暁達はそれに焦燥する。
「みんなパニックになっている」
「これはやばいですね」
事態を収集しようとしたが、人が多すぎてどうしようもなかった。そしてそれを煽るかのように大王は更なる手を打ってきた。
大王が手を鳴らした瞬間、地響きがなった。朝日達は何だと地面を警戒する。そして地面が割れたかと思うとそこから何か這い出してきた。
そこから出てきたのは人骨だった。最初は手、次に腕と頭蓋骨まで出てくる。そしてそこら中に現れ出した。
その光景にプレーヤー達は楽しむどころではなく、固唾を飲んで恐怖に慄くしかなかった。
『何あのあれ』
『骸骨 本物なの……?』
人々が阿鼻叫喚をしている中、平然に大王は宣う。
「皆さんに紹介しよう このもの達は私の可愛い兵士たちだ」
視界が埋め尽くさんとする光景に紅姫は思わずほおをつねる。
「何なんだ これは私は夢でもみているのか」
「生憎夢ではありません これが今置かれている設定です」
大王は観客にカメラ目線で声をかける。
「君たちも見ているだけじゃつまらないだろう だからここに来るがいい」
その瞬間、花月達、憲暁達を含めた全プレーヤーが朝日達がいる場所に転送された。
「どこだ、ここ」
「うゔ」
プレーヤー達は立ち上がり、周囲を確認して自分たちがいる場所に驚愕する。
「私たちどうしてここに!?」
「嫌だこんなところにいたくない!」
プレーヤーが逃げ惑う姿に大王は大きな口を開く。
「どこに逃げよっていうんですか?逃げる場所なんてないのに、我が兵士たちよ」
主人の声を聞いた従順な兵士は眼窩が怪しく光った。そして兵士たちがプレーヤーを襲い始める。桃華は花月に喋りかける。
「私から離れないで」
「はい!」
逃げ惑うプレーヤーもいれば、手を上げて助け合うプレーヤーもいた。襲いくる兵士にプレーヤーは反撃をして骨の兵士を吹っ飛ばす。
「やった 粉々にしてやったぜ!」
プレーヤーが倒したことに、他のものは驚くがその後の光景に目を疑う。
「おい、また動き出したぜ」
「まじかよ 一度で倒せないのか」
人々は恐怖に侵食される。死ぬことのできない骨のゾンビの集団にプレーヤー達は恐れ慄いた。
〇〇
そして、プレーヤーは何度かの攻防の末敗れてしまう。
「がは」
致命を負ったプレーヤーは力なく倒れて、そして姿を消して光に包まれて魂だけの姿となった。
『来い、我が元へ』
大王の声は魂に呼びかけ、導かれるように向かって行った。彼の魂は、大王が出現させた壺の中に放り込んだ。その一連の一部始終をみたプレーヤー達は血の気をなくす。
「どういうこと 私たちもあんなふうになるってことーー」
大王は怯えるプレーヤーをものともせず淡々と告げる。
「……ええ、あなた達は負けても死なないゲームでしたが、先ほどの彼は残念ですが今から死んだものは生き返ることはできません」
「!!」
「生き返ることができないって……」
「ええ、文字通りあなたの魂は、これからも現実世界に帰ることはありません」
「そんなの嫌よ!」
「ふざけんじゃねえ!」
戦うことに憤るプレーヤーは逃げようとするが、骨の兵士たちは情け容赦なく、血の涙もなく、死神のように命を刈り取ろうと襲い掛かる。
「兵士たち、さあ行け」
腰が抜けたプレーヤーの一人に襲い掛かろうとしたときだった。一つの閃光が骨の兵士たちを吹き飛ばした。何が起きたんだと見るとそこには二人の少年が立っていた。
「俺の前では誰も死なせない」
「僕の前では誰も死なせない」
朝日と憲暁は大王に向かい、声高に叫んだ。セリフが庇ったことに、しかも同じタイミングだったことに驚き目があった。
「真似するな!」
「真似しないくださいますか?」
思わず出たセリフも被ったことに言葉が詰まる。
この状況の中、爆笑する声が響き渡る。聞き覚えのある笑い声に憲暁はぴくりとシワを寄せる。
「秀光、笑いすぎだ!」
「あはは、ごほ、だってあまりにも同じタイミングだったから ごほ」
憲暁は今にも秀光に襲いかかりそうになったが今はグッと堪えた。
「お前、帰ったら覚えてろよ」
「はいはい」
朝日は真澄と志郎に話しかける。
(真澄はハナさん達のサポートに行って……ここは大丈夫だから……だから)
朝日の眼差しを見てコクリとうなづく。花月達のもとに向かった。
〇〇
朝日が心配していた花月達の方は桃華が前後に出没する兵士を、斬撃で吹き飛ばしていた。
「はあああ!」
花月とククは桃華の邪魔にならいように後ろに下がった。桃華は何とか応戦するが、数が多すぎた。
『くそ』
倒しても、倒しても元どおりになる骸骨達に桃華は苛立つ。そして襲いくる兵士たちにを取りこぼしてしまい、残りの兵士たちが花月達に襲い掛かる。
(しまった)
「やめろー!!」
花月達に凶刃が降りかかろうとしたときだった。
「はあ!」
骨の兵士たちを吹き飛ばしたのは真澄だった。
「あんたは!」
「助けに来ました、皆様ご無事ですか?」
「ああ、あんたのおかげで助かった」
桃華は花月達を助けたことに感謝を述べた。
「いえ」
そう話している間にも兵士たちは問答無用に襲いかかってくる。
「全くキリがないわ。何回倒せばいいのよ こいつら」
いつもの冷静な真澄もそれに同意する。
「何か弱点はないのでしょうか」
花月はだれかいないことに気づいた。
「アキミツさん達は大丈夫ですか?」
「……あの人たちなら大丈夫です」
〇〇
そして一方で大王は朝日と憲暁達の応戦で骨の兵士が押し負けていることに気づいた。そして大王は朝日をじっと見つめた。
(やはり彼は質の良い魂を持っていそうだ 先にメインをいただくか)
スッと大王は超高速で移動した。そして目にも見えない速さで朝日に襲い掛かる。朝日の魂を刈り取ろうと凶刃を振り下ろした。
それに一番気づいたのは朝日でなく、そばにいた憲暁だった。
次の展開、SAOのアリシ編の第22話からイメージしてみました!どういうシーンか想像してお待ちください(^_^)