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第十六話:巡り巡って

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 まずは情報収集からと憲暁、光秀、裕司、照良は動き出した。


「さて、まずやることはこの世界でゲームをしている孫を探すことか」


「そうですね、ですがこれだけ人がいるとは思いませんでした」


 周囲を見て人があまりにも良すぎてこの中で探し出すのは一苦労である。


「そうだな、何か案内人とか欲しいな〜土地勘とかねえし」


 先ほどのことを根に持ち照良を無視する様にしていたが裕司はたと気づき慌てて口を開いた。


「あ、誰か案内をしてくれる人を探しましょう!?」


「そうですね!」


「……そうですね」


 裕司は照良を見ることなく、一人で先を歩いていく。憲暁は慣れない裕司の姿に視線をオロオロとしていて、光秀が口元をニヤつかせていた。明らかに面白がっている。


「これは少し時間かかりそうですね、口は災いの元ですね」


「そんなこと言うのはこの口か」


「むぎゃ」


 照良はやけくそ気味に光秀の頬を引っ張った。それから人を雇える紹介所みたいなところを見つけたものの、ゲームの世界でも現実の世界と変わりなく、報酬となるお金が必要と言われた。


 この世界の初期の持ち金は100銭=1000円あるが、現段階で4人集まって400銭という壁を知恵を絞り、試行錯誤する。照良はふと提案をする。



「なんか依頼をこなすか、何かでかいイベントでも金をもらうか」


(イベント……!)


 そのことで裕司はあることを思い出す。


「そう言えば、イベントがあった時に意識不明者が続出してましたよね」


「どんなものか見なければ分かりませんね」


 案内所から合戦場を教えてもらい、4人はそこに向かった。合戦場は森の中にあり、突き進んでいくとそれらしい建物があった。


「ここでいいんでしょうか?」


「う〜ん、なんか東京ドームの様な建物ですね」


 街は江戸時代の様な建物が多いが、この建物は現代的な作りだった。


「さてと、入れるには何か必要なんですかね」


 探りながら辺りを4人で見回していると、威勢のいい声が上がった。


「は〜い、今なら珠姫のブロマイドが売っているよ、早いもん勝ちだよ」


 近くにいた男達はそれを聞いて目の色を変えて群がる中で狐目の少年が商魂たくましく、まるで正月のアメ横の風景で見る商人らしく叩き売りをしていた。


「俺にくれ!」


「俺にも!」


「は〜い毎度あり」


 何十枚のブロマイドは瞬く間に消え売れて行った。


「は〜、今日も盛況だったね」


 その人物に裕司は声をかけた。


「あの、すみません 少しお話しよろしいですか」


「はい、何の写真をお求めですか」


 威勢の良い口調は人柄がわかりやすく裕司も話しかけやすかった。


「えと、写真ではなくて」


「そうですか それで何を聞きたいですか?」


 彼の話の機転が早いことも助かる。


「この合戦場に入るには入場券とか必要ですか?」


「あれ、お姉さん ここに来るのは初めて?」


 裕司の外見は今現在くノ一の姿なので、口元をひきつりながら笑みを浮かべるのが精一杯だった。


「はい、そうなんです この世界に来て初めてなので色々とわからないことだらけでどうしようかと困っていまして」


「それじゃ、案内しようか?」


「え お言葉は嬉しいのですが お金がなくて」


「ああ、お金はいいよ お金じゃなくてモデルになってくれない」


 彼はからりと笑いながら随分な要求をしてきた。


(モ、モデル!?)


 小声で裕司は彼に話しかける。


『もしや、ヌードとかではないですよね……』


 それを聞いた彼は目を見開き、笑った。


「ふ」


『簡単なポーズだけで良いんだよ』

 

「そうですか」


 そのことを聞いた裕司はとりあえずほっとしたが、自分を晒し者にすることには抵抗があった。けれどこのチャンスを逃せば今度いつ見つかるかわからない。今、この時にも何人もの意識不明者が続出しているか分からないのだ。せっかく見つかった案内人に背に腹は帰られないと腹を括った。


