第三話:鬼族【リアルside】
朝日たちがゲームの世界を模索している中、現実の世界では彼らも動き出していた。まず警察側はこの事態を起こした犯人を見つけるために情報収集をした。
そしてとあるビルの階にいる人物が怪しいとの情報があり、ガサ入れのために二人の刑事はそこに赴くことになった。その二人に白羽の矢が立ったのが立川と足立だった。
「ようやく動けますね、先輩」
「ああ、そうだな」
足立と立川はそのビルに車で東京の某所に向かった。そこは数十分で着く場所で立川は驚いた。
「本当にここなんですか」
立川の疑っている物言いに足立は口を開く。
「それを確かめるんだろう」
「そうですね」
「どういうとこだと思っていたんだ?」
「う〜ん、山奥の中とかもっと人気のない場所でしょうか」
ありきたりな答えに足立は息を吐く。
「そんなことしていれば誰かが通報しているだろう」
「まあ、そうですね」
最もなことを言われた立川は納得した。少しするともう一台の車が駐車場にやってきた。
「あ、きましたね」
「そうだな」
その車でやってきたのは陰陽局から派遣されてやってきた公認陰陽師の矢上という男性だった。
「はじめまして、矢上と言います」
「今日はよろしくお願いします」
「いつもは阿倍野さんと加茂野さんが担当なのですが」
阿倍野と加茂野はゲーム内で起きていることの原因究明と現在意識不明の『菅原伊織』の捜索をしている。
「それは知っています、大変な仕事ですし」
「助かります」
自己紹介を終えて、人々の雑踏をかき分けてビルに入り込む前に矢上から静止させられた。
「少し、お待ちください」
刀印を作り、言霊を紡ぐ。
「界門!」
その瞬間、ビル一体に結界が張り巡らされた。立川は初めて見たので何がなんだが分からなかった。
「今のは…?」
「今のは界問って言って陰陽局が編み出した空間術です。これがあれば人払いをすることもできます」
「すごいですね 陰陽術って」
キラキラとした眼差しに矢上は立川の素直な言葉に笑った。
「それじゃ、行くか」
「はい」
矢上は内側に入り、エレベーターで35階に上がると、そこが噂の出所になっている場所だった。静かに歩きながらドアの前に立ち、立川は目配せしてノックをする。返事は返ってこないが足立は口を開く。
「いくぞ!」
「はい」
バッと開けるとそこには真っ暗闇で分からなかったがライトをつけてその光景が見れた。その光景に3人は驚愕する。
「これは……?」
そこには何人もの人間がVRゴーグルをつけていた。
「こいつら生きているのか……?」
ゲームをしていたとしてもあまりにも静かなことに不気味さを感じた。
「これは……」
矢上は直ちに調べるとやはりと声を上げる。
「やはり、この人も魂を抜かれていますね」
「というと、ここにあるのは体だけってことですか?」
「そうなりますね」
他の部屋を除いて見るとデスクの上には書類が散らばっており、他のところより生活感があるように見えた。デスクの上にはパソコンが何台も置かれており、矢上は電源を起こすと文章が書かれていた。
その文章はこうだった。
『ここまでたどり着いたあなた方は優秀ですが、それもそこまで』
いけしゃあしゃあな文章に3人は苛立つ。
「なんだ、これは」
そしてその後にこう綴られたいた。
『明日の午前0時 人々が死んでいく様を見ているがいい』
矢上はそれを見て目を細めた。
「随分と舐められたものですね 人間のことを」
そのパソコンに触り、矢上は目を閉じて自分の能力で遡った。
〇〇
目を開けた矢上の周りには立川たちがいないので、成功したのだとわかった。
(さてと、これでどこまで遡れるか私の実力次第ってところですね、裕司さんほどではありませんが)
どんどんと遡っていくとここにやってくる人とは少し違った雰囲気を持つ人物に関心を抱く。次々と業者にパソコンやVRなどの機材を指示していた。
(もしかして、この人物か)
矢上はその容姿を見て驚いた。見るからにその人物は人間だったからだ。
(ということは犯人は妖怪ではなく人間なのか?)
