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85 説得

楽しんで頂ければ幸いです。

1582年10月 二階堂氏 ~須賀川城~



「遠藤殿、猪苗代殿、遠い所を来て頂きすまなかったのう」

俺は盛義と共に伊達家臣の遠藤殿と蘆名家臣の猪苗代殿を迎えて談合の機会を持った。

「とんでもございません輝行様。此度は越後に係る話と輝宗様より伺っておりますが、どの様な事でございましょうか?」

「お二人は織田信長殿が明智光秀に討たれ、その明智を羽柴秀吉殿が打ち破った事はご存知でしょうな」

「無論でございます。あの織田殿が配下の明智に討たれるとは考えても見ませんでした」


「我らとしてもこの事態を重く受け止め、自らが京に赴き状況を確認してまいった次第じゃ」

「それでは輝行様から見て、織田はどの様な状況でしたのでしょう?」

「うむ、織田家臣は大きく羽柴殿と柴田殿に分かれている状況じゃ。信長殿の後継には羽柴殿が押す三法師様が就き、後見人を織田信孝殿が務める事となった」

「状況としては羽柴殿が有利と言う事でございましょうか?」

勝家と親交のある遠藤殿が渋い顔でつぶやく。


「そう見て間違いは無いであろうな」

「それでは輝行様は羽柴殿に付いた方が良いとお考えなのですな?」

勝家と共闘している滝川一益は、甲斐から軍を京へ戻す際に北条と激しく戦っている。

北条に近い蘆名とすれば羽柴方に付く方が都合がいいだろう。

「その通りじゃ。既に京で羽柴殿本人と会い繋ぎを付けておる」

「それは素早い働き、さすが輝行様!」


猪苗代殿が満足げな顔を浮かべるのと反対に、遠藤殿が苦しげな表情を浮かべている。

これは既に柴田からの弾劾状が届いていると言う事か?

「遠藤殿、浮かぬ顔をしておりますが、もしや柴田殿より既に書状が届いているのですかな?」

はっとした顔で遠藤殿が答える。

「分かり申したか・・・。お察しの通り、伊達には柴田殿より羽柴殿を弾劾する書状が届いておりまする。羽柴殿が勝手に織田家臣の領主や他の大名と誼を結すび、信孝殿らを蔑ろにしているとの書状でございました」

「自らの正当性を強調して協力を求めている様ですな」

「はい、柴田殿の主張は間違っていない様に私には思えます。ですから正直に申しまして輝行様のお考えには納得が行きませぬ」


そうだろうなぁ、これまでの付き合いもあるし、見た目だけなら勝家らが正しいのではとも思える。

しかし、世の中は正しい者が勝つのではなく、勝った者が正しいと言う中で歴史が創られているのだ。

「ですが遠藤殿、多くの大名は柴田殿らにはなびきますまい。羽柴殿は既に畿内の主な大名と結んでおる様じゃ。今年の冬の間、越前の柴田殿は雪で動けないであろう。ワシの考えでは、その隙をついて羽柴殿が畿内の支配を確立してしまう可能性が高いと思うておる」

「そこまで行ってしまえば柴田殿に逆転の目はほぼ無い。だから羽柴殿に付く方が良いと」


「そうなのじゃ猪苗代殿。お家の事を第一に考えるのなら羽柴殿に付くべきじゃ。それに味方に付くなら早いほうが価値が高い」

「それではその見返りとして羽柴殿から何を願われたのですかな?」

「羽柴殿は柴田殿との決戦を見越して戦力の一部を越中に残させるため景勝殿を利用したいと考えておるのだ。これに背けば後々まずいことになる」

数年後に西日本の制圧が終われば、その軍勢は東日本へ向けられる。

その時に親秀吉派でなければ取り潰しや改易となる可能性が高いのだ。


「つまり、輝行様は柴田殿を見捨てて、景勝殿に対抗している影虎殿を抑えたいと言う事ですな?」

「うむ、春になれば柴田殿は羽柴殿と戦うために上洛の軍を起こすであろう。その時に景勝殿の背後で影虎殿が動くのはまずいのじゃ。遠藤殿には不本意だろうが、伊達のために堪えて欲しい」

「・・・分かり申した。この事については戻り次第輝宗様へお伝えいたします。結果は書状にて」

「こちらも早速黒川城へ向かいまする。越後の根回しも簡単ではありませんからな」


今の奥羽の平穏を可能な限り長く保ちたいと思っているが、今後一番の騒乱の元となりそうな伊達政宗さえ押さえ込めれば秀吉の天下でも無事にやっていけるはずだ。

上杉景勝より早く秀吉の味方に付いているうえ、越後の周辺状況を考えれば景勝の持つ領地も将来大きく増えることは考えにくい。

この均衡を保ったまま秀吉に仕えるのが安全な道であり、ここから一発逆転の発想は毛頭ない。

もちろん均衡が破れた時の事も考えて準備は必要だが・・・。

読んで頂きありがとうございます。

(注)この物語はパラレルワールドでありフィクションです。

   史実や現実と大きく異なる設定がありますのでご了承ください。

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