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今昔あやかし転生奇譚 〜平凡な女子高生の彼女と幼なじみには秘密がある  作者: yume
第五・五部:合戦・百花繚乱編(下巻)
132/198

第五話:瀬戸亜里沙



 戦鬼と呼ばれるようになり、ランキングのトップとなったことで注目を浴びる。トップになったことをこのゲームを教えてくれた嶺二がしきりに祝福してくれた。


「すごいよ、おじいちゃん」


「はは、そうかな」


 口ではそう言いながらも孫に褒められてご満悦である。他にもどこで知ったのか従兄弟の穂村健一が電話をしてきた。


「お久しぶりですね、堂島元帥」


「はは、その階級の呼び名は懐かしいな、もう私は自衛官などではない 普通に「さん」付けで構わない」


「はい、分かりました」


「それで、どうしたんだ?」


 聞かれた健一は慎之介に説明する。


「あ、聞きましたよ、ゲームをし始めたばかりでランキングのトップになったらしいですね」


 健一がゲームをするようなタイプではないことを知っていた。


「はは、弘樹だな」


 恥ずかしさを笑いでごまかしながら犯人を当てた。


「ええ、ゲームの中でも強さは健在のようですね」


「いや……私も歳を取ったよ」



 〇〇



 そんな数日前の記憶を慎之介はふと思い出した。


(ふふ、戦いの最中に考え事とは相手に失礼だな)


 そんなことを思いながら口元に笑みを作ると、それを見たものは恐怖で足元が凍りつく。


(い……今、笑った)


 慎之介は44対1で対戦することになった。


 そして慎之介は接近しながら対戦していたが、他のチームからの作戦で慎之介を追い詰めないかと誘い込む。、Cのチームはそれに了承して一緒に戦うことになった。総勢で100人近くの大人数に勢いづいた。


(こんだけの大人数だったらあのシンノスケも勝てないだろう)


 誰もがランキングのトップに勝てると思っていた。彼の強さを目の前にするまでは。まずは各チームの偵察係がシンノスケの動向を警戒する中、斥候でシンノスケの力を削ぎ、弱ってきたところを集団で叩くというありふれた戦法である。


 けれど、その戦法は甘かった。慎之介は自分が監視されていることにとっくに気づいていた。


(ふむ、私を見る目が多すぎる……チームを組んだのか)


 自衛官として、様々な訓練をしている慎之介にとって容易に想像しやすかった。それと敵側の攻略法も。


 数十人の斥候がやってきて慎之介を一斉に襲う。しかしそれに臆することなく豪快に笑った。


「ワハハ、来るがいい ワシの拳を受け止めるがいい!!」


 その一突きで数人が投げ飛ばされてしまい、気を失う。気圧されて怖気つくが、人数の多さに自分を鼓舞する。


「まだ俺たちの方が有利だ!」


 しかしものの数分で斥候隊は全滅し、次は射撃を攻撃する出番となった。彼の硬い体にはオーラが纏っており普通の弾丸ではダメージを与えることができず失敗に終わる。各々のチームリーダーは最終手段として総攻撃をすることにした。けれど訓練を受けていない集団は動きがバラバラで統制されていない。


(まあ、こんなものか)


 弱いところから叩いていき、次々と倒されていく。その猛追は誰一人止めることはできなかった。


 不幸にも最後の一人が生き残り、プレーヤーは降参宣言をして試合が終了する。見ていたものから称賛と拍手を送られるなか、ある思いがあった。




(手応えがないな もうちっと、粋のいい者がいないものか)


 勝者は鬱屈としたため息と共に空を見上げた。








〇〇






 私の名前は瀬戸亜里沙。23歳の女性で代官山のビルのOLとして働いている。だがおしゃれな服やアクセサリーに興味がなかった。


 仕事場でも人それぞれタイプはあるが化粧をしている女性の方が男性からの目は何かと有利である。部長は可愛い女性を見ると人が変わったようになる。キャバクラでもあんな感じなのだろうと思ってしまう。


「瀬戸、少し新人を見てくれないか」


(は?、私も入ってまだ一年目なんですけど)


 まだまだ新人である自分が反論することもできず、作り笑いをしてうなづいた。


「はい、わかりました」


 上手く笑えているだろうか。口元が引きつりそうに笑いながらなんとか堪えた。


「よろしくお願いしま〜す」


 間延びするような声に若干苛立ったが、ただ教えるだけならそう時間はかからないと思っていた。新人は最初に機械の使い方など教えるのは基本だが、何回も間違えた。


「あれ、こうじゃないですよね?」


 あたふたしている新人を見て、まずはメモを取るようにと告げた。


「あ、そうですね わかりました」


 メモを取るのは別に恥ずかしいことではない。けれどそれを初めて知ったかのような口ぶりに亜里沙は聞いてみた。


「こうゆう機械とか使ったことないの?」


「え、先輩の人たちに教えてもらっていました」


「そ、そうなんだ」


 その先輩の人たちはきっと女性ではないだろうと思った。最初は優しく努力をしているが、何回も聞かれたら自分の仕事もできないし、イライラが爆発するだろう。


 彼女には一通りの仕事を教えた。わからなければメモを見れば十分だろうと。どうしてもわからないところは一人で悩まずに相談するように言った。


「はい、ありがとうございます」


 素直に返事をするし、性格は穏やかな方だったので、なんとか無事に終わった。


(はあ〜、やっと終わった)


 今日は何を食べようか考えていると、仕事からの帰り道に電話がかかってきた。誰だと思いスマホの画面を見ると、大学時代から付き合っている彼氏だった。


『明日、少し会えないか?』


 疲れているものの、ひと月ぐらい会っていないのだ。少しでも会いたいと思い、何を着ていくか年頃らしく悩みながら口元に笑みを綻ばせた。翌日になり、ドキドキしながら待ち合わせ場所に向かうとそこには彼氏がいた。


 いたのはいいが隣に女性が立っていた。


(うん? どういうこと 妹さんとかお姉さんはいなかったはず)


 声をかけようか戸惑っていると彼氏と目が合ってしまう。


「あ……」


 久しぶりに会えて嬉しかったので亜里沙は手を振った。


「久しぶり!、元気だった?」


「う、うん 元気だったよ」


 なぜか歯切れの悪そうな物言いに亜里沙に嫌な予感がよぎる。


「そうなんだ その隣の女性は?」


「えっと、彼女は」


 それからいい籠る彼氏にじれた彼の隣にいた女性が文句をいう。


「もう説明するって言ったでしょ」


「説明…?」


「私から説明するわね…彼と別れてくれない?」


「え……?」


「彼、あなたと別れたいみたいなの? あなたも最近会ってないみたいださい」


 もう一度彼を見ると、彼は視線を逸らす。


「ごめん……」


(ごめんって何よ……私がどんな思いで楽しみに……)


 じわりとした涙が溢れる。周りの人たちも亜里沙が泣いていることに何かあったのかと気づき始める。最初に感じたのは裏切られた悲しみだった。そして次に感じたのは怒りだった。亜里沙はカツカツと近寄り、彼を腕を捉えた。




 そしてーー



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