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83 接近

読んで頂きありがとうございます。

再開しました。

1582年7月 二階堂氏 ~京:某所~ 



俺は光秀殿を討った秀吉殿が今後の天下を差配すると判断し、衰えた身体に鞭打って須賀川から京へ向かった。

「おお、輝行殿!よう参られた。さ、さ、こちらにお座りくだされ」

「忝い。もういい歳なもので長旅が体に堪え申した」

さすがは人たらしで有名な秀吉だ、位が下の者にも気配りを忘れない。

織田家臣の筆頭となっても腰が低いのはこれからの事を考えての対応だろうが、分かっていても気分が良くなるものだ。


「輝行殿、先日は援助していただき忝い。おかげて信長様の敵を討つことが出来申した」

「いえいえ、我らの援助が無くとも秀吉殿とその家臣であれば恙無く戦の準備を整えた事でしょうからさほどの事ではございません」

「それでも助かったのは確かなことじゃ。特に裏方はあの物資を譲って貰えたおかげで大分助けられた。のう佐吉?」

「はい、二階堂様のおかげで軍の補給が大変楽になりました。あれがなければどれほど苦労していたことか・・・。ありがとうございました」

同席していた石田三成がため息交じりで感謝の言葉を延べた。


あの状況では幾日も徹夜で戦の準備を整えたのだろうからその苦労は察せられる。

『本能寺の変』から『中国大返し』を経て『山崎の戦い』まで僅か10日程だったからな。

「石田殿は裏方ばかりでなく一番槍の功名もあげたと伺っております。今後も秀吉殿を支える大きな柱の一人となりましょう」

「ほほう、輝行殿にそこまで見込まれるとは、佐吉もこれからどこまで伸びるか楽しみじゃのう?小一郎もそう思うじゃろう?」

「はい。佐吉は戦働きも良いですが、私としては政務が良く出来る家臣が少ないですからそちらを中心にやって欲しいと思っております」


「そうじゃのう、うちの者共は戦が得意な者は多いが、まだまだ政務に長けた者は少ないからのう」

「秀吉殿、それでしたらぜひ二階堂の者をご家臣の下で使ってはいただけませんでしょうか?正直に申せば足利殿が京を離れる際にこちらに残った二階堂の官僚が多くおります。多くは望みませんので働かせていただければ少しは皆様のご苦労を負担できると存じます」

「それは一考に価する申し出ですな。この場で返事は出来ませんが、周りの者と良く談合する事としましょうぞ」

「ありがとうございます。秀吉殿の元であれば二階堂の者も力を発揮出来ると存じますので、何卒よろしくお願い申し上げます」

「信長様の評価が高かった輝行殿にそこまで言われてはこそばゆい気持ちじゃ。しかし、輝行殿。政務を司る者であるならば勝家殿に売りつけた方が良かったのではないか?」


ここで秀吉殿が探りを入れてきた。ここは正直に存念を知らせた方が今後のためだな。

「率直に申せば勝家殿の方が政務の出来る家臣は少ないでしょうから重用されるやも知れません。しかし、勝家殿が正しく政務に励む家臣を評価出来るとは思えませぬ。後々は使い潰されるのが関の山でございましょう」

「それでも伊達殿や蘆名殿の伝もあるのだから粗略には扱われ無いのではないかのう?」

「これも先を見据えての事。今後の織田家臣は秀吉殿と勝家殿とに大きく分かれるでしょう。戦では互角かも知れませんが、これからの世を太平に導ける方は秀吉殿のみでございましょう。私は博打は苦手でして。より勝てる方に賭けたいのでございますよ」


「なんと正直な方よ!・・・そこまでこの秀吉を買って下さるのなら輝行殿、越後の事はお任せしても構いませぬな?」

「はい、伊達と蘆名の事はお任せください。決して秀吉殿に敵対する事の無い様説得いたします」

「よろしくお願いいたしますぞ」

勝家殿を牽制するために秀吉殿は上杉景勝を使うつもりだ。

景勝がこれまで敵対して来た勝家と争う姿勢を見せれば、そちらにある程度の戦力を残す必要がある。

史実でも有力武将佐々成政の軍勢が景勝と対峙していたはずだ。


ただし、景勝には現在、影虎という敵対者が北越後に居るため南に戦力を集中出来ない事情がある。

これを解決するためには、影虎を援助する伊達や蘆名などを二階堂が不戦へと方向転換させる必要があるのだ。

越後における今までの方針を覆すようで少し気が重い話だがやるしかないだろう。

織田を尊重する勝家殿では天下が安定する先は見えない。

支える家臣も足りないし、残った織田の者が治めたのでは混乱が長引くばかりだ。

天下を差配するに足りる能力を持つ秀吉殿に任せるのが無難だろう。


こうして二階堂は東国の大名でもいち早く秀吉殿に恭順の意思を示し認められた。

景勝より先に秀吉殿に認めてもらえたのはかなり大きい。

近い将来にあるだろう『奥州仕置』で不利にならないように今から立ち回らなければならないからだ。

秀吉殿の下を辞した俺は二階堂のために更に出来る事を思い浮かべながら帰途についていた。

楽しんで頂ければ幸いです。

(注)この物語はパラレルワールドでありフィクションです。

   史実や現実と大きく異なる設定がありますのでご了承ください。

何度か書き直していたら物語が進まなくなりました。

自分の中で少し整理がついたので今度は進むかと・・・。

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