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第十四話:一戦


 男達がゲームを始めたのはほんの数日前だった。男達は友人同士であった。20代前半と遊びたい盛りだが、ゲームも嫌いではないぐらいである。

 

 それでもまるで本物の様なリアルな世界観に魅入り、のめり込んで行った。時代劇の様な街並みに一緒にプレイするもの達と共に楽しんでいた。


 けれど現実の世界じゃなくても、本人の中身が変わることなどない。普段とやることは変わらないわけで。


「なあ、この世界の女の子めっちゃ可愛い子ばかりじゃん」


 友人の男が目を輝かせんばかりに煌めいていた。


「まあ、そうだな」


 ざっと見ても街の中を歩くものは容姿が整っている。


「アバターは理想の姿を設定できるからな」


「それじゃ、現実世界ではブスでも、こっちでは美人になれるってことか」


「お前、オブラートに包めよ」


 友人の言葉に吹き出しながら、笑った。それもそう、自分たちも同じ様なものなのだが。


「まあ、今はこの世界が現実じゃね?」


 いいことを言っただろうというドヤ顔が返ってきたのでムカついてこづくと声をあげた。


「いて、何すーー」


 彼は仕返ししようとした時、すれ違った人物に目を奪われた。振り返ると別の通行人達も同じ様な状況だった。


 艶やかな黒髪に華奢な体にはゴスロリと和服が組み合わさった格好を身に纏っていた。後ろ姿でも分かるくらい歩く姿が綺麗だった。


「おい、あんな綺麗な子とか初めてだな」


「ああ!」


 普段、現実の世界では綺麗な女性に縁がない彼らは浮き足立ち、勇気を奮い立たせた。


「あんな子と一度でも付き合いたいのが男の性だろう」


「ああ、声をかけてみるか」


「おう、こんな機会二度と起こらないかもな」


「そうだなーーよし」


 男達に自分自身を鼓舞する様に腕を組んだ。そして、女の子が少し狭まった薄暗い路地に入った時に声をかけた。


「ねえ、ちょっといいかな?」


 女の子がピタリと止まり振り返った。男達はその瞬間息が止まった。自分たちが思っていた以上に絶世の美少女だったからだ。



「…あの、何か?」


 想像通りの女の子の可愛らしい声音にはっとして口を開く。


「えっと、僕たちとこれから遊ばない?」


「君一人?」


 ナンパのよくある常套句を並べた男達は女の子の返事を待った。


「えっと、今から用事がありまして、すみません」


 辿々しくいう姿に男達は庇護欲をそそられる。女の子は立ち去ろうとした時、せっかく言ったのにと、絶好のチャンスを逃したくなくて退路を塞いだ。


「あの……」


「じゃあ、その用事が済んだら付き合ってくれない、少しだけだから」


「”     ”」


 強く押せばいけるかと思った男達は女の子が俯いてボソリと何かを話した。何を言ったんだと彼女に近寄ろうとした時だった。




 ガッ




 何かに後ろから肩を掴まれた男はギョッとして叫んだ。


「な、なんだ!?」


 後ろをパッと振り返るとそこには年端もいかない少年が立っていた。


「なんだよ、お前!?」


 いいところを邪魔された男達は憤慨する。


「俺たちの邪魔をするんじゃねえ」


 苛立ちながらいう男の叫びに女の子はびくりと肩を揺らした。


「あ、君に言ったんじゃないからね、さっさと目の前から消えてくれない」


「怖がっている様ですが?」


「ちょっとびっくりしただけだよ、ねえ」


「えっと、あの」


 女の子がオドオドと片言を話すのみである。いかにも貧弱そうな容姿の少年に勝てることを見込んで男達は多少強引でも力を行使することにした。





 〇〇





「お前に一戦を申し込む!」


 男の声と同時に画面が出現して、朝日は驚いた。決闘とは一対一で戦うことを意味し、大勢で戦うことを合戦


「わ、何だ?」