矢上は疑心暗鬼になりながら考えを巡らせているとその人物がスマホで電話をしていた。
(誰と電話しているんだ)
単独ではなく複数いることも考慮しないと頭に入れた。それからどんな記憶を遡ろうとしても情報が手に入らなかった。
(ここまでか)
矢上が意識を覚醒させて目を開けるとそこには立川と足立がいた。
「大丈夫ですか?」
「はい」
「ここに一人の人間がいました 年齢は30代の中肉中背の男性です」
「犯人は妖怪じゃなくて人間なんて」
立川は驚いて呟く。
「それじゃあ、この自体は人間が起こしたってことですか?」
「それもあります、ですが、これは」
矢上の歯切れの悪い言葉に足立と立川は不思議がる。
「どうしたんですか」
「いえ、あるいは妖怪は何年も生きれば人のように変化することもできます ならこれを起こすことも可能かと」
「そんな妖怪たちがいるんですか!?」
「はい、私たちは彼らを鬼族と呼んでいます」
〇〇
一方、科捜研では事件でゲームをした人間の仮死状態の人間の監察することになった。
なったというよりもそれ以外にするないのだが、野原は何かと実験したがり他の者たちからも止めようとするが聞こうとしない。
こんな時に育休になった助手の木下の存在が非常に恋しくなる。木下の代わりに同僚の自分が生贄となった。そんなセンチメンタルな気分に浸っていると扉から入ってきた人物に目を移した。
科捜研という場所にいるぐらいの美貌の持ち主でモデルのような容姿である。
普段は女性ということも忘れている研究員だが、彼、宮野雅人が来る日には大抵いつもよりこ綺麗にしていることに安心したものの、自分は男として見られていないことに、まあダメージを受ける。
気にしていないと嘘になるが………。そんなことより早くこの小さな猛獣をどうにかして欲しかった。
「ああ、宮野さん よく気にしてくれましたね」
困り顔の自分を見てその手元を見て宮野は苦笑する。
「ふふ、朝から大変でしたね」
「大変どころじゃないですよ、どうにかしてください」
「分かりました 野原主査」
「うん? 宮野か どうした」
にこやかな笑顔を宮野が向けると大抵の女性が目がハートになるのだが、彼女は一味違った。
「これ、貰い物なんですけど」
手元には高級そうな紙袋を持ち上げていた。
(あれって、銀座にあるチョコレートじゃない)
(あれを土産にされるなんて、マジでか)
(はあ、私もあげたい)
そんな彼に女子達はメロメロになっているのにも関わらず、野原は宮野に目をくれずチョコに釘付けである。
「こ、これは予約限定のチョコレートじゃないか でかしたぞ!」
「いえ、喜んでいただいで何よりです」
このやりとりも何度めか、最初は衝撃だった。よくもこの変人…じゃなくて野原に対して普通に会話できるのだと思った。
「ふふ、人間として意思が疎通できれば問題はありませんよ」
「まあ、それはそうだがな」
なんてことはないという宮野に、若いのに度胸が据わっていると感じる。
「それにしても仮死状態の人間なんて見れないから、いつもよりやばいですけど」
「ふふ、知的好奇心があるのは素晴らしいことです 知らないことを知る。分からなければわかるまで研究すればいいのですよ」
宮野の言葉に自分もいつの間にか侵食されている事に気づかず、そうか平然ととうなづいた。
鬼族、ずっと出したかったワードの一つです。
久しぶりに書く人物って名前さえ思い出せない……_:(´ཀ`」 ∠):どういう設定だったのかふんわりと思い出せますけど、登場人物の設定や名前が整理できてないところがあります。今のところはご了承くださいませ^_^;