「分かりました!」


 裕司は差し出した。彼は手を交わし握手を交わした。




「交渉成立だ!僕の名はメリー、メリーって呼んでくれ」



 メリーこと、遠藤麻里子は持ち前の陽気さでからりと笑った。 





〇〇



 メリーはこの世界でのアバターの呼び名であり、現実の世界での名前は遠藤麻里子。狭間高校の一年の女子高生。

 

 一方は公の場で派遣会社に務めるスタッフだが、影では公認の陰陽師をしているもの達だ。


 二方はどちらも全くもって縁があるもの同士ではない。この事件に巻き込まれていなければだが。麻里子がゲーム好きでなければこのゲームの中で出会うことはなかっただろうし、憲暁達はこの事件が起きなければ同じである。


 巡り巡ってこの場に居合わせたことが偶然ではなく、「縁」が生まれたと誰も思わないだろう。







 頼もしくも?ユカイな仲間となったメリーからこの世界の常識を色々と教えてもらった。憲暁達が普通に名前で呼び合っているとメリーは苦笑しながら口を開いた。


「この世界に来てまだ慣れていないと思うけど、この世界では本当の自分の名前は暗黙のルールというか、プライバシーだね」


「そうなんですか」


「うん、このネット社会だからね 個人情報を知って、犯罪に悪用されかれないからね」


「なるほど」


「このゲームを設定する時、ネームを付けたと思うけど 僕のメリーみたいに」


「あ、そう言えば」


 裕司達は心当たりがある表情をした。


「私はユウと名付けました」


「俺はテルだな」


「僕はケイ」


 憲暁が言うと、光秀が異議を唱える。


「え〜、ケイってカッコ良すぎない、のりりんでよくない?」


「別にどっちでもいいだろ、というかお前は勝手に呼んでいるんだろうが」


 怒鳴る憲暁に光秀はしれっと躱す。


「まあそっちの方が呼びやすいし」


 憲暁が光秀に今にも飛びかからんとした瞬間、パシャリとした音が聞こえた。音がした方向に二人同時に見るとそこにはメリーがカメラの様なものを構えていた。


「……お前、何をしている」


「うん? 写真を撮っている」


 低い声音で話す憲暁は中々迫力があるのだがそれをメリーはけろりと話す。


「それは分かっている、どうして撮ったんだ」


「二人の掛け合いが何だかコントを見てる見たいだったからね、思わず手が動いちゃって」


 無意識で手が動いた方自分は罪はないと言外に告げているメリーに憲暁はため息をつく。


「は〜……、今度撮るなら許可をもらってからにしろ」


「了解〜 今度からそうするね」


 怒気を削がれた憲暁に裕司は苦笑する。


「お前のカメラって趣味なのか?」


 メリーの行動に照良は興味を注がれた。


「うん、小さい頃からね人を撮るのが趣味でね 友達とかに可愛い子がいてよく被写体になってもらっているよ」


 メリーは花月と朝日の顔を思い浮かべた。憲暁はその友達に同情を覚えた。憲暁達はメリーを先導に合戦場に入った。建物の中に入るとロビーの様なものがあって大きなモニターがいくつもあった。


「中はこんな感じか?」


「うん、今対戦しているのはリストに出ているよ」


「強い人とかいるんですか?」


「ランクはいろはにほへとの順で、「い」の上が一番強く、「と」の下が一番下です」


「俺たちはどこなんだ」


「まだ初めてばかりだから「と」の下からのスタートだよん」


 そのことに憲暁達は衝撃を受けた。ステータスを見てとの下と表記されていた。憲暁達が動揺する様子にメリーはフォローした。


「あ、でもランクが全てじゃないし、例えば現実の世界で空手や柔道が得意な人は体術戦がすごいし、剣道をしている人は刀に長けている」


「なるほど 運動神経がいい人はそれだけ有利になるんですね」


「まあ、そればかりじゃなくてこのゲームをするプレーヤには固有スキルってものがあって、ありきたりなものもあれば、すごいレアな能力もがついてくるの」


「そんなものまで、そう言えば メリーさんのスキルは何ですか」


「スキルはいわばいわば秘密兵器、自分から言うものはまずはいないですよ」



「そうですか それは残念です」


 不適そうに笑うメリーににっこりと微笑み返す裕司に憲暁達は同じことを思った。



(狐の化かしあい)


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