表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今昔あやかし転生奇譚 〜平凡な女子高生の彼女と幼なじみには秘密がある  作者: yume
第五・五部:合戦・百花繚乱編(下巻)
143/198

第十六話:思わぬ再会




 朝日達は合戦が終わると、元の場所に戻ると周りにいるプレーヤーから称賛の声をかけられた。


『凄かったぜ』


『おめでとう!』


 いろんな声が飛び交い、朝日達は驚いたが何だか照れ臭い気持ちになった。人々をかき分けていくと花月達の姿が目に入り、近づいた。


「ハナさん!」


 朝日に気づいた花月は手をふった。


「アキミツさん お疲れ様です! そしておめでとうございます」


 花月の褒め言葉に面と向かって言われて笑みを隠すことができなかった。


「僕はまだまだですけど」


 何だか二人の雰囲気に周囲のもの達が察したのか少し静かになった。それを壊したのは雅な声だった。


「そうだよね〜 まだまだだよね〜」


 ニヤニヤと笑うアイがそこにいた。そのことに油断していた朝日はびくりと肩を揺らした。


「あ、お疲れ様です 紅姫さん」


 花月はアイに気づいて挨拶をした。


「ええ、ハナさん」


 その時憲暁達も合戦場から帰ってきて、負けてしまったがその戦いの凄まじさは敬意を表するものであったため、労いの声をかけるものは少なくなかった。


『頑張ったな』


『凄かったぜ』


 観客は興奮冷めやらぬ状態だったが憲暁達は冷静だった。負けてしまったと言う敗北感もあったが、今はそれよりも仕事のことが最優先だった。この戦いに勝ち、決勝で優勝し大王との挑戦で勝利しなければならなかったのだが、それはできなくなってしまった。


 これならば勝者に願いを託すしかないと憲暁達は、負けたばかりで声をかけづらいが朝日達に声をかけようとした時だった。


「あ〜、べにっち 久しぶり〜」


「あ〜、メリ〜さん 先ほどぶりだけどね」


「そうだね」


 何だかゆるい会話をしている二人に憲暁は気を削がれて声を上げようとした時だった。メリーに近づいた花月はいぶかしむ。









「……麻里子?」



 不安そうに呟く名前にメリーは目を見開いた。


「え、どうして………私の名前を わかって もしかして」


 花月に近づいたメリーは耳打ちする。ここでは暗黙の掟である本名はタブーとされている。



『平野ちゃん?』



 自信のない声音に花月は目を見開き、ブンブンと首を縦にふり、その瞬間涙が溢れた。


「……よかった 見つけることが……できて」


 嗚咽の止まらない花月に朝日達がオロオロとしていると、注目されているので志郎が場所を移動しないかと提案した。


 メリーは落ち着くようにと花月の手を握りしめた。そんな二人を見るとカップルのように見えてくる。裕司は気になって話しかける。


「ここで話したことは他言無用にしますので……えっと二人のご関係は」


「私は……彼女の同級生です」


「そうそう、別のクラス何だけど一緒にお昼を食べているんだよね」


「うん」


 花月は久しぶりに麻里子を話せたことに嬉しくてうなづいた。憲暁は怪訝な表情でメリーを見つめた。そして何を考えているのか麻里子は見当がついた。


「のりりん、今、絶対女子高生だったことを思い出したでしょ」


 何でわかったんだと憲暁はあからさまに驚いた。


「だって分かりやすいもん」


 そのことに朝日は笑いを抑えきれず、憲暁は機嫌が悪くなった。裕司は憲暁をなだめると大人しくなった。


「そうだったんですね まさか知り合いとは思いませんでした 紅姫さんとメリーさんもそんな感じですか」


「うん? あ〜さっき知り合ったばっかりだよ」


「……え」


 玉藻が脱落して、愛は暇になり、どうしたものかと憲暁と朝日の戦いを見ていると何やら声が聞こえた。


「いや〜いいね あ、そこ、そう、その表情めっちゃいいね」


 一体彼は何者なんだとすることもないで興味本位で愛は近づくと一人の青年が鼻息荒くカメラのようなものを持っていた。本人が紅姫に気づいていない。楽しそうに撮るメリーに面白そうに笑った。


「いいものが撮れた?」


「めっちゃいいものが撮れたわ 今日は大漁っと」


 メリーはそこでようやく紅姫の存在に気がついた。


「おおっとびっくりした、あら もしかして 紅姫さんでしょうか」


「うん、そうだよ」


 一応合戦中なので紅姫どうするかと思いきや次の言葉に驚いた。


「えっと、一緒に写真をとってもらえませんか」


 そのセリフに思わず紅姫は吹き出して笑い声をあげた。


「はは、いいよ」


「よっしゃ〜」

 

