70 家督相続
楽しんで頂ければ幸いです。
1572年 二階堂氏 ~須賀川城~
「盛義様、家督相続誠におめでとうございます」
「「「おめでとうございます!!」」」
まず、一門筆頭の保土原有行が祝いの言葉を述べると、須賀川城の広間に並んだたくさんの家臣からも祝福の声が一斉に上がった。
盛義が二階堂の当主となった瞬間だ。
盛義はこれまで戦や外交の経験を積み、上洛して将軍に謁見する事も叶った。
蘆名や伊達の現当主とも交友を結んでおり同盟関係にも支障がない。
俺と違って幼い頃から英才教育を受けているから優秀なのだ。
ただし、俺の場合実績だけは十分すぎる程あるので皆からは尊敬されているらしい。
「盛義、これでお前も二階堂の当主だ。領内をよく治めるのだぞ」
「はい父上、保土原や須田ら家老の力を借り、豊かになった二階堂領を更に発展させてまいります。ですから、父上に置かれましてはこれまで同様ご支援いただきます様お願いいたします」
「そうですぞ輝行様、開発中の案件がまだまだございますからな」
「軍備も変えていくと伺っております。輝行様にはご指導いただくことが多いかと」
家老の保土原有行や笹川城城主の須田頼隆からも盛義に援護射撃が入る。
「これでゆっくりできると思ったのだがなぁ。少しは口を出させてもらうが主となるのは盛義よ、皆頼んだぞ」
「「「ははっ!!」」」
これで二階堂は徐々に盛義が中心となって動いていく。
俺はジョーカーとして自由に動ければいいのだ。史実ならばとうに死んでいる人間だからな。
こうして無事に二階堂の家督相続は済み、周辺の大名などから祝いの使者や品が届いていたところに関東から連絡が入った。
武田信玄が遠江・三河へ侵攻したとの知らせだった。
これは義昭様が御内書で織田討伐の命令を武田や上杉などの大名に下したからだ。
ただし、信玄などはこれを口実に上洛して武田の天下とする事まで考えているかもしれない。
もちろん俺のところにも義昭様からの御内書が届いた。
幕府の忠臣と思われているから当然の事だろう。
ただし、返答したのは「残念ながら遠方のためお力にはなれません」との内容だった。
距離的な問題はもちろんだが、今後この世界で信長殿が天下を統一出来なかったとしても力の無い足利幕府が存続するとは思えない。
よって幕府とは一定の距離を置く必要があるのだ。
俺としては史実どおりに信玄殿が病に倒れて、家康殿がしぶとく生き残ってもらう事を望んでいる。
現状では信長包囲網が機能しているが、武田の侵攻が止まれば史実の流れは続くだろう。
陸奥の体制強化を進めるためにも中央は史実どうりにいって欲しいのだ。
そして、その陸奥の脅威となる存在が動き始めた。
佐竹義重の北進が開始されたのだ。
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