88 小田原征伐1
楽しんで頂ければ幸いです。
1589年 豊臣氏 ~大阪城~
「どういうことなのじゃ三成、北条は儂に臣従したのではないのか!?」
秀吉様が御怒りになっている。その原因は関東の諸大名へ惣無事令を発したにも関わらず戦が収まらないためだ。
そしてその筆頭として北条方が真田の名胡桃城を攻め落としたとの知らせが入ったのだ。
「現在確認中ではございますが北条が名胡桃城を攻めた事は真田からの訴えもあり事実かと存じます。北条からも弁明の使者が訪れているようです」
「何が弁明じゃ!何度も当主が上洛するように伝えたにもかかわらず一向に来んではないか。その上で戦を起こすとは堪忍袋の緒が切れたわ!」
北条殿は既に秀吉様へ臣従している佐竹や上杉、真田らと小競り合いを繰り返している。
北条はその支配地域が関東一円に及んでおり、佐竹ら北関東の大名は危機感を募らせていた。
真田との間でも沼田で争っていたが、双方の権利を認める形で昨年秀吉様が裁定を下し、北条もこれを受け入れて臣従の為に当主が上洛する手筈であった。
しかし、今回の戦は裁定を破り、上洛さえも無視する行為とみなされた。
「・・・秀長、諸将へ戦の準備をさせよ。北条へ最後通牒を突き付けた上で来年の春には関東を平定する」
「北条との戦となればただでは済みますまい。どうにか回避出来ませんか?」
「だめじゃ。裁定を無視されては今後の支配に陰りが出る。ここは厳しい仕置をする必要があるのじゃ」
「分かりました。して動員する兵はどれ程をお考えですか?」
「15万・・・、いや20万用意せよ。関東の田舎侍共を蹂躙してくれるわ」
20万とは途方もない数だ。これは拙い、軽く想定しただけでもとんでもない量の物資が必要となる。
参戦する諸大名には自前で物資を用意するよう通達しなければならないだろう。
おそらく日ノ本でも最大の戦力だ。北条殿ももう少し我慢すればよかったものを・・・。
豊臣政権の礎となっていただくしかあるまいな。
1589年 二階堂氏 ~須賀川城~
「父上、京からの知らせで秀吉様が北条を征伐する軍を起こす準備を始めたようです」
「・・・そうか」
とうとうこの時が来てしまったようだ。
実質的にこの国の頂点に立った秀吉殿に盾突くとは北条殿もどうしたと言うのか。
おそらく真田に嵌められたのだろうが、それにしても無謀な行いだ。
北条が動員できる兵力は最大で5万を超えるかもしれない。
しかし、秀吉殿は軽くその倍以上の兵を動員出来るはずだ。
さらに攻められるのが北条となれば各支城へ配置する兵が必要となるため実際に戦える兵は減少する。
そして堅城で名高い小田原城へ籠城したとしても、これを支援出来る勢力は既にこの国にはいないのだ。
「準備は整っているか?」
「はい、沼田の件があって父上が準備を急ぐようご指示がありましたので8割方は既に」
「うむ、それではそのまま進めよ。もしも北条がすぐに降伏せず、秀吉殿らが小田原城を囲めばそこで披露する事となろう。そうでなくても謁見して機会を作ればよい」
「それにしてもこれが奥羽の仕置に影響を及ぼすとは・・・。父上の説明を聞いて盛興殿や輝宗殿と納得したしましたが驚きましたぞ」
「しかしな盛義、これが上手く行かなければ日ノ本はもう一度大きな戦乱を迎えるかも知れぬぞ?」
「それは分かっております。でも父上はそうならない為に準備されてきたのでしょう」
「そうじゃ、戦乱など誰も望んではおらん。しかし、お互いの主張がぶつかり、妥協出来なければ争いは起こるのじゃ」
「ではそうならない様に二階堂はこれからも努力いたしましょう」
「頼んだぞ盛義」
俺も今年で70歳となった。
身体も以前より衰えているが、調子は悪くない。
もしも秀吉殿が小田原に来るならば盛義と共に謁見し、所領安堵のため陸奥の諸大名らと直接臣従を誓うつもりだ。
これが二階堂の為の最後の奉公になるかも知れんな。
読んで頂きありがとうございます。
(注)この物語はパラレルワールドでありフィクションです。
史実や現実と大きく異なる設定がありますのでご了承ください。
久しぶりの投稿継続だったのになぜかジャンル別日間ランキングで上位に・・・。
読者の方々には感謝しかございませんm(_ _)m