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第十話:わずかな可能性



 夜の8時ごろ、陰陽局の幹部職である管理官、壺井桐枝は陰陽局にある自室でくつろいでいると、着信の音に気づいた。


(この音は……)


 彼専用にしている着信音に気づき慌てて通話ボタンを押した。


「はい、壺井です」


『すみません 時間外にお電話をしてしまい』


 恐縮した声で言われたら、電話をされた方も強気には出れない。というよりもゆっくりとテレビを見ていたので丁度よかった。


「いえ、大丈夫ですよ あなたがこの電話をすることがないので驚きましたが」


『話が早くて助かります』


 冗談まじりに行った壺井は口元を引き締め気持ちを切り替える。


「それでご用件は」


『はい、最近巷で何やら不穏な事件が起きているみたいですね』


「お気づきでしたか。はい、つい先日VRゲームで意識不明者が続出している事が発覚しまして、警察と秘密裏に合同で会議したところ、うちの陰陽師を派遣することにしました」


『派遣されるメンバーは私が知っているメンバーですか?』


「はい、阿倍野裕司、加茂野照良、賀茂憲暁、賀茂光秀の4名です」


「あの4人ですね」


「ええ、最近会う事が多いようですね」


「特に賀茂家の次期当主が主にオカゲ様にご執心ですね」


「ええ、困ったものですね、それで他にもメンバーを募集していると聞いたのですが」


「どなたからです?」


「烏丸桃華さんという見習いの子です」


「ああ、あの子ですね」


「その子もゲームに参加するようで」


「そうでしたか、とはいえ珍しいですね」


「ええ、事情がありまして。我が主人の幼なじみの友達が被害者でして、その幼なじみがゲームに参加して助けたいらしく…」


「その子は戦闘の経験とかありますか?」


「いえ、特にありません」


 バッサリとする物言いだが、本当のことなのである。花月は日常生活では普通の女の子であることを除けばだが。


「それなら……」


 壺井は考えこみ、どうしたものかと返答に迷うが志郎は話を進める。


「ですが人並み以上に霊感が強いですね」


「ほう、霊感が」


 霊感は人によって千差万別である。強いものもいれば弱いものもいる。志郎が太鼓判を押しているのなら、なおのこと秀でているのだろうと壺井は推察する。


「多分、明日はその二人が陰陽局に来ると思うので、判断は壺井さんに任せます」


「かしこまりました」


「はい、それともう一つお願いがーー」


「分かりました、その様に手配します」


「助かります」


 その言葉を最後に壺井から通話ボタンを切り話が終わった。



〇〇



 桃華と花月は朝日達と話をして、そして翌日いつものように過ごした。


 麻里子が休む事が知っている分、花月達は不安はなくなったが友希子は知らずにいる。というよりも妖怪のことを認識してない彼女にどう説明したらいいか分からなかった。昼休みになり、麻里子が今日も休みだと分かり友希子はため息をつく。


「はあ〜、一体いつまで休んでいるのかね あの子は」


 ぶつぶつと言っている友希子だが、声音には心配でたまらないという感情が溢れていた。


(友希ちゃん……)


「……そうだね 麻里子が学校に来れるようになったら、なんかお祝いしないとね」


「うん、そうだね」


 花月の勇気付ける声に友希子はうなづいた。


(必ず、麻里子を助け出すから)


 花月と桃華は覚悟を胸に秘めて、そして来る翌日の放課後となる。行く前に教室で朝日と真澄に花月は挨拶をした。


「それじゃ、桃華ちゃんと行ってくるね」


「うん……気をつけてね」


 朝日は元気なく手を振ることが精一杯だった。


「ご武運を」


 真澄は会釈をして二人を見送った。花月と桃華は電車に乗り、陰陽局に向かった。桃華を先導に歩いていくと、とあるビルの前で止まった。


「ここが陰陽局よ」


「え、ここが」


 花月はそびえたつビルを眺め見た。




〇〇




 和洋折衷な陰陽寮と似ているかと思っていた花月は見慣れたビルの外観に少し驚いた。花月の驚いている表情に桃華はクスリと笑い説明した。


「陰陽寮は特殊なところにあるからね、逆にあんな建物があったら目立ってしまうだろうし、木を隠すなら森の中って言葉があるように、公では派遣会社ってことになっているの」


