第十四話:お姉さん、可愛いね
二人は集中する。その刹那誰も声を発することができなかった。そして二人同時に動き出した。
結果はーー
「この合戦の勝者はノリチームの勝利!」
淳は一瞬で袈裟斬りに斬られてしまい、倒されたしまった。
(は〜、負けてしまった)
空を仰ぎ見ながら眺めていると、仲間達から心配する声がかかる。
「大丈夫!? あっつ〜!」
「……おう、ごめん 負けちまった」
「あっつ〜はがんばったよ」
「そうだぜ」
みんなが必死に淳を褒める姿がなんだか微笑ましくて笑ってしまった。
〇〇
そして花月のチームはどうなかったといえば次の次の対戦で負けてしまった。花月が罠にハマってしまい、それに気を取られた桃華は一本取られてしまったのだ。ククの足を引っ張ってしまった花月と桃華はククに謝る。
「ごめんね、ククちゃん」
花月は沈んだ声で謝る。
「面目ない」
桃華も責任を感じていた。二人のそんな表情にククは驚いて慌てふためく。
「そんなことありません、お二人がいなければここまでやって来れませんでした! だからそんな悲しい顔をしないでください」
ククの声に花月と桃華は弱々しくうなづいた。
「うん、ありがとう ククちゃん」
「ああ ありがとう クク」
それから花月達が負けたことを朝日のチームもリアルタイムで見ていた。
「ハナさん 大丈夫でしたか!?」
心配そうに言う朝日に花月は申し訳なくいった。
「いや〜、負けてしまいました アキミツさん達もまだ勝ち続いているんですよね」
「あ、うん」
なんだか異様に元気な花月に朝日は躊躇する。
「がんばってください」
「……はい 頑張ります」
朝日は幼なじみが少し無理していると分かっていたが、何も声をかけることができないことが歯痒くなった。
(まさかゲームの中でもこんな思いをするなんて)
桃華やククからも応援の声をかけられた。
「勝ってこい」
「応援しています」
不器用な桃華の言葉とククの応援に朝日は口元が綻んだ。
「はい、いってきます」
「いってらっしゃい」
〇〇
『ちょっと ちょっと何なのよ あの二人は!?』
亜里沙もとい玉藻は直下混乱していた。これから戦う対戦チームのログを見て攻略しようかと思っていたのだが、どのチームも強かったのだ。
『これチートじゃないの チートは紅姫だけで良いってのに!?』
次に戦うのは朝日のチーム、憲暁のチームと第13位のチームと第3位のアザミのチームだった。
『ここまで勝ち上がってきたのにこんなところで負ける者ですか』
玉藻はできるだけ作戦を練り込み、合戦に挑んだ。
『さてまずは弱いものから 第13位のチームを潰しましょうか』
「は、了解いたしました」
返事をしたもの達は玉藻の色香にやられて下僕になったイケメン達である。玉藻が命令すれば意のままに操ることができるのは本当に君がいい。
『ふふ、十分に役に立ってもらうからね イケメンくん達』
亜里沙は邪な気持ちを抱きながら、第13位のチームを狙ったがもうすでに対戦していたもの達がいた。
『あれは………っ』
木陰に隠れて玉藻はその光景を観察ことにした。
『あれは新参のチームね、リーダーはノリって子だったかしら。対戦を見たけど紅姫と同じくらいやばそう それと一緒にいた彼らも』
近くにいる秀光、裕司、照良の戦いぶりをみる。
『うん、やめておこう』
素人でも只者ではないぐらいは玉藻も自分の容量を弁えている。
『さて、どうしたものか』
思案していたその時だった。
「そこで何しているの?」
「何って観察しているのよ」
「へえ〜、それって楽しい」
「楽しいって……何いって」
玉藻は変なことをいう男がいると注意しようと振り返ると、そこには男はいなかった。そこには和服のゴスロリをきた美少女がニンマリと笑っていた。
「お姉さん、かわいいね」
〇〇
玉藻はいきなりの強敵に驚き叫んだ。
「あんたは紅姫!」
「うん、そうだよ」
どうしてこんなに近くにいるんだと、後ろに控えていた男達は何をしているんだと見ると、彼らは倒れ伏していた。
「!!」
「……これを全部あなたがやったの?」
「うん、と言うか僕しかいないよね」
何でもないことのようにいってのける紅姫に玉藻はゾッとした。
『私は第4位なのよ、第2位と差はないはずなのに、この雲泥の差は何なのよ!?』
恐怖と焦燥で頭が混乱しそうだっただがある思いが玉藻を突き動かす。
『こんなところで立ち止まっているわけにはいかない』
『私には叶えたい夢がある』
玉藻は前を見据えて、紅姫を睨みつけた。その目つきに紅姫は目を見開き、ふと微笑んだ。
「いいね その目 僕を前にすると大抵戦意を失うんだけど」
「それは私の専売特許よ」
玉藻は武器の鉄扇を広げると黒い煙が紅姫に襲いかかる。
「それが毒の煙か」
紅姫は後方に下がりながら煙を巻く。その箇所が腐食していく。
『当たったらやばそうだな ……当たったらだけどな』
玉藻は再び、煙の攻撃をはなつが紅姫にあたらなかった。
「このっ」
紅姫は運動神経の速さで煙の攻撃を回避した。紅姫は玉藻を観察して弱点を探った。
『毒は厄介だな あの武器が邪魔だな』
まずは遠距離で斬撃を放つか、それは同じ斬撃で相殺されるか。
「これぐらいなのかしら 第2位は」
ふふと挑発するような玉藻の物言いに紅姫はカチンときた。
「じゃあ見せてあげるよ」
紅姫は構えを変えて刀に赤い光が宿った。
『何のスキル!? あんなの見たことが』
振り払い赤い閃光がアザミを襲う。
「くっ!?」
幾千の攻撃にアザミは苦戦する。そしてそれを紅姫は見逃さない。その隙を狙い、超高速で接近して無防備となったお腹に衝撃を与えた。
「うぐ!?」
あまりの強い衝撃に玉藻は息が詰まり倒れた。
「う 私は……まだ」
そう最後に言い残して意識を失った。紅姫はそんな彼女を最後を見つめて、称賛の言葉をのべた。
「なかなかだったよ」
〇〇
「おおっと紅姫と玉藻の戦いは紅姫選手の勝利、そして次はどこがっと、お〜とすでに合戦していた、対戦しているのはこの2チーム」
ディスプレイの大画面に二人の少年が映った。それに花月達は声を上げる。
「アキミツさんだ!」
思わず声を出したことに周囲はびっくりとする。大声がでたことに花月は恥ずかしくなり口元に手を当てて腰を下ろした。
「すみません…」
恥ずかしそうに俯く花月にククは話しかける。
「アキミツさんですね」
「う うん、勝って欲しいね」
「はい」
ククはアキミツと対面する相手の顔を見つめた。
(あれ、どこかで見たような)
何かを思い出そうとしたが、ハナに話しかけられて結局思い出せなかった。
〇〇
紅姫が玉藻と激突する前朝日達は憲暁達の元に向かった。朝日は憲暁と、志郎は裕司と照良を、真澄はメリーを相手にすることになった。憲暁達も彼らの存在に気づいた。
「次はお前達か」
憲暁はじっと朝日ではなく志郎を見つめた。
「俺はあなたと戦いたい」
思わぬ申し出に志郎は目を見開く。
「私ですか それはどうして」
「それはあなたが強いからだ あの動きは素晴らしかった ぜひ手合わせを願いたい」
真剣な眼差しに志郎はどうしたものかと思案する。