Ⅵ.夕暮れ時の授業
Ⅵ.夕暮れ時の授業
大学に入って分かったことだが、同じ大学の同じ学部、同じ学科といっても、意外と英語力には差があるようだ。もちろん、高校の時ほど大きな差ではなかったけれど、同じ入試を通って入学した人間とは思えないほど差がある。
悠士は、古書店を後にしてから電車で一駅の大学に向かい。現在、教室で授業を受けているところである。高校では英語は得意な方だったが、このクラスでは中の上か上の下といったところだ。時々、思いもよらないほど英語が苦手な学生が混じっていて驚くが、悠士自身も高確率で授業に出ていないので、あまり偉そうなことは言えない。
授業では、イギリスの文化についてのテキストを読んでいる。なんでも、ドルイド教ではオークの木を神聖視していた、とかそんな話である。オークの木といえば、先ほど買った本の表紙には大きな木が描かれていたのを思い出す。そういえば、日本でも巨木はご神木として神聖なものとされることが多いのではないだろうか?悠士の地元でも、巨大なスダジイの木がご神木として大切にされていた。ということは、あの本に書かれた木も、何か神聖なものを表しているのだろうか?ということは、あの本に書かれた木も、何か神聖なものを表しているのだろうか?
そんなことをぼぉっと考えていると、先生から指名される。あてられた所は無事に答えることができたが、出席日数が危ないとのこと。どうやら、あと一回でも休むと単位は無いようだ。単位に興味は無いし、単位の為に勉強するというのはなんだかしっくり来ないが、ドルイドの話は面白そうなので、できれば引き続きこの授業には出たいと思う。
そうこうしている内に、90分の授業が終わった。このクラスには顔見知りも少ないので、一人教室を出る。外はとうに薄暗くなっていた。だだっ広い敷地を歩き、立ち並ぶ新旧の校舎の間を抜けていく。この大学は歴史が長いので、古い建物はかなり古く、夕暮れ時の明かりの中で眺めると少し怖い。特に電気の消えたコンクリート造りの建物などは、真っ暗な入口がいかにも恐ろし気だ。
広いキャンパスと一万人を超える学生の中では、何か少々変なものが混じっていたり、逆に、学生が一人ぐらい消えてしまっても誰も気づかないのじゃないだろうか?
そんなクダラナイことを考えながら、家路についた。春の夕暮れは、まだ薄ら寒かった。