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今昔あやかし転生奇譚 〜平凡な女子高生の彼女と幼なじみには秘密がある  作者: yume
第五・五部:合戦・百花繚乱編(下巻)
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第十七話:悪役としてのイレギュラー


「それほどでも」


 志郎は不敵に笑った。両者を睨み合う姿に間近で見たものは殺気で精神がどうにかなってしまいそうなほどの圧迫感があった。


(あ〜、何か下手に入ると志郎の邪魔になりかねないしな…)


(ええ、そうですね)


 数分間の激闘を繰り返しても二人は一糸乱れずに戦闘していた。それを見ていた照良はぶすくれていた。その話に秀光はどうしたんだと首を傾げる。


「あいつ俺たちの戦いの時セーブしていたのか」


「ええ、手心を加えていただいたようですね 本当に余計なお世話なことを」


 不穏な空気を纏った二人に憲暁と秀光はたじろいた。これは聞かないほうがいいだろうと胸にしまいこんだ。




〇〇


 志郎は先ほどから慎之介の様子に疑問を抱いていた。そのことに朝日達に話しかける。


(アキミツ様…やっぱりおかしいですね)


(おかしいって何か?)


(いくら何でもこんなにダメージを受けていればゲーム中でも何かしら受けていてもおかしくないのですが)


 志郎の疑問に紅姫は何かを察した。


「……もしかして、バグ?」


 聴き慣れない単語に朝日が首を傾げる。


「ああ、バグっていうのはコンピュータの欠陥のこと」


「欠陥ってよりは全然見えないのですが」


 最もな返答に紅姫はうなづいた。


「そう、こうゆうのバグって大体は…」


 紅姫は何かに気づいたように言葉を失う。いきなりの豹変に朝日達は心配する。


『紅姫さん、大丈夫!?』


『うん……』


『何かに気づいたのですか』


『うん、バグってのはこの世界がルールが通じないってことだ』


『ルールが通じない……?』


『そう、ルールが通じいないと言うことはダメージが減ることはできない。何でこんなことに今まで気づかなかったんだろう』


『そのことを運営に知らせることはできないかな……?』


『前例がないし、ここまできたらどちらが勝って負けるしか』


 シンプルなルールが故にもう少し融通を利かせて欲しいと朝日は思った。


『と言うことは勝てないと言うとですか?』


 真澄の言葉に紅姫は吐露する。


『それは分からない……』


 覚悟が鈍る紅姫に、朝日はポンと肩を叩いた。


「なら、色々と試してみるだけだ」


 朝日は前を踏み出す姿に紅姫は見送った。朝日は志郎に声をかけた。


『志郎、交代してください』


『はい』


 志郎が下がったことに慎之介は残念そうな表情をした。前に出て少年に訝しむ。


「今度はお前が相手してくれるのかい?」


「はい、よろしくお願いします」


 朝日は刀を構え息を整えた。その佇まいをみた元自衛隊の慎之介は目を見開く。


「お前、何か武術をしているのか」


「え、まあ 少し」


 朝日がいい籠る様子に慎之介はふっと笑った。


「少しでその貫禄が身につくかね」


 痛いところを疲れた朝日は冷や汗をかく。


「まあ、それは」


 笑ってごまかす朝日に慎之介は笑った。


「嘘が下手だな お前は」


『うぐっ!?』


 思わぬ追及に朝日は動悸が止まらない。


(何なんだろう 何か志郎を彷彿とさせるような)


 少し悪寒が走ったが朝日は気持ちを切り替えた。


「行きます!」


 前に足を踏み出して、朝日は慎之介に挑みかかる。紅姫はそんな姿を見て、自分は何をやっていることだと叱咤する。


(僕は何をやっているんだ……)


 最初の方は気晴らしにすぎなかった。攻撃が効かないからじゃない。まだ何もできていないじゃないか。


(志郎、真澄、動きを止めて)


