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72 天然痘

楽しんで頂ければ幸いです。

1573年 二階堂氏 ~須賀川城~



先日、蘆名盛氏殿が会津へ招致した天台宗の僧「随風」殿に会った。

後に「天海」と呼ばれるであろう人物だ。

以前から盛氏殿が招致を願っていたが、信玄殿が帰依するなど武田で厚遇されたていたため叶わなかった。

このため盛氏殿は随風殿の親族を出世させるなどして環境を整え、父母や親族の冥福を弔い宗族である蘆名を守護するために故郷に戻るよう家老の一人を派遣して願ったそうだ。


そこで武田が強く引き留めれば招致も叶わなかったかもしれないが、深く帰依していた信玄殿からもその様な話は無かったらしい。

おそらく三方ヶ原の戦い以降は表に現れないところを見ると、史実のとおり死亡しているか、重病なのであろう。

そんな事もあって蘆名が随風殿の招致に成功したため、フットワークが軽くなった俺は会津まで随風殿に会いにいったのだ。


正直に言って講話は半分ぐらいしか理解出来なかったが、雑談などで感じたのは見識が広く誠実な人物だと言う事だ。

随風殿は蘆名の一族だから、姻族となった二階堂も遠い親族の様なものだ。

将来徳川と深く係わる人物と知遇を得て置く事はとても大切なので、二階堂も随風殿の寺には積極的に寄進したいと思っている。

明智殿とも知遇があるらしいので、そちらの伝手も探りたい。

織田の出世頭である明智と羽柴は、今後どんな展開になっても押さえておきたいところだ。


この他にもいい知らせがあった。「種痘」が大きな成果を見せたのだ。

種痘とは「天然痘」の予防接種の事だ。

この研究はかなり前から進めており、種痘の元となる牛が感染する牛痘を領内で飼育する牛から得て試験していた。

これは人体実験に近い事もあり、当初は罪人へ種痘を行うなどもしていた。


牛を飼う人々に天然痘が少ない事は統計的な疫学調査からも確認されたので成功する可能は高かった。

現在、南陸奥の流通の拠点となっている須賀川の街は多くの人が出入りしており、感染症が出た場合被害が多くくなると考えている。

このため関所では、高熱が出ているなど体調の悪い者は一時留め置くなどの簡易的な検疫機能を持たせている。

そこで関所の者達に種痘を行って、更なる試験・調査を行っていたのだ。


結果、天然痘の疑いがある商人に接触した者で種痘をした者には発症しても重病者が発生せず、していなかった同行者の商人で発症した者は高熱で重体となり命を落とした者も出たのだ。

これで種痘の有効性が確認されたため、領内での予防接種を本格化させる事が出来る。

俺もまだ死にたくないので予防接種を受けるつもりだ。


身体が弱った者が予防接種を受けると、発症して重篤化するおそれがあるため、受けられるのは健康な者だけだ。

基本的には健康体ならば子供でも予防接種を受ける事に問題は無いはずだ。

これが確認出来ればすぐに伊達へ書簡を送って予防接種の有効性を伝えるつもりだ。

「梵天丸」即ち「政宗」を天然痘から救うのだ。


伊達輝宗殿と最上義守殿の娘義姫様の間に生まれた嫡男の梵天丸は数え7歳となる。

二階堂からは輝宗殿を通して梵天丸へ様々な贈り物をしており、二階堂の印象はいいと聞いている。

さらにこの種痘を伝えて伊達における二階堂の地位を上げたい。

伊達政宗による須賀川城攻略と言う史実のルートを潰したいのだ。


もちろん簡単にこの種痘が受け入れられる訳は無いだろう。

だから二階堂の重要人物である俺が率先して受けて安全である事を証明しなければならない。

これは子供や孫達も同様だ。

天然痘に絶対感染しないと言う事は困難だからだ。


片目とは言え幼くして失明するなんてかなりショックなはずだ。

そんな未来を回避して梵天丸君には健やかに成長してもらいたい。

そして蘆名や二階堂とともに奥州の平和を維持してもらうのだ。


読んで頂きありがとうございます。

今年一年お世話になりました。

お休みもありましたが、来年もよろしくお願いします。


(注)この物語はパラレルワールドでありフィクションです。史実じゃなくて設定です。

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