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今昔あやかし転生奇譚 〜平凡な女子高生の彼女と幼なじみには秘密がある  作者: yume
第四部:月の光の中で花のように笑う少女に四神は涙する
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第十五話:御影様、助太刀する



『うん、あの少年は何かに取り憑かれている 退治できても、対象が無事である補償はない……』


 朝日は花月に気づかれない程度に目を細めた。


『朝日様……』


 真澄は物憂げな瞳で朝日を見つめた。それに応えるように朝日は口を開く。


『……ごめん、真澄 それでも僕は見過ごせない 』


 真澄は否と答えた。


『いいえ、それよりもここで見過ごしたら御影様の名が廃ります。 それでこそ人を守る御影様です』


『真澄』


『なので全力でサポートをさせていただきます』


 真澄は目を閉じ意識を集中した。


 呼ぶのは水気(すいき)、この回廊の下には水が限っていて水を使う術には適しており温めた空気が水蒸気と化した。




水霧(みずきり)




 瞬く間に真澄が展開した霧は回廊や舞台全体に広がった。いきなり霧が出没した花月は少しパニックになり落ち着かせるために真澄は力強く握った。


「ただの自然現象でしょ」


 朝日は花月を心配そうに見て、真澄に視線を送った。



『それじゃ、行ってくる』


『はい、御武運を』



 朝日は周囲が霧で覆われている中、術を唱え自分と同じ姿の式神を作り花月達を一瞥して立ち去った。


 そして何も知らない花月は心配そうに式神の朝日に話しかける。


「朝日ちゃん、大丈夫?」


「うん、私は大丈夫だよ はなちゃんは?」


「うん、私も あまり離れない方がいいね」


「そうだね」




 〇〇




 憲暁たちは桃華たちを救援しようと向かったが白い霧の出現に困惑する。


「これは、一体なんだ?!」


「霧……? こんなに突然に」


 そんな予報はなかったはずだと異常事態に警戒心を強めた。それは桃華たちも同じでいきなり出現した霧に動揺し視界の悪さに苦戦する。


 少し離れていた西岡の姿が見えなくなり、桃華は身構えた瞬間だった。強い打撃が襲いかかり、体勢が崩れてしまった。



「くっ?!」



 白い霧から現れた南は倒れかかった桃華に刀身を振り下ろそうとした時だった。


 桃華の目の前に人影が飛び込んできた。いきなりの闖入者に桃華は動揺する。




「お前はーー?!」



「……私は、御影様 この狭間区を守る守り人です」


 その名前に桃華はどこかで聞いたものと思い出す。


「御影様……って花月が言っていた」


「話は後でしましょう 目の前の彼を助けないと」


 南は邪魔者が現れて呻くような声を出した。打開策が思いつかない桃華は困窮する。


「でも、どうやって……?」


 その時だった。


「お前ら……」


「南?!」


 苦しげだが、正気のある声に桃華は反応し必死に声をかける。


「南、心配するな お前のことは絶対に助ける」


「っ……、俺なんて 助けなくていい」


 南の苦しそうな言葉に桃華は訝しむ。


「どういうことだ…?」



「っ……この前、廃工場に襲ったのは俺だからだ」



「!?」



 桃華は一昨日の夜のことを思い出した。あの違和感は南のものだったのかと合致した。ハッとした桃華の表情に南はさもおかしそうに笑った。



「なら、早く俺と戦ってくれ ……俺が俺であるうちに」


「っ……そんなことできるわけないだろう! 私はお前を助ける そしてお前は死ぬことを諦めるな!」


 南は桃華のことを毛嫌いしていた。つい先日に殺されるかもしれない相手に罵詈雑言を浴びせられても仕方がない。それなのに自分を叱咤する声に気持ちが大きく揺らぐ。




「お前っ……ぐあっ?!」


 そして苦悶の声はどんどん大きくなって言った。どんどんと顔色が悪くなっていく様子に桃華は焦燥する。


「さっきよりも顔色が悪くなっていく」


(どうすればいいんだ)


 南を元気付けようとしたものの状況はよくならない。





(……私はまた助けられないのか)


 あんなに修行をして、また大切な人をーー




 桃華の脳裏に一人の少年が思い浮かび目頭が熱くなる。





「烏丸さん、あなたは一人じゃありません 今は私がいますので」


 ふらつきそうになる桃華に御影様は寄り添い優しく語りかける。


「御影様…」



「私に考えがあります」


 耳打ちする御影様の提案に桃華はうなづいた。





〇〇





『私の刀は悪いものを祓うことができます 少しの間、彼の動きを封じ込められていてもらえれば』


「分かった」


 やることが決まれば桃華の冷静になり、すぐに行動した。桃華は刀を鞘に納めて自分を髪紐を解き刀印を作る。



「彼の者を捕縛せよ ーー(ばく)