 確かにと頷きながら花月は桃華についていく。桃華は受付に用意していた依頼内容を渡した。すると受付の人が案内を申し出てきた。


「その前にお二人に面接を受けたいと言われております」


「面接ですか?」


 依頼を受けるときは面接を受けることはほとんどないのだが。今回は一人ではなく何の実践経験もない花月も同行するのだ。実力が見合っていないと、許可が降りない場合もある。桃華はこればかりは仕方ないと承諾する。


「分かりました」


「それではご案内します」


 受付の女性についていきながら、桃華は考えた。


(そういえば、面接をする人って誰だ?かなり上の人になるかもしれない)


 そうして部屋に着いたのか、女性は止まり、部屋のプレートを見て驚く。


(ここは)


 桃華が驚くまもなく、受付の女性はノックした。


「管理官」


「はい、何でしょう」


「お二人がいらっしゃいました」


「入れてください」


「はい」


 受付の女性はドアを開けた。桃華と花月は中に入るように勧めた。


「ありがとう、佐野さん」


 管理官は受付にお礼を言うと一礼して去っていった。花月と桃華は受付にお礼を言った。


「ありがとうございます」


 視線を部屋の主人に戻した。


「入ってきて構わないよ」


 目と目があった花月達は一礼して入った。


「失礼します」


 そこには眼鏡をかけた白髪の男性がいた。


(優しそうな人だな……)


 花月はそんなことを考えていると、桃華の様子がおかしいことに気がついた。桃華は予想以上に陰陽局の幹部である彼のもとに来るとは思っていなかったので緊張していた。


「まずは自己紹介をしましょうか。私はこの陰陽局の管理官を勤めいている壺井桐枝と申します。お二人の名前を教えてもらってよろしいでしょうか?」


 まずは桃華から口を開いた。


「見習いの烏丸桃華と申します」


 桃華に倣い、花月も紹介する。


「私は平野花月と申します」


「烏丸さんと平野さんですね、今回来てもらったのは意識不明者が続出しているAランク任務です」


「Aランク任務ですか!?」


「Aランク……?」


 初めて耳にする単語に花月は首を傾げ、それに壺井は説明する。


「ランクはS〜Eとあり、難易度があります。Aランクは公認の陰陽師しか受けられないのですが、受けるものによって管理官であれば個別で判断することもできます」


 桃華はランクがSへと近づくごとに任務が過酷になることも熟知しているのは何度も場数を踏んできたからだ。それ以外に心配する事柄はーー視線を花月の方へと滑らせた。


 花月は戦闘経験をした事がない。まるっきりの初心者だ。そんな彼女をみすみすと危険なゲームに参加することはと考える。そんなことを桃華は考えていたのが分かったのか、花月はおもむろに口を開いた。



「友達と約束したんです……また一緒に遊ぼうって……だからもしまだわずかな可能性でもあるなら諦めたくありません」



「もしかしたら君は何もできなかもしれない」


 壺井の先ほどとは打って変わって冷たい声音が響く。


「はい、何もできないかもしれません、けど何かできるかもしれません」


(ふふ、思った以上に剛胆なお嬢さんだ、志郎様が見込んだお二人だけありますね)


「分かりました 合格としましょう」


 壺井の言葉に花月はほっと安堵したものの、桃華の瞳はどこか真剣味を帯びていた。そして別の部屋に案内された二人は見覚えのある機械を見て目を見開く。


「これはヘッドギアですね」


「よくご存知ですね」


「はい、ゲーム好きの友達から教わったんです」


「そうですか、それでは説明をします。ゲームの中では陰陽局の者もいるのですが、アバターになると、当人が分からないので無闇に危険を晒すわけにはいかないので、合言葉を作ったほうがいいかもしれません。合言葉はきつねと言われたら、コンコンと言ってください」


「きつね……コンコンですか?」


 どうして狐なんだろうと桃華は思ったが、壺井が説明する様子に花月は可愛いと思った。


「分かりましたか? それでは準備をしてもらってよろしいですか?」


「はい!」


 桃華と花月は頷き合い、ヘッドギアをはめると視界が暗くなった。


「それではスタートボタンを押します、ご武運を」


 その瞬間暗かった世界がいきなり明るくなった。そして花月たちはダイブした。すると何もないところから女性が一人現れたことに驚く。ガイダンスのようである。まずはキャッチコピーのような機械的な声音が花月と桃華を別々に出迎えた。







「ようこそ、合戦(かっせん)・百花繚乱の世界へ」


昨日は風邪を引いて投稿できずすみません( ;∀;)寒くなってきましたので皆様もお体にはご自愛ください!

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