表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/198

【第五部:上巻(終)】→下巻へと続く


 離れていた秀光、裕司、照良の3人は集合した。


「後はケイだけですね」


「そうだね、一応見てこようか」


「やられたりして……」


 ボフッと不吉なことをいう照良に裕司は冗談と分かっていたが小突かれた。


「縁起の悪いことを言わないでください」


 小突かれた拍子に照良は呻く。


「おい、今モロにひじが入ったーー」


「自業自得なので急いで行きましょうか ミツ」


 抗議をする照良に裕司は冷たく睥睨するのみである。


「そうですね」


 普段はノリのいい秀光なのだが、主人のこととなると感情的になる。少なからず怒っていタノで、心配することなく彼を置いて憲暁の元に向かった。そんな二人に照良は焦って叫んだ。


「おい、冗談だってば!?」


 そして数分後、憲暁の元にたどり着いて来たまではよかった。何かおかしいことに気づいた。少し離れたところでそれを見ていたメリーに話しかけた。


「メリーさん」


「あ、ユウさん達、大丈夫でしたか」


「はい、私は大丈夫ですが一体これはどうゆう状況ですか?」


 それは裕司以外も秀光と照良も同じ気持ちだった。それは憲暁が敵のプレーヤーに対して怒鳴っていたからだ。憲暁は手前のプレーヤーに近づき刀の握りかたがおかしいことを示唆する。


「お前、刀の使い方がなってないぞ」


 そんな憲暁に対しプレーヤーは謝罪する。


「は、はいっ、すみません」


 そして隣にいるプレーヤーにも叱りつけた。


「お前は踏み込みが甘すぎるぞ!」


「はい!」


「そして隣にいるお前はもう少し、度胸をつけろ」


「おおお押忍!」


 なぜか彼が敵のプレーヤーを指導していることに謎だらけで一同は困惑する。


「う〜ん、僕も数分前についたばかりで分からないんだよね いつの間にかこんな状態になっていて」


 どういえばいいのかメリーも頭をかいた。いつまでも放置しているわけにはいかず、憲暁に話しかけた。


「ケ〜イ!」


「!」


 裕司の声に気づいた憲暁と目が合うと近寄った。


「ユウ…、そちらも終わったんですか?」


「ええ、終わりましたが、これは一体」


「ああ、彼らと対戦をしたのですが、刀の使い方が甘かったりと色々と言いたいところがありまして、叩き込んでやろうと思いましてーー」


 一同は皆無言となったが、一人だけ吹き出す様に笑った。


「あははは」


「うん? 何がおかしいだ」


 笑っているメリーに憲暁は訝しんだ。裕司は場の空気を切り替えるために口を開いた。


「えっと、対戦者が降参しないとゲームが終わらないらしいんですが」


「え、そうなんですか」


 バッと弟子と化していたプレーヤー達に目をむけた。


「お前ら、降参するか」


 憲暁は睨みを利かせた。


「は、はい!」


 3人は揃って刻々とうなづき白旗をあげた。これにて憲暁達の初対戦のデビューを飾ったのだった。元の部屋に戻り一息ついた。


「全くどんな奴がいるかと思えば生温い」


 ぶつぶつと憲暁は小言を呟く。


「はは、まああの人たちはまだランクが低い方だからね、順位が高ければ高いほど難しくなるから、そこからが正念場だよ」


 憲暁は思うところがあったが、経験があるメリーの言うことに大人しくうなづいた。




〇〇



 一方、花月達は練習場を借りて、ククと桃華は修行をしていた。花月は意外なことに驚いていた。それはククが手に持っていた武器にである。


(ククちゃんって、銃を使うんだ)


 桃華はまずどこまでの腕前なのか見ることになった。


 この練習室にはいろんな道具があり、射撃もそのひとつである。


(さてと、どれだけの)


 ククは銃を構えて、的を狙う仕草はとても様になっており花月は感心した。


(かっこいい、ククちゃん)


