90 小田原征伐3
読んで頂きありがとうございます。
いつも誤字が多くて申し訳ございません。ご報告感謝いたします。
おかげで相関図の主人公の名前を間違えるというとんでもない誤りが発見でしました(;¥;)
1590年 豊臣氏 ~小田原・石垣山~
伊達輝宗殿と二階堂輝行殿が船で遠く奥州より参陣してくれた。
今後の奥州静謐を考えると、かの地における重要人物である二人の参陣は大きな意味を持つ。
このために到着から数日後に二人を囲んで多くの大名も呼び宴を催したが、輝宗殿は長旅の疲れからか早めに休むと退席する事になった。
対照的に輝行殿はその御歳にも係わらず宴の席でも皆と楽しそうに談笑しておった。
二階堂の縁者がいくつかの大名家で政務を担っているため、その関係の大名とも話が弾んだようだ。
おかげで豊臣陣営には二階堂と親しくする大名が多く存在する事となっておる。
ここまで見越して一族の仕官を斡旋しておったのじゃろうな。
西国にこれだけ親しい大名家を多く持つ奥羽の大名は他におらん。
楽しい宴が終わると儂は照行殿とじっくり話をするために別の席を設けた。
本当は疲れているかもしれんが輝行殿は嫌な顔もせずに付き合ってくれた。
個人的な話も多いため同席するのは秀長のみとした。
これなら私的な昔話に花を咲かせる事も出来るじゃろう。
「輝行殿、此度は遠く奥州からの参陣、誠にご苦労であった。心から礼を申しますぞ」
「秀吉様、過分なお言葉でございます。日ノ本の主となられた方へご挨拶に参るのは当然の事と存じます」
「まあ、表向きの挨拶はこの程度にしましょうぞ。ここには儂と秀長しかおりません。堅苦しい事は抜きに話してくだされ、のう秀長」
「その通りです輝行殿。何せ信長様の下で仕えていた折には私と兄者が輝行様とお呼びする立場だったのですから」
「そこまで言って頂けるのであればお言葉に甘えましょう。この場だけ昔の様に秀吉殿、秀長殿と呼ばせて頂きます」
「それで良い。初めてお会いしたのは堺で信長様と出くわした時でしたな」
「そうですな。某も初めて訪れる堺の街に目を奪われておりましたが、そこで信長様にお会いするとは思ってもみませんでした」
「信長様も輝行殿の事は耳に入っていたようですが、輝行殿も信長様を知っていたのですな」
「お見掛けしたのは京の義輝様へご挨拶に伺った時ですが、商人達から信長様の噂は聞いておりました」
「おそらく信長様も熱田の商人から輝行殿の噂を聞いておったのでしょうな。お二人とも商いへの理解が高いですから」
「そうじゃのう秀長。儂もそれを見習っておる。戦に強いばかりでは日ノ本を治められない事は信長様の言動から強く感じられた。だから輝行殿へも親近感を持たれておった」
「信長様は他国でやって有益だと思う事はどんどん取り入れておりましたな。楽市楽座などもその一例でありましょうが、立場に関係なくどん欲に色々な事を学んでおられた」
それでも新しい事を次々と始める信長様に家臣は混乱したものじゃ。
だからこそ新参者でも働きに応じて取り立てて頂き、今日の儂があるのじゃがなぁ。
志半ばで光秀に討たれた信長様の気持ちを思うと残念でならん。
少しでもその遺志を継いで日ノ本に安寧をもたらすために働いて来た。
「儂はのう輝行殿、自分から望んで日ノ本を治めるつもりはなかったのじゃ。しかし、織田の中を見渡しても信長様の遺志を継げる者は見当たらなかった」
「能力ならば光秀にもあったかもしれませんが、それは論外。信忠様が生きておられれば兄上が筆頭になって皆で盛り立てる事も可能でしたでしょうが・・・」
「そうですな。私から見ても信長様の遺志を継げるのは秀吉殿しかいないと思っておりました。ですから少しでもお力になれればと一族の者に協力させたのです」
「あの時は二階堂の援助があってありがたかった。時間との勝負であったので急ぎ準備した兵糧なども足りなくなる程じゃったからのう」
「ええ、三成や官兵衛が終始青い顔をしておりましたからなぁ。あれ程の備蓄を適正な値で譲って頂いたのはありがたかったですな」
「そう言って頂ければ苦労して集めた一族の者も頑張った甲斐があったと言うものです。それにしてもあの中国からの大返しは見事でした」
「それもこれも皆が頑張ってくれたおかげよ。普段は偉そうにしておるが心の中ではいつも感謝しておる」
「「「ははははっ!」」
「実は秀吉殿にお聞きしたい事がございました。備中高松城の事です」
「ほう、水攻めの件ですな」
「左様、あの水攻めですが、その基には孫子があるのではないかと考えておりました」
「・・・どうしてその様に思われたのかのう?」
「孫子を著わした孫武は将軍として呉軍を率い徐の国を攻めた際に水攻めにて城壁を破ったと言う逸話が伝わっております。初めてこれを知った際には心が躍りましたが、それと同じ感動をこの水攻めから感じました」
「そうですか・・・。嬉しい事ですなぁ。実はおっしゃる通り高松城を攻める際にこの逸話が頭の中に浮かんだのです。しかし、儂は農民と変わらない低い身分の侍の家の出でしたから兵法などを学ぶ機会はありませんでした」
「そうですなぁ兄者、幼い頃は野良仕事ばかりしていましたなぁ」
「信長様に仕えた後も役をこなす事に精一杯で満足に書物も読んでおりませんでしたな。そんな中で美濃攻めの際に半兵衛に出会ったのじゃ」
「あの稲葉山城を落とした竹中殿ですな」
「左様、半兵衛は孫子を始めとした兵法書を数多く学んでおった。儂は従軍によって長い時間を半兵衛と共に過ごす中で、戦の逸話などを半兵衛から聞いて兵法を学んだのじゃ」
「まあ書物で読ませたのでは長く続かない事を半兵衛殿も分かっておられたのでしょうな」
「そうかもしれんな?かっかっかっ!まあそんな訳で孫子が頭の隅にあったのじゃ」
「兵を失わずに勝つ事は、戦って勝つよりも良と言うのが孫子の教えの一つですからな」
「そうなのじゃ輝行殿、だからその前に半兵衛の献策により落とした、播磨の三木城で行った兵糧攻めにもその考え方が生かされておる」
「そう考えると惜しい方を亡くされましたなぁ」
「そうなのじゃ照行殿、半兵衛がおればもっと少ない損害で戦を終わらせる事が出来たのではないかと悔やまれるのじゃ。だからこそ一刻も早く日ノ本に安寧をもたらさねばならぬ。どうか輝行殿にもご協力願いたい」
儂は心からそう願って輝行殿に深く頭を下げた。
読んで頂きありがとうございます。
(注)この物語はパラレルワールドでありフィクションです。
史実や現実と大きく異なる設定がありますのでご了承ください。
酒を飲んだ勢いで創作する事も多いので自己チェックが機能しておりません。
皆様の誤字等のご指摘に大変感謝しております。