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今昔あやかし転生奇譚 〜平凡な女子高生の彼女と幼なじみには秘密がある  作者: yume
第四部:月の光の中で花のように笑う少女に四神は涙する
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第十四話:赤面する桃華・操られた傀儡


 花月は気になったことを秀光に聞いた。


「あの西岡さんが言っていたのって、どうゆうことですか? 金は木を剋すって?」


「それはね」


 秀光が花月に教えようとするが、その前に朝日が口を開いた。


「金は木を傷つけ、切り倒す」


「……へ、正解、まさか知っているとわ! 代永さん詳しいね」


「すごいね、朝日ちゃん」


 パチパチと花月に褒められた朝日は口元が引きつりそうになったが何とか堪えた。


「ふふ、前に神社とかで見たことがあって」


「あ〜、なるほどね」


 秀光は納得したようにうなづく。朝日が知っていたのは、鬼の教官と化した志郎はみっちりと叩き込まれたのだ。


「それじゃあ、元々この試合って西岡さんが優勢だったってことですか?」


「確かに二人のパワーバランスも考えると西岡さんの方が優勢だったが、東堂さんも頭脳戦で選出された強者だ。どちらが自分に属するそれぞれの能力を引き出したかによる 東堂さんは武器で拘束をしていたが、西岡さんより力の使い方が優っていれば勝っていたかもしれない」


「なるほど」


 倒れた東堂は担架で運ばれていく。戦いが終わった西岡は舞台から降り立った。


 衝撃の余波で壊れた舞台上を専門の人たちが修繕し終わり、宮田はアナウンスで放送する。


「それでは、舞台が整いましたので代表者の方は出場してください」


 そして、桃華と対戦する北の代表者が舞台の場に立った。


 東西の時の始まる前にあった緊張感が走る。審判がたち、声をあげる。


「南方の代表者、烏丸桃華 北方の代表者北原玄人 第二試合、試合開始!」


 二人ともまずは距離をとり、愛用の武器を取り出す。


 桃華は愛刀を取り出し、北原は刺突用の刃がついている武器である。打つ、突く、受ける、かける、投げるなど技法は様々である。


「あの人は桃華ちゃんよりも、背はありますが、細身の方ですね」


「うん、北原玄人ちゃん、烏丸ちゃんと同じ肉体派だね」


 その瞬間、観衆たちの声が湧き上がる。キンと甲高い金属音が鳴り響く。花月が一瞬、目を離したスキに桃華と北原は切り結んでいた。


 激しい対戦に見るものは魅了される。北原は桃華の攻撃を武器の釵で払い受け、攻撃し桃華は後方に下がる。


 どちらの攻防も見逃せない展開に花月たちは心配そうに伺う。


「あの人もすごいですね」


「そうだね、あの二人のパワーバランスはほぼ互角かもしれない 北原さんもスピード重視で 烏丸ちゃんのその速さに負けていないーーとなると長期戦は不利だね スピードが落ちてくるから早めに決着をつけるだろうね」


 秀光の入った通り、次に動き出したのは北原である。釵を桃華の方にかざす。


「ふ〜、やっぱりこうなると思ったよ 速さはほぼ互角 ならばこれでどうだ」


 釵から水の放射線を打ち出され桃華の動きを封じる。


「おおっと、烏丸選手の動きを封じた さてどうする!?」


 身動きが取れない桃華は焦燥に駆られる。


(ここで大技を出すと後の余力が……)


 どうするかと思案していた時だった。どこからか声が聞こえた。それは自分を必死に応援してくれる優しい声だった。


「桃華ちゃん、頑張って」


「烏丸さん、頑張ってください」


 姿を見る暇がないのにその声を聞いた桃華は冷静さを取り戻す。桃華は力を入れて一呼吸入れた。前足を踏み出し、力を込めて口を開く


「参りますーー刀身は染まり、紅く煌く   居合いの型ーー紅一閃」



「かは?!」


 超高速の移動で間合いに入り、釵を弾きとばれる。


「はあ〜、まいった私の負けだよ 降参する」


 北原は両手を上げてふり負けを認めた。


「第二試合の勝者、烏丸選手の勝利!!」


 桃華が勝った瞬間、花月たちが喜びあうのが聞こえ桃華に喜びをかみしめた。舞台上から立ち去ろうとすると、北原から声がかかる。


「あの子たちは友達か? 良い子たちだな」


 北原も桃華への応援に気づいていてもおかしくない。その指摘に恥ずかしくなった桃華は視線を逸らす。


「べ……別に」


 桃華が感情をあらわにする様子に北原は珍しそうに凝視をした。決勝戦は一時間後にとり行われる。その間、観客たちも各々と行動をとり、手洗いに行ったり軽食をとったりと張り詰めていた緊張と興奮をほぐそうと英気を養い自由な時間をくつろく。