 了承を得たメリーは嬉しくて拳をあげた。


















〇〇







 紅姫とメリーが一部始終を話すと周りがシーンと静まった。最初に声を出したたのは憲暁だった。


「おい、写真というのはどう言うことだ?」


 それにはメリーは写真を掲げる。


「ふふ、ジャジャン」


 見ると憲暁と朝日の戦闘シーンが収められていた。


「いや〜二人ともカッコ良かったよ」


「こんなもの何になるんだ」


「何にもならないよ、ただ私は撮りたいと思っただけ」


 平然と宣うメリーに憲暁は面倒臭くなり、呆れた。朝日と花月達は何度もそんな姿を見ているとの苦笑するだけに留めた。


(はあ〜、こんな時友希ちゃんがいてくれたらな)


「そうだ、友希ちゃんも心配していたよ!」


「え、まじで うわ〜帰ったらどやされるだろうな 怒るとめっちゃ怖いんだけど」


 メリーもとい麻里子は肩を震わせた。


「少し話はずれましたが」


 裕司は軌道修正して話を進める。


「現実世界に帰るためには決勝の相手と戦い、そして大王との戦いに勝利しないといけません。ですが私たちは負けてしまいました……なので私たちは応援するしかありません。どうか頑張ってください」


 裕司の重みのある言葉に朝日達は鷹揚にうなづいた。



〇〇


 

 それから決勝の相手が発表された。ディスプレイにその名前が表示される。



 慎之介VS紅姫



 その対戦相手を見て紅姫は息を吹いた。


「はあ〜、想像通りかな やっぱりって思ってたんだよね」


「こうなることわかっていたんですか?」


「まあね 僕も勝ったことがない相手だからね あれには」


(アイさんでも勝ったことがない!?)


 そのことに朝日達は驚いた。紅姫は慎之介に負けたことを思い出す。


「あの時は一人だったけど、今は一人じゃないからね」


 紅姫の言葉に朝日は自然と笑った。そして花月達、憲暁達は朝日達を見送る。



『カウントを開始します 5・4・3・2・1 合戦場に転送します 御武運を』



 カウントのアナウンスが流れる中、朝日はもう一度、花月の顔を見てそして決勝の場に向かった。そして花月と目があった。




(今、朝日ちゃんが見えたような ……気のせいだよね)





〇〇


 慎之介はいつもより気持ちが高揚としていた。決勝の相手を先ほど知った。


(紅姫の嬢ちゃんか。なかなか強がったが、またやれるとは、今回は一人じゃないみたいだな 仲間も強いんだろうか、強くなるほどいい)


 くすぶる想いを抱えながら、慎之介は決勝に挑んだ。2チームが転送されたのは岩場のステージだった。


「さあ いよいよ始まりました 実況は私が担当します」


「決勝戦を行うのは慎之介対紅姫チーム、第一位と第二位の戦いとなりました」


「紅姫選手は慎之介選手と戦ったことがありますが一度も勝ったことがありませんが今回も負けてしまうのか、いよいよ始まります。みなさん準備はよろしいですか」


 紅姫は刀を向けて慎之介に宣言する。


「絶対に勝つ」


 その威勢のいい声に慎之介は好戦的な笑みを向けた。


「いいだろう、かかってこい」


 紅姫は俊敏な速さで慎之介に向かい接近した。そして抜身の速さで斬撃を放つ。それは見事に慎之介に直撃し、粉塵が舞い上がった。


(やったか……?)


 朝日はさすがにダメージを受けたと思ったが、紅姫は否と答える。


(いや……手応えがない)


 粉塵が晴れると慎之介は悠然と立っていた。と言うよりも腹をボリボリと掻いていた。まるで少し痒いぐらいの感じである。


『あれを受けてノーダメージってありですか』


『どうやらありのようですね 私も少し加わりましょうか』


 志郎の提案に紅姫はうなづいた。


『お願いします』


 紅姫の次に出てきた男に慎之介は訝しむ。


「あんた初めて見る顔だな」


「ええ なのでお手やわからにお願いします」


 慎之介と志郎の体型を見比べると勝敗は歴然であるが、先ほどの戦いを見たものは違った。


『どっちが勝つんだ』


『やっぱ慎之介が勝つだろう』


『いやセイかもしれない』


 観客達は、あ〜でもない こ〜でもないと騒ぎ出す。先に動き出したのは慎之介だった。とてつもない速さで急接近し拳をいれる。


「!」


 志郎はそれをすんでで躱した。拳を入れられた岩肌は衝撃で木っ端微塵となってしまった。それを見ていた観客は悪寒が走るほどだった。


『おい あんなの当たったら一発で終わりじゃねえか』


『どうなってんだよ バクじゃねえか あれは』


 自分の攻撃を避けた志郎に慎之介は面白そうに笑った。


「いい目を持っているな」



ここから怒涛の展開となります。次回もぜひご覧ください!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