 朝日は何かの考えがあるのか提案を出した。そして朝日は紅姫に声をかけた。


「僕と一緒に戦ってくれる」


 その目に不安や戸惑いはなく、毅然とした紅姫に戻っていた。


「ええ、やってやるわ」









〇〇





 まず志郎と真澄が慎之介の動きを止めるために志郎が地面に押さえつけて、真澄が術を行使して水の檻を作った。


 どんな衝撃を与えても液状のおりは元どおりになった。


(形状記憶ってやつか)


 形状記憶合金というものがあり、ある温度以下を変形してもその温度以上に加熱をするとその形状に回復する性質の合金のことだ。


(これはちょっとやそっとじゃダメだな)


 慎之介が構えを変えた瞬間、周囲がひりついた。朝日はそれを見て紅姫に話しかける。


『紅姫 勝負は一瞬 彼が真澄の術を解いた時、その時が絶好のチャンスでしょ』


 朝日の予想通りに慎之介は無理やり術を解こうとした。


 真澄は術を解かせないように踏ん張る。


『く、この なんて力 これが人間なの!?』


『スイ、もう術を解いて』


『アキミツ様! わかりました 行きますよ』


 ギリギリのラインまで縛り付けてそして術を解く。その前には朝日と紅姫は動き出していた。


 慎之介は真澄の術を吹き飛ばしたそのわずかなタイムラグがその隙だった。


「はあああ!」


 紅姫の渾身の一撃を放った。その攻撃はーー慎之介に届かなかった。


「俺に斬撃は効かんぞ」


 届かない攻撃に紅姫は悔しげに歪んだ瞬間だった。


「じゃあ、根比べだ」


 後ろを振り向くとそこには朝日が刀を挙げて跳躍していた。紅姫は掴まれていた刀が外れ、素早く後方に下がる。


「全く効かんわ!」


「はあああ!」


 朝日の咆哮とともに刀が光を帯び、そして刀が振り下ろされ、閃光が慎之介を貫いた。


「がは!!?」

痛みなどの衝撃が来ることはなかった慎之介は動揺する。


「これは一体、どういうことだ」


「僕にもわかりません どうしてこの攻撃が効いたのか」


 朝日が攻撃したのは体ではなく精神、魂の部分である。そこでダメージではなく、何らかの問題があるのならとやってみたことが通用したらしい。



「そうか……」


 慎之介は満足そうに笑い、そして大きな体が倒れ伏した。そして実況のアナウンスが流れる。


「慎之介選手、戦闘続行不可能とみなし紅姫チームの勝利です!」


 高らかにあげる声に観客達は盛り上がった。それをみていた花月も両手を挙げて喜んだ。


「やった〜! やったね モモちゃん、ククちゃん」


「うん……うん!」


「はい 本当に素晴らしい戦いでした」


 これには桃華も嬉しそうに綻ばせた。人々が喜んでいる中、その反面喜んでいない人物がいた。













〇〇





『どういうことだ……誰も慎之介には絶対に勝つことはできないはずなのに』




 俺はこの世界にやってきて、いろんな戦いを観戦していた。この戦いは特にである。どれも勢揃いのプレーヤーだと品定めをしながらだったが、あの光る攻撃は解せなかった。



(あの光は一体なんだ)


 自分の知識では測れないものには知識欲の高い傀には放っておけるものではなかった。


(知りたい、それが何なのか)


 自分の姿を偽り、大王という仮面を纏った。


(やっと、次のステージに、これで本来の目的をーー)


 実況のアナウンスが口を開く。


「今から優勝者に大王がお会いします」


 それに多くのプレーヤーがおおっとどよめいた。紅姫は朝日をからかう。


「ふふ、何か渡されるのかしらね」


「うん…(そうだといいんだけど)」


 朝日は心配に思っているときにそれは忽然と現れる。それに気づいたプレーヤーは驚愕と歓喜に溢れ、けれどその反面朝日は不安の渦にいた。





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