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92 小田原征伐5

楽しんで頂ければ幸いです。

1590年6月 二階堂氏 ~小田原・笠懸山~



奥州の兵が小田原へ到着し、各大名が行ったが豊臣陣営は停滞ムードだ。

小田原城の総構えは想像以上の規模であり、支城は少しづつ攻略しているものの、小田原城への攻略は進んでいない。

もちろん見方になる事を期待していた上杉や伊達が敵方として豊臣陣中へ現れた事で北条もかなり士気が下がったと聞いている。

そしてこの城を見れば更に北条の士気も下がるだろう。


「よし、幕を下ろすのだ!」

「「「おおぅ!!」」」

秀吉殿が陣を構えていた笠懸山で陣幕が一斉に取り払われ『石垣山一夜城』が現れた。

史実では6月下旬あたりに完成したが、早々と到着した奥州の兵が造営を助けたため6月初めにこの城が完成した。

うちの兵もかなり造営作業を頑張っていたから後で褒美でもあげないとね。




数日後に小田原城の内部の様子が聞こえて来た。北条の側近と家康殿らが和平交渉を進めているらしい。

ただし、秀長殿は北条を残すつもりはないらしく、既に家康殿へ関東を任せる事を示唆しているらしい。

降伏の条件をどうするのかを話し合っているのだろう。

まあ、それでも『小田原評定』という言葉が残っているほどだから、すぐに結論は出ない様だ。


そこで俺は秀吉殿へある事を申し出る事にした。

「秀吉様、お願いがございます。」

「ほう、なんですかな?」

「北条の降伏は目前であると思われますが、ここで奥州の兵に一働きさせていただけませんか?」

「それは小田原城を攻めるということですか」


「いえ、あの城を攻めたのでは損害が大きすぎます。それに、ほっておいても北条は降伏するでしょう」

「それでは何をするのですかな?」

「はい、豊臣の威光を見せるために我ら奥州勢で『花火』を打ち上げたいと思います」

「花火というと、あの夜に光る花火ですかな?」

「その通りでございます」


この時代に既に花火は存在している。

焙烙玉などの火薬を用いた兵器もあるぐらいなので、簡単な打ち上げ花火や手筒花火などを見る事が出来たのだ。

俺は以前から須賀川で行われていた『釈迦堂川花火大会』の様なものをこの世界でもやってみたかった。

その準備として、かなり時間は掛ったが領内で硝石丘法による硝石の大量生産も行っていのだ。


生産した硝石の一部は同盟関係にある大名へ売っていたが、その多くは備蓄していた。

花火に使うと言ったら、息子の盛義からは白い目で見られた事もある。

まあ重臣達にも「火薬の無駄遣いでは?」と大分呆れられたけどな。

普通の大名では戦略物資である硝石を遊戯の様な物へ大量に使う事は考えられなかったのだろう。

しかし、ここでは奥州の平和を実現するため大手を振って使いまくるぞ!


