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78 景虎脱出

楽しんで頂ければ幸いです。

1578年5月末 上杉景虎 ~上杉館~



我等の春日山城攻略が失敗した。

景勝は謙信様の死後、即座に春日山城の本丸を占拠して上杉の家督相続を主張した。

謙信様から正式な相続の指名が無かったため、俺と景勝はどちらが家督を継げるのかこれまで分からなかったと言うのが実情だ。

はっきりと家督が決まっていればこんな争いも無かったのだが、尊敬する謙信様とて思い至らない点はあったと言う事だろう。


北条に生まれた俺が上杉の家督を争うとは、幼い頃なら考えても見なかった事だ。

俺は北条が上杉と同盟を結んだ際の人質として上杉に送られた。

本来であれば氏政の子が人質として向かうはずであったが、これを惜しんだためにその代役として俺が選ばれたのだった。

数か月前に幻庵殿の養子となり、その娘を嫁に迎えたばかりだっただけに理不尽な仕打ちと思った。

しかし、父氏康から北条の民のためと言われ、断腸の思いで上杉へ向かったのだ。


俺は謙信様の姪と祝言を挙げて正式に養子となり『景虎』の名を与えられた。

だが運命と言うのは皮肉なもので、翌年に父が亡くなり兄氏政が北条の家督を相続すると北条は武田との同盟を締結し、上杉との同盟を討ち捨てた。

これを驚きのうちに聞いた俺は、北条に俺が戻る居場所は無いと思い至った。兄は俺を捨てたのだ。

俺はこの後、本格的に謙信様の後継者として上杉内での地位を確立するために動く事とした。


対抗馬の景勝は上田の長尾から出ているため、謙信様の後ろ盾となっている古志の長尾とは対立関係にあったことからこれを利用して勢力を広げた。

春日山城周辺の国人を多く味方に付けた景勝と越後北部の国人を味方につけた俺は家督相続争いで拮抗した勢力となっていった。

謙信様も北条や武田などとの戦が続く中で、両勢力の争いを避けるために家督をどちらに譲るのか決めかねていたのかもしれない。


俺は景勝の籠る春日山城を攻め落とすために北条から兵の支援を受けようと北条きたじょう殿に三国峠を守る城を攻めて貰っていた。

しかし、春先は北条が佐竹と戦っているため援軍を出せない状況の様だった。

その代替策として北条は同盟を結んでいる武田へ上杉を攻めるように依頼したらしいが皮肉な話だ。

この際はどんなものでも利用する覚悟だから気にすまいと思った。


武田は二万の兵を出しており、既に信越国境付近まで来ているとの知らせもある。

これだけの兵があれば春日山城の景勝方を討てるかもしれない。

俺は上杉の家督を必ず手に入れるのだ。



1578年6月 上杉景虎 ~上杉館~




蘆名盛興殿から使者が訪れた。俺の身を上杉館から移して欲しいとの依頼だった。

これは優勢であった対景勝方との情勢が変わったからだ。

こちらの味方をすると思われていた武田の兵は春日山城を遠巻きにして布陣するばかりで城を攻めなかった。

再三合力して城を攻めるよう使者を出したがいい返事は貰えなかった。


そんな中で景勝は上杉領の一部を譲り渡して近日中に武田と和平を結ぶと言うのだ。

そうなると春日山城の周辺勢力では景勝方に負けているため我らの危険が増すのは確実だ。

このため一時的にここを離れる必要があるのだが、本来であれば北条殿の柏崎を経由して上杉景信殿の元まで移る計画を提案したかったのだが、北条殿が三国峠へ向かっているため難しい。

そこで一気に上杉景信殿の所を目指す事にした。


景信殿も景勝方の国人に攻められていたが、盛興殿や揚北衆の支援を受けて撃退しており周辺の状況も安定しているとの事だ。

引くのは悔しいが、景勝は上杉領を譲り渡しても俺を始末する気らしいな。

こうしてはおられん。景勝方が動けず、俺に兵があるうちに動かなくてはなるまい。

「兵を纏めよ!上杉景信殿の栖吉城へ向かうぞ!」


読んで頂きありがとうございます。

(注)この物語はパラレルワールドでありフィクションです。

   史実や現実と異なる設定ですのでご注意ください。

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