 驚く朝日の様子に男達が初心者だと確信する。


「お前、一戦は初めてか?」


「えっと、一戦ってひと勝負ですよね? (この世界では)それだったら初めてですね」


 まだ数日しかゲームをやってない男達だが、人並みにゲームを早く覚えることに自信があった。


 一方、朝日はそれなりに現実の世界では戦闘経験を積んでいるが、ゲームの世界では初めてなので素直に答えた。そんなことを朝日は教えるほどお人好しではない。


「なら言っておく、お前に勝ち目はない」


「何でですか?」


 朝日の問答に男達はおかしそうに呟いた。


「力の使い方も分からないお前と、力の使える俺、どっちが勝つかなんて一目瞭然だろう?」


 それに朝日はおどけて笑った。そんな態度に男達は苛立たせる。


「悪いことは言わない、逃げるなら今のうちだぞ」


「そうですか、それならなおのこと力の使い方を覚えなければなりませんね あ、この了承というのを押せばいいんですか?」


「て、てめえ」


 いけしゃあしゃあと宣う朝日に男達はぶちぎれる。了承だということに是と答える。


「ああ、そうだ ーー調子に乗ったことを後悔させてやる」


 10からカウントされ、


「はい、胸を貸してもらいます」


 7、6、5


「その減らず口叩けなくしてやる 俺が瞬殺してやる」



 4、3、2、1


「ああ、やってやれ」


 自分の武器である棍棒の様なものを手に持ち上げた。そして開始の合図が鳴り響いた。



【一戦開始】



 男は鳴り響いた瞬間走り出した。朝日を風を纏った棍棒で体を吹き飛ばし、壁に激突させて気絶させようとした。しかし、朝日は嫌な予感を察知して後方に下がった。


(ちっ)


「今、何かしようとしました?」


「ふん、何がだ」


 最初は余裕を見せていた男だが、朝日は素早い動きで回避する様子に早くも動揺する。


「この野郎、ちょこまかと逃げるんじゃねえ!?」


 かれこれ男の猛追から逃げ切る。男は肩で生きてしていたか、朝日は息が乱れなく涼しい表情である。


「ぜ〜は〜、ぜ〜は〜」


「あの、大丈夫ですか?」


「てめえ、どうなっているんだ?」


「どうなっているって」


 その疑問の答えは簡単である。志郎の修行に比べたら、こんなものの比ではない。というより生易しいものではないのでこれぐらいに音を上げていたら話にならないと言ってやりたいが。


「えっと、どうなっているんでしょうね」


 あははと笑うのが精一杯だった。そんな朝日のふざけている様子に見えて男は理性が切れる。


「はあっ はあ、初心者だからってお前のことを甘く見ていたがもう許さん! 殺してやる」


 目を血走らせる様子に、朝日は冷静に観察する。


(こわ……現実世界だったらすぐに警察に捕まりそうだな あれ、この世界では人を取締る組織はないのかな?)


 考えことをしていると男の雰囲気が変わった。そして見覚えるの「ある気」を感じた。



「!」



(これは妖気……! どういうことだ、さっきまで何も感じなかったのに)



 男は棍棒を振り上げながら声をあげた。


「強化」


 棍棒に風の鎧の様なものが覆いかぶさった。あれにぶつかればひとたまりもないだろうと察した朝日は自分の武器を出した。


「はっ 何だ、その黒い刀は そんな刀へし折ってやる!」


 自分の武器と比べたら貧相な姿に男はせせり笑った。朝日は自分が持っている愛刀を侮辱され始めてムカついた。


「そうですか、試してみればいいのでは」


「おお、いいぜ 受けて立ってやる」


 男は雄叫びをあげながら朝日に襲いかかる。


「お前の刀ごとへし折ってやる」


 朝日の目の前まで迫った男に、朝日は呟く。


「へし折れるものなら へし折ってみろ 居合いーー黒閃」


 その瞬間、黒い斬撃が男を襲った。


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