 だが、その関心は一瞬でなくなってしまう。彼女が発射した銃弾は見事に的の外に当たった。


「えっと、今のは試しの一発で……」


「う、うん 頑張って」


 ククの引きつった笑みに花月と桃華は呆然とした。







〇〇






 それは次に撃っても同じことだった。


「えっと……」


 花月は下に俯くククに話しかけようとするが何を話せばいいのかと迷った。


「あんた……銃以外に何が使えるの?」


「……じゅ銃以外色々と試したのですが、なかなかうまく行かなくて長距離で飛び道具ならって思いまして」


 桃華は逡巡した。


(銃の扱いが慣れている様な感じがしたんだけど)


「当てる前は何を考えている?」


「当てる前ですか? 特には、外さない様にとか」


「もし、相手が動くタイミングとかはかったり、反撃される時とか」


「はい、その時にはすぐに逃げる様にしています」


 狙撃手は遠距離攻撃なので、直接対戦することはないが、欠点がある。見つかれば即座にやられる可能性が高いだろう。


(それを分かっているか、いないかは大きいわね)


「まずは周囲の把握から、そしてどこにいるのか確認して一人ずつ危険性が少ないものから取り除いていくのが定石かしら」


「はい、師匠!」


 師匠ーーそう呼ばれた桃華は嬉しそうになったのを花月は気づいた。


「それで狙いを定めてタイミングを持ち、ここぞというときに撃つイメージをすることも大事よ」


「イメージ……」


「私は何でもやれる、絶対に失敗しないって、そう思うだけでね」


 ククは深呼吸して気持ちを整えた。先ほどよりも大分顔つきが良くなった。


「行きます!」


 銃を構えたククは狙いを定める。


(私は大丈夫、私ならやれる)


 そして銃弾は真ん中ではないが、的に当たった。


「あ、当たった!?」


 ククの喜ぶ表情に見ていあ花月も喜んだ。その二人の喜びように桃華は苦笑しながら答えた。


「まだまだこれからよ」


 それから少し桃華とククの訓練が始まった。それを見ているうちに花月はこう思った。



(私も何か役に立ちたい)



 このゲームをしてから何もできないことに。花月は鬱屈とした思いだった。なので桃華に提案してみることにした。


「とう……じゃなくてモモちゃん、ちょっといいかな?」


「うん?」


「私も何かできないかな?」


 花月のやる気に桃華は考え込む。


「何かって、う〜ん」


(この世界での巫女ってどうゆう役割なんだろう)


 分からないので桃華はククに聞いてみた。


「そうですね、巫女は仲間の怪我を治したり、プレーヤーの力を補強したりするタイプでしょうか」


「となると攻撃タイプではないわけね」


「その通りです」


 その言葉に花月はガックリとした。


(はあ〜、この世界でも何もできないかな)


 花月がうなだれる様子を見ていた桃華はしょうがないなとため息をつく。


「その様子だと私たちと一緒に闘いたかったのね」


「うん……」


「あんたは一度も戦闘経験をしたことがないから無理よ」


「それは分かっているつもりだけど」


(本当にこうゆうところは頑固ね)


 桃華は諦めきれない花月に提案を出した。


「分かった……私も協力するから何か武器を選びなさい」


「……え! それって」


 花月は何を言われているのか分からずにいるとククがフォローした。


「どうやら一緒に戦えるみたいですね」


「いいの?」


 花月は嬉しそうに言いながらも複雑な気持ちだった。


「ハナ、モニターで見ている方がよかったの?」


 桃華の言葉に花月はぶんぶんと首を横に振った。


「よし、武器をレンタルするところってある?」


「あ、それなら武器屋があるので、そこに行けば」


 一旦修行を中断して、武器屋に向かった。中にはいろんな刀や銃など、様々な武器が置いていた。


「こんなにもあるんですね」


 花月はキョロキョロと物色しているとあるものに目が止まった。



(これは……)



 花月はそれに近寄り、手に持った。



(初めて持ったのにこれの使い方を知っているような……何故なんだろう)


 持っている花月の武器にククは何なのか分かった。


「それって(ほこ)ですね。う〜ん、女性が扱うのは難しいかも」


難色を示すククに花月は聞く。


「そうなの?」


(夢の中で戦っていたあの女性、確かこんなものを持っていたような……)


「それがいいの?」


 聞いてきた桃華に花月はうなづいた。


「うん、何かこれがいいて思ったの」


 



 何の確証も何もないのだが、ただ漠然と花月はそう思ったのだった。


今年最後の投稿、読んでいただいてありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