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96 最後の会談

お久しぶりです。

エタるかと思いましたが再開できました。

今回は最終話まで連投となる予定です。

楽しんで頂ければ幸いです。

1590年7月下旬 二階堂氏 ~須賀川城~



奥州への巡察で須賀川城に滞在している秀吉殿より俺に対して一対一の会談の申し入れがあった。

これは秀吉殿の地位や警備の面を考えると異常な事だと思う。

天下人となった秀吉殿は並ぶ地位の者が殆ど居ないため、相手の都合を考えずに俺を数名の側近で囲んで面談するのが普通なのだ。

実際、小田原征伐の時には秀長殿や三成殿らが傍に控えている状態で会っている。


もちろん俺が秀吉殿に危害を加える事が無いことを信用してくれているのだとは思うが、それ以上に他人に聞かれたくない話をしたいのではないかと想像できるのだ。

正直、今更何を話したい、又は聞きたいのだろうか。

…二階堂や奥州を守るためとは言え、秀吉殿に少しプレッシャーを与え過ぎたかもしれん。

この会談、あまりいい予感がしないなぁ…。



こうして俺は秀吉殿の近習の誘導で城内にある書院の一つへ向かった。

この書院は城内の庭園の中に独立して建てられたもので、周囲を警護すれば少人数での会談に適した場所になる。

俺や盛義も家臣達と重要な会談をする場合に良く使用している場所だ。

勝手知ったる場所ではあるものの、俺は緊張感を持ちながら書院の中へ足を踏み入れた。


「輝行殿、我等がいる事でいろいろ忙しいところを呼び立ててすまんのう。おかげで盛義殿をはじめ、二階堂の方々より素晴らしい歓待を受け、皆大変満足しておるようじゃ」

「とんでもございません。秀吉様をこの須賀川の地にお迎え出来て我ら一同大変名誉に感じております」

「そう言って貰えると有難い。まあ、二階堂の方々からすればその様に答えるしかなかろうて。ははははっ」

この様に言われ、俺は苦笑しながら秀吉殿の言葉を聞くしか無い。正直な方だ。


俺達は会談のために用意された酒と肴に少し口を付けると、古くは桶狭間から最近の小田原討伐の話を交えて和やかな雰囲気で歓談していた。

しかし、俺はいつ呼び出された要件を話すのかと内心ジリジリした気持であった。

このため、秀吉殿の前でその不安を抑えきれずに言葉に出してしまった。

「秀吉殿と言葉を交わすのは大変楽しい時間でございます。ただし、本来の用件が済みませんとその楽しみも半減いたします。御無礼を承知で伺いますが、此度の御招待は如何なる用件でございましょうか」


秀吉殿は鋭い視線で俺をゆっくり上から舐める様に見ると、俺の問いに答える。

「…ふむ、今少し輝行殿と昔話を楽しもうと思っておったが仕方あるまい。実は輝行殿にいくつか確認したいことがあったのじゃ」

確認したい事か…。思い当たる事はいくつかあるので言い逃れは無理そうだ。

ここである程度こちらの考えを明かした方が誤解を招かずに済むだろう。


「どの様な事で御座いましょうか」

俺は背筋を伸ばし、真剣な眼差しを秀吉殿へ向けて問いかけた。

「輝行殿、此度の小田原攻めで奥州勢の多くは我らと一緒に戦い日ノ本の平穏を望まれる帝の勅命を遵守した。しかし、一部の大名は未だに関白となった儂に従う事をよしとしておらぬ事も知っておる。既に葛西や大崎などの者が抵抗を見せておる」

「愚かな事です。時勢の見えぬ輩が多く嘆かわしい」

全く豊臣が全国統一目前だと言うのに無駄な事だ。政治的にも、戦略的にも抵抗できるはずが無いのに…。


「そこで輝行殿に教えて欲しい。奥州勢は豊臣と戦う事を想定しておったのではないか。備えて置く事は戦の習いじゃから決してこの事を責めるつもりはない。この事は儂が保証するから正直に言うてくださらんか」

やっぱりそこを聞いて来たか。遠回しには意識させていたから当たり前だが正面から切り込んでくるとは思わなかった。こういう事は不和の種にもなる事があるから直接話す事はあまり無いからなぁ。

とは言え、ここではぐらかした方が秀吉殿に不信感を与えそうだ。

「…おおよそはその通りです。我ら奥州勢は秀吉殿とであれば日ノ本に平穏をもたらす事が出来ると協力しまいたが、もしも他の方が奥州へ乗り込んだ場合はどの様な仕置をするのか大きな不安がございました。大名が戦に敗れて散るのは致し方ありませぬが、そのために民が蹂躙される事は避けとうございました」


「…そうであったか。先日小田原で見た火薬は凄まじい物であった。あれが我が陣に降り注ぐ事を考えると冷や汗が出るかと思うたわ。ただし、儂があれを戦で使うのであれば初見で確実に相手を仕留める時に使う。あれを見せたと言う事は儂に叛意は無いと言う意味じゃと思うた」

「ご想像の通りかと。我等はあれだけの力を残しても秀吉殿に従う覚悟をお見せしたつもりです」

「ふむ…、しかし輝行殿、船から打った火砲と白河の件は、一つ間違えば大事に至るところだったのではないかのう」


あぁ、艦砲射撃への危険視はもちろん白河の陣地についても調べられたいたのか!

ただし、それば憶測も多分に入っているはずだ。なぜなら奥州以外の忍は白河の陣地には近づけさせていないからだ。

奥州勢の一部にはもしもの場合も想定し、多少の情報共有も必要なので噂程度は流しているが。

ここは真面に取り合わない方が無難だろう。


「はて、船からの花火は御想像の通りですが、白河については多くの軍勢の駐留を引き受けるために多少の労役は必要でした。秀吉殿に誤解を与える様な事は無かったと記憶しております」

「まあ、そう言う事にしておこうかの。まだ奥州の仕置は終わっておらん。これからも輝行殿にはいろいろと協力してもらわねばならんから無理を言うつもりは無い」

空気を読んで話をここまでにしてくれる様だ。ありがたい。


「それとは別に輝行殿。儂はお主の信頼を得るために話しておかなければならないことがある。それはこれからの日ノ本の在り様じゃ。失礼じゃが、恐らく儂よりも生い先が短いそなたが心配しておるのは、これから日ノ本や奥州、そして二階堂がどうなって行くのかじゃろう」

「その通りでございます。ぜひお聞かせ願います」

「ただしのう、それを語るには信長様の話をもう一度語らねばなるまい」

「信長様ですか…」

こうして俺は秀吉殿から思っても見なかった信長様についての話を聞く事になる。

読んで頂きありがとうございます。

(注)この物語はパラレルワールドでありフィクションです。

   史実や現実と大きく異なる設定がありますのでご了承ください。


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