「よろしいでしょう。それでは二階堂の花火を見せていただきましょう。北条の者共を驚かすようなものを期待しておりますぞ」

「ははっ!」

こうして俺は秀吉殿から花火大会開催の許可を受けることが出来た。

奥州の大名と連携して開催するから厳密に言うと二階堂の花火ではないんだが突っ込まない。

まずは花火大会のために秀長殿や石田殿といろいろ調整しなければな。





1590年6月 豊臣氏 ~小田原・笠懸山~



陣中に設けられた桟敷に座り、儂は花火が始まるのを待っている。

傍らには花火の解説をするためにと二階堂輝行殿が控えておる。

もちろん、秀長や三成なども同席しており酒宴の様な状態で花火を楽しみに待っている。

少し離れた桟敷には女房達も見物のために出て来ておるわ。

あまり遊興する機会がなかったため、いい見世物になると輝行殿が勧めてくれたのだ。


夜のとばりが落ち、辺りが暗くなると準備していた奥州の兵が動くのが見える。

小田原城はと言えば奥州の兵が夜襲の準備をしているのではないかと、多くの兵が総構えの土塁に配置されているようじゃ。

これから始まる花火で夜襲が始まったかと北条の者共も驚くじゃろうて。

そうしている内に輝行殿がすっと膝を進めて近づいて来る。


「殿下、それではこれより奥州勢による花火を始めさせていただきます。一緒に太鼓の演奏も行いますのでお楽しみください」

「うむ、楽しい宴になりそうじゃな」

「はっ、それでは始めよ!」

輝行殿が手に持った扇子を優雅に振ると、陣中に置かれた大太鼓が勇壮に打ち鳴らされる。


合図と同時に小田原城の近くの奥州勢の陣より火の手があがった。

それは二十本ほどもあり、火花が吹き上がっている。

「「「おおぅ!」」」

「殿下、あれは手筒花火でございます。多少趣向を凝らしておりますのでお楽しみください」

儂が頷いていると花火が動き始める。


よく観ると、花火は奥州勢の陣の周りを移動しており、その陣中の様子が火花に薄っすらと照らされて伺う事が出来る。

そこには三千を超える鉄砲隊が盾を構えながら控えていた。

「北条の者共が要らぬ邪魔をせぬよう、兵を配置しております。安心してお楽しみくださいますよう」


小田原城では大騒ぎであろうのう。今にも奥州勢が攻めて来る様に見える。

手筒花火は代わるがわる点火され、太鼓の音と共に我らを楽しませる。

女房達も滅多に見られない花火を楽しんでいる様じゃな。

酒を飲みながら花火を見ていると輝宗殿が再び近づいて来る。


「殿下、次の花火は少し音が大きくなりますのでご了承ください。もしかすると驚いてしまう方もいるやも知れません」

「そうか、三成。女房達へ一声掛けて置いてくれぬか」

「畏まりました」

光秀がそちらの桟敷へ向かい声を掛けると、輝宗殿が合図して太鼓の音の調子が変わる。


すると陣と小田原城の中間あたりの所から大きな音がした。

パーン、ヒューン。ド~~ン!!

「「「おおぅ!!」」」

火の玉が上がったと思ったら爆発して綺麗な花が咲いた!

この様な見事な花火は初めて見たぞ!


これが少し間を置いて連続して打ちあがると、改めて輝行殿が説明を始めた。

「これが二階堂の打ち上げ花火でございます。高く綺麗に打ち上げるために工夫を凝らしました。殿下にお楽しみいただければ幸いです。」

「これは凄いのお!あれだけ綺麗に見える花火を見たのは初めてじゃ!」

「領内の職人達が苦労して編み出した技でございます。殿下に喜んで頂き、職人達も満足でございましょう」


始めは驚いていた大名達や女房達も花火の美しさに目を奪われ、音にも慣れて楽しみ始めた。

しかし、連続して打ちあがる大量の花火を見て、儂は輝宗殿に聞いてみた。

「輝宗殿、凄い量の花火じゃがどれ程あるのかのう?」

「はい、今宵の花火は奥州勢の力を結集し一万発用意してございます」

「い、一万発・・・」

「そうでございます。おかげで奥州にはまともに戦える火薬は残っていない程でございます」


そう言って微笑む輝行殿を見て、儂はまず一万発の花火を用意できる奥州の力を改めて思い知った。

これ程の技術と財力、そして武力があるとは思っても見なかったのだ。

この花火を見れば北条の者共は明日にでも降伏の使者を送って来るやもしれん。

それはそうじゃ。この花火が砲弾として陣や城へ落ちて来たらどうなるか・・・。


花火は平地からだけではなく、小田原城の沖に停泊していた二階堂や伊達の船からも上がっておった。

さすがの堅城小田原城も海から砲撃される事は想定しておるまい。

よく見れば聡い大名はこの大量の砲撃が自分達に向かって放たれることを想像して顔が引きつっておるわ。

儂は何とかごまかしているが、秀長や三成らはどうかのう?

読んで頂きありがとうございます。

(注)この物語はパラレルワールドでありフィクションです。

   史実や現実と大きく異なる設定がありますのでご了承ください。

現在、不定期投稿となっております。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 奥州の力w 奥州は踏まれて当然だろ。というか踏まれるべき。踏まれて踏まれて固まっていくし、それが国のためになるんだから。
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