 その時間が嵐の前の静けさとも知らずにーー。






〇〇





 相原宗介は人を探し回っていた。


 時刻は今にも11時前、今にも決勝戦が始まりそうな雰囲気に浮かれつつある観衆の中、バディを組んでいる南大和の姿がトイレに入ってから姿を消したからだ。


 最初はあまり気にしていなかったが、時間が経つにつれて気になり出し。


 決勝戦が始まる十五分前になっても現れないのでとうとう我慢できなかった相原は探しに向かった。


 しかし近場のトイレを探しに向かっても姿形はなく、とうとう決勝戦が始まった。


「はあ〜、たく あいつどこに行ったんだよ」


 ボリボリと相原を苛立ちながら、痒くなる頭をかきむしる。


 いつも何かあったときは生真面目な性格なので急にいなくなるとは思わなかった。いつにない予測不能な行動に焦りを隠せない相原は人とぶつかる。


「……っ?!」


「わっと、すみません」


 相原はすぐに謝るとその少年と目があった。


「宗介っち、どうしたの?」


「お前は」


「賀茂?!」


 相原は知り合いだったことに驚きの声をあげた。いつもは飄々としている相原がどこかおかしいことに気づいた憲暁は声をかける。


「何かあったのか?」


「何がというか、うちの相棒が見えなくなって探し回っているんだよ」


「宗介っちの相棒って大和っちだったよね」


「ああ、トイレにいくって言ったきり、どこに行ったのか」


「それじゃ、一緒に探した方が」


 秀光は思案している時、憲暁は舞台を見て目を開く。


「ーー秀光」


 後ろから声をかけられ秀光は舞台の方に向くと、違和感を感じた。


「え、あれ……?」


「あそこにいるのって南じゃないか?」


 何を言っているんだと思ったが、自分も動揺していた。


「僕、目がおかしくなったかな?」


 決勝戦の舞台の上に二人の間に立つように自分たちが探そうとしている少年ーー南大和が忽然と立っていた。




 〇〇



 桃華と西の代表者西岡慎太郎は一時間たっぷりと休憩をとり、決勝を臨んだ。


「どっちが勝っても、恨みっこなしだ」


 西岡の意気込みに桃華は受け止める。


「ふん、それはお互い様だ」


「それでは、両者前へ」


「決勝戦の南の代表者、烏丸桃華と対するは西の代表者西岡慎太郎の試合開始す」


 審判が手を振りかざした瞬間が始まりの合図である。


 ますは両者距離を取り合い、どちらが動き出すか警戒し、西岡の方が動き出そうとした瞬間だった。彼は怪訝な声を上げてピタリと止まった。



「ああ”ん?!」


 その声に何をそんなに驚いているのか桃華は周囲を巡らすと正体がわかった。


 じっと凝視すると見覚えのある人物に桃華は驚愕する。つい最近あったばかりなのですぐに思い出した。


「お前は……南か」


「おいおい、悪いが飛び入り参加がいるなんて聞いてねえぞ」


 西岡は何かの余興かと思っていたが、



「本当だったら、僕が決勝に出るはずだったんだ あいつが邪魔をしなければ」



「おい」



 実況は速やかに事態を収束しようと警備員に声をかけ、イレギュラーを退避させようとした。


「君、舞台から今すぐ降りなさい」


 警備員は優しく声をかけようとするが彼の肩を掴み、いうことを聴かせようとした。


「いやだ、俺は……」


 その瞬間、カクンと人形のように糸が切れた瞬間の様子を間近でみた警備員のものは悪寒が走る。


 南から発せられた瘴気の腕に警備員は吹き飛ばされる。


「ぐわあ!?!」


 容赦無く投げ飛ばされたものを見た西岡は口元を引きつかせる。


「おいおい、冗談でもやりすぎだろ」


「西岡、どうやら冗談じゃなさそうだ」


 南の瞳は赤く光り、冷たく笑っていた。その様子に西岡と桃華に戦慄が走る。回廊で茫然と見ていた相原は、花月たちと同じようにいやそれ以上に困惑していた。


「どうしちまったんだ あいつ とにかく止めないと」


 相原が今にも駆け出そうとしたのを秀光が止める。


「ちょい待ち! 宗介っ あれはもう何かに取り憑かれいる」


「!!?」


 冷静な言葉に相原は少し冷静になった。


「それもこの結界の中にいても悪い瘴気だ 取り憑かれたものは只者じゃ済まない それでもいくか?」


「……ああ、あいつは俺の相棒だ」


 その言葉を近くで聞いた憲暁はーー


「それじゃ、行くぞ」


 秀光と相原はうなづき、回廊から飛び出した。その様子を近くで見ていた花月たちは心配する。


「大丈夫かな、あの人たち、桃華ちゃんも」


「今、私たちができるのは見ておくしかできませんね」


 真澄は花月を落ち着かせようと話しかける中、朝日と念話をした。


『朝日様、これはーー』



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