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ユメユメ~二年目~  作者: サトル
10.心有るべし
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10-4

 ――その頃……“ライタくん”との戦いを終えた夢姫達は各々の道具を休め、息をつく。

 ぬいぐるみの腹部に埋め込まれていた、優菜の心にも影響を及ぼしていたであろう“道具”……勾玉は、刹那の手から半ば奪い取るような格好で取り上げた佐助の手の中で眠るように闇を潜めていた。


「ねえまやちゃん! その道具って、何なの? えっと、何かあったよね? 天がどうとか」

「“十界”もまともに覚えられぬのか馬鹿女は。あと“様”をつけろ馬鹿女」

「あいたー! もー! 佐助には聞いてない! バカバカうるさいしー!」


 戦いの末に体力を使い果たしたかと思えば、夢姫は先程までの攻防も嘘かのように甲高い声を弾ませると、摩耶に駆け寄り――そして佐助に長いツーテールを引っ張られて無理やりに止められる。

 そのやり取りを傍目に……息を潜めた“道具”と同じく、眠るように横たわったままの優菜の元には桔子と刹那が寄り添い屈みこんでいた。


「……優菜ちゃん、まだ息はあるみたいだね。なるべくなら病院に連れて行った方が良いと思うんだけど……桔子ちゃん、彼女の保護者と連絡は取れないかい?」

「……すみません、優菜の事は……実は、良く知らなくって。この子は火災の関係者では無かったようですし」

「そうか……」


 すぐ近くで会話する刹那達の声、少し離れた場所では口喧嘩を始めてしまっていた夢姫達の騒がしい声が辺りをにぎわせていたが、横たわる少女の瞳が開くことは無かった。

 “このまま目覚めないのではないか”――最悪の結末を想像してしまった様子の常識人二人が寄り添い、優菜の呼吸を確かめる。微かにではあるが、少女の華奢な腹部は上下に動いているようであり、二人は顔を見合わせてため息を落としたのだった。


「美咲さんなら、何かご存じだとは思うんですけど……」

「……そう言えば、美咲君と……和輝君の姿も見えないね? 春宮さん! 和輝君は――」


 夢姫達の言い争いも終結したのか、再びの静寂を取り戻す。

 庭を見渡す桔子の視線を辿り刹那も顔をあげると……ふと、館の入り口付近にいた寛二朗と目が合った。


「おおおおうツナ坊! 大変だぞ、あの病み上がり君が――」

「そのツナ坊って言うのもそうだけど、君が付けるあだ名ってセンスが一かけらも見つけられなくて逆にその才能を評価したくなるよね」

「な、なんだよ急に褒めるなよ~」

「これは嫌味のつもりだったんだけど。……で、和輝君がなんだって?」


 ――取り留めのない言葉を散らかしながら寛二朗はそれまでの経緯を紡ぐ。

 言葉を拾い集めながら、刹那と桔子……そして、いつしか会話に加わっていた夢姫と佐助も――和輝が今まさに美咲と対峙しているという状況を理解すると、顔を見合わせ各々の表情を伺い合った。


「――幾ら本調子でないとはいえ、道具を持っていない吾妻に負けたりはせぬと思うが……」

「ほほーん? 佐助ぴょん心配なんだ~? そんな不安そうな顔し……あだ! ぶつことないじゃない! バカ!」


 夢姫と佐助、一度は収まったはずの争いの火が再燃しかけている事を察した刹那と桔子がそれぞれを引き離すと、一同はそれぞれの言葉を待つかのように口を閉ざす。

 皆の考えが完全に一致しているのかどうかなど知る由も無い事。

 だが、それぞれの表情が物語っているものは恐らく同じ思い……“和輝の身を案じている”という共通の感情のようであった。


 傍目に眺めていた摩耶は、彼らの心中を察したかのように静かに歩み寄ると、皆の視線を集める。

 いつの間にか傍に歩み寄っていた八雲もその視線を手向ける中、摩耶は微かに微笑んだ。


「私はその“道具”を持ち帰る。……くわしい話は、この事が片付いたらゆっくり説明も出来よう。……佐助、ついて来てはくれぬか? 友を思う気持ちは尊重したいのは山々だが」

「ま、摩耶様まで! 私めは別に心配等してはおりませぬ! もちろん摩耶様の帰路お供させて頂きたく!!」


 少し冗談めいた口ぶりに翻弄され、いつになく声を跳ね上げた佐助は摩耶の前に跪くと二つ返事で“勾玉”を握り締めた。


「そこに眠る少女(優菜)は、もう道具の支配下に無い。起きる頃にはその記憶も潰えているであろう。灯之崎和輝の時と同様に、睡眠不足のような状況である故……少し休ませると良い」


 先に帰路に立とうとしていた佐助を引き留めると、摩耶は不安げな様子の刹那や桔子を安心させるかのように続けると、視線が重なった八雲にも微笑みを返す。


「この屋敷内で休ませる事も出来ようが、誰か見ておく人間を置いておく方が良いであろう。例えば……いざと言う時に病院に運ぶ事も出来る大人の目の届くところなどに」

「……分かった。……俺からクララには連絡しておくから、誰か來葉堂に連れて帰ってくれる? 俺は……俺は、まだ、向き合うべき相手が残っている以上、ここに残るべきでしょ?」


 手向けられた眼差しから逸らすように赤い瞳を伏せた八雲はその意図を察した様子でため息をついたのだった。



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