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ユメユメ~二年目~  作者: サトル
7.只最初の妙の一字許残り留て
62/287

7-2


「ねえ、きょ……じゃなくって、“桔子”。これからは、本当の意味の! ……何でも話せるような、友達になりたい。一方的にお世話してもらう関係じゃなくってさ……! あたし、あんたの悩みも聞けるようになりたい。……怒ってよ、叩いたって良いよ! あたしはバカのままだから、言ってもらわないと分かんないもん!」


 夢姫の手を振りほどく力も残っていないのか、はたまた自らの意思か――桔子は突き放そうとはしないまま、またもその目に涙を浮かべた。

 強く抱きしめていた夢姫にはその表情は伺い知れない、だが震えるような吐息は耳に届いていた。




「……ほんと、夢姫は馬鹿。破天荒で好奇心の化け物で、いっつも迷惑ばっかり。……でも」


 ――放っておけなかった、と言えばずるい言い方になると桔子は分かっていた。何故なら、自分の中でも“その感情”ははっきりと息づいていたのだ、それが分かっていたのだから。

 放っておけない、ただそれだけじゃなく、“自分がそうしたかった”のだと――


「……分かってほしかった。……ワガママだよね。言葉にした事も無いのに“察して欲しかった”なんて」

「桔子……」


 ソラは前足を地に降ろすと、また二人から離れる。空気を察したように小さく息を吐くと、尻尾を揺らした。


「ねえ夢姫……今度は、ちゃんと友達になってくれますか?」

「当たり前だよ! 桔子……きいちゃん!」


 夢姫の背中に手を回すと、桔子はその控えめな胸の中で泣き続けたのだった。



 ―――



「――つまり、桔子さんは……」

「……そ。彼女は別に変わった訳では無かった、ただそれまで言わなかった“本音をぶちまけた”だけで」


 同じ頃。坂道の途中で座り込んでしまった和輝が事の顛末を紡ぎ終えると、刹那は見下ろしたまま息を飲んだ。


「……分からない。言えば良かったんじゃないか? “自分は梗耶ではない”って。簡単な」

「言ったみたいですよ。……まあ、色々“見てしまった”俺からしたら、仕方ないのかなって。これは口外しないでおきますけど」

「……」


 急こう配な坂道が続いていた為か、和輝の顔色が優れないようにも思える。

 刹那は視線を合わせるように片膝をつくと心配げに首を傾げた。


「大丈夫です。……ご心配どうも、ですけど、その王子様っぽいヤツ(片膝つき)は男女問わずやるんですね」

「……つい癖で」

「変な癖……」


 手を貸そうとした刹那に断りを入れると、和輝は手すりを頼りに立ち上がる。

 深く息を吐き、再び歩き始めた和輝の後を刹那も追い掛けていった。


「……俺、最初は“なんらかの目的”で水瀬に取り入ってるだけだろうな、って思ったんですよ」

「え?」


 再び、和輝の足が止まる。

 やはり体調が優れないのではないか、と刹那は慮り声を掛けようと前に回り込んだが、その心配を余所に和輝は一笑に伏す。

 呆気に取られ、そっけなく聞き返した刹那を見つめると、和輝はその目を伏せ息を吐いた。


「だけど……少し違うのかなって……その、鏡の中で戦った時に思ったんです。何か事情はありそうですけど、逢坂さんなりに水瀬を……水瀬の大事なものを守ろうとしてくれてたのかなって」

「それは……」

「……まあ、俺の中の認識が少し変わったってだけの話です。……水瀬を守ってくれてありがとう。多分、途中で折れずにここまで辿りつけたのは逢坂さんのおかげですから」


 和輝はそう笑うと、もう一度刹那を追い越していく。

 どこか晴れやかに思える和輝の顔を見る事も出来ないまま、刹那は唇をかみしめた。


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