 桃華の髪ひもは瞬く間に縄状になり、身動きを封じた



「今だ!」



 朝日は桃華のかけ声ととも駆けて、南方出身に取り付いた悪しきものを斬り払った。その瞬間、断末魔の叫び声は周囲にいや陰陽寮中に響き渡る。




「ギャアアア」




 悪しきものは消え去り、桃華と朝日は地面に降り立った。


「っ南は大丈夫か……?!」


「取り憑かれていた分、精神と肉体にストレスがかかっているので休養は必要ですね。入院は少し済みそうですね」


 悪霊に取り憑かれたものは身体的にも精神的にもエネルギーを削られてしまうことはやむ得ないのだが、本来ならお札や護摩壇などで祈祷して払うのが通例なのだが、予想以上の能力に驚愕する。



「すごい刀なんだな それだけで悪霊を祓うなんて」


 桃華は朝日の刀に興味津々である。


「どこの鍛冶屋で打たれたものなんだ?」


「へ、あの えっと……これは」


 御影様もとい朝日は桃華の気迫に戸惑う。


(早くここから抜け出して帰らないと)


 困っている朝日に更なる追い討ちがかかる。


「南!」


 いきなり霧から現れた人影に憲暁は朝日に襲いかかられ、とっさに受け止める。


「うわ?!」


 憲暁は予想外の人物に目を見開く。



「お前は……あの時の!」


「ちょっと先に行かないでよ」


 後から秀光と南の相棒の相原が現れ、彼は倒れている南に駆け寄る。


「大和……? 大和!」


「お前、一体何をした?!」


 倒れている南に憲暁はどういうことだと睨みつける。今にも斬りかかろうとする様子に桃華は慌てて説明する。


「落ち着け! 南はもう大丈夫だ この方が、御影様が悪しきものを祓ってくれたんだ」


「御影様って……」


 それを聞いた憲暁は驚愕する。


「!! それは 本当なのか?」


「ああ、本当だ」


 訝しむような目で憲暁は朝日を凝視しながら口を開いた。


 「友人を助けていてありがとうございます」


 警戒は解いていないが憲暁の慇懃な態度に朝日は意外そうに目を見開く。



(こうゆうところは素直なんだな)



 いつもそれぐらいだったらいいのにと朝日は気づかれない程度に嘆息する。相原は口を開き感謝の言葉を述べた。


「御影様、ありがとうございます こいつを助けていただいて」


「いえ、私はこうゆうことしかできないので それでは私は用がすみましたの、それでは」


 憲暁たちに一礼して、御影様h白い霧の中に消えていった。突然、桃華が声をあげた。


「あ」


「どうした、烏丸?」


「御影様の刀の由来、聞きそびれた」


 がくりと残念そうにいう桃華に秀光は笑いがこぼれる。


「またいつか会えるよ、きっと」




 〇〇





 朝日は霧の中に紛れながら式神とバトンタッチをして入れ替わった。



(フ〜、間一髪だった 真澄 ありがとう)


(お疲れ様です)



 真澄は朝日の一仕事を労った。霧が晴れてきて観衆たちは不安と緊張感が取れたが舞台の半壊状態を見て唖然となる。


 それを見たものたちはパニックになりかけるが、実況がコントロールする。


「皆様、どうか落ち着いてください 決勝戦の只中 学生の侵入が悪霊に取り憑かれたものと判明いたしました それを退治したのは彼らです」


 宮田の声に舞台上に立っているものに注目する。


「そこにいるのは、あの賀茂家の次期当主 賀茂憲暁くんです」


『賀茂家ってあの?!』


『すごいんだ、やっぱり』


『さすが』


「いや〜、何もしてないんだけど悪くないね〜」


 秀光は照れくさい気持ちになったが、憲暁はむっつりとした表情をした。長年幼なじみの秀光は彼が今どんな気持ちなのか容易に想像がついた。


(まあ、退治したのは俺らじゃないし)


 御影様は姿を消す前に自分が倒したことは秘密にしてくれと頼まれたのだ。


(なぜとその理由を聞くまでもなく、姿を消してしまったので確かめようもない)


 秀光は舞台から降りようと再び声をかけようとした時、憲暁は声をあげる。


「悪霊を倒したのは俺じゃない」


(ーー!!)


 憲暁の生真面目な性格が我慢できなかったのかいきなりの発言に秀光と観衆に動揺と困惑が走った。



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