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68 鉄砲

楽しんで頂ければ幸いです。


1570年夏 二階堂氏 ~須賀川城~



陸奥の地へ織田が近江の姉川で浅井・朝倉を破ったとの知らせが入った。世に言う『姉川の戦い』だ。


まず織田勢は四月に上洛命令を無視し続ける朝倉義景殿を討伐するために軍を起こしていた。

その勢いは圧倒的で徳川勢と共に朝倉の諸城を次々と落としていったが、金ヶ崎で浅井が裏切るとの知らせが入り混乱に落ちいる。

ここで池田・明智・木下らが殿となって敵の追撃を決死の覚悟で防ぐ事により信長殿は撤退する事に成功した。

京に信長殿が辿り着いた時の供は十名前後だったらしいから、どれ程に際どい撤退戦だったかが伺えるだろう。

こうして『金ヶ崎の戦い』は織田・徳川の敗戦で一旦幕を閉じる。


しかし、信長殿がこのまま黙っているはずもなく、六月再び軍を起こして浅井・朝倉の軍と対峙、近江にある姉川の河原で戦ったのだ。

この戦いはかなりの激戦となったが、徳川勢の働きもあり浅井・朝倉の兵を数多く討ち取り敗走させる事に成功した。

ここでは徳川家臣の本多忠勝の単騎掛けや榊原康政もよる朝倉への側面攻撃が有名だが、忠勝が行った単騎での

突入は無謀にも見える。

もしもこれが織田への突入であったら鉄砲一斉の射撃でハチの巣になっていたのではないかと思わざるを得ない。


もちろん忠勝は戦の機微が分かる武将であるため、相手が鉄砲をあまり用いない朝倉だからこそ、あえて単騎で攻め入り豪傑で名を知られた敵将の真柄を討ち取ったのだと思う。

そうでなければその後の数々の戦を生き残って武功を立てる事は難しかったはずだ。

うちには居ないタイプの武将だが二階堂は集団となった兵の練度の高さで他の軍を上回る事を指針としているため問題ないだろう。



「輝行様、影から例の職人を引き抜く事が叶ったとの連絡が入りました」

「よし、これで鉄砲の製造も最終段階だな」

俺は領内の山間部で以前より多様な品を開発させてきたが、その一つに鉄砲があった。

ただし、貴重品となる鉄砲を開発する以前に入手するまでが苦労したのだ。


鉄砲の生産地は近くても畿内であり、陸奥までこれを売りに来る商人などはいなかった。

このため畿内まで出向いて購入する必要があるが、もちろん簡単には売って貰えなかったのだ。

普段から二階堂ゆかりの商人を堺に向かわせて交易し、少しづつ信用を得て行った。

そして俺達が上洛したタイミングで直接交渉して、やっと5挺の鉄砲を購入する事が出来た。


それが堺で信長殿と対面した時だからかなりの月日が経つものだ。

俺は堺製の鉄砲を分解させ、領内の選ばれた鍛冶職人にその複製を作るよう指示した。

しかし、技術の差もあり複製は簡単には行かず、本物とそん色ない鉄砲を製造するまでに数年の月日を要したのだ。


俺も現代では子供の頃にモデルガンやおもちゃの空気銃を持っていたので銃の構造はある程度知っていた。

ただし、だからと言って自分で銃を作るとは考えていなかったから製造のために知識など持っていなかった。

その時は、技術チートが出来るのは特定の人材だけだと改めて思った。

だからこそ、月日を経て苦労の甲斐あって鉄砲の複製が出来た時には感動したものだ。


そして、鉄砲開発の最終段階として量産化を目指し、そのための人材を堺から引き抜く事を考えたのだった。

「行藤、して招致する職人はどの様な者だ?」

「はっ、遠く陸奥まで来る者ですから訳ありでございます」

程原行有の嫡子で盛義の側近でもある行藤が報告する。


俺が欲しかったのはただの鉄砲職人では無く、量産化を指導管理出来る人材だった。

本来ならばその様な優秀な人材が堺を離れて陸奥まで来る事は無い。

そのために徹底的な情報収集を行い、陸奥まで来てくれる訳ありの人材をスカウトする事にしたのだ。


今回スカウト出来たのは駆け落ちした鉄砲職人だった。

優秀な鉄砲職人である善次郎は、幼い頃からある親方に師事して若いながらも鉄砲製造の工程の管理を任されるまでになった。

そこで善次郎は幼なじみの親方の娘と恋仲になったものの、娘には親方の決めた後継者との婚姻が決まっていたのだ。

このため愛し合う二人は思い詰めて駆け落ちを計画したが、堺はもちろん畿内を出る事も簡単では無く途方に暮れる事となる。


そこで、この情報を偶然入手した影の者は二人の駆け落ちを手助ける条件で陸奥への移住を提案し、了承させる事に成功したのだ。

影の者によれば、二人への追っ手を避けるために駆け落ちした後に心中した様に異装したらしい。

海辺の岸壁に遺書と草鞋でも置いておくのだろうか?

こうして鉄砲開発の人材を手に入れる事に成功した俺は、数年後に行われるであろう長篠の戦を夢想したのだった。


読んで頂きありがとうございます。

公私共に色々あって更新がままなりません。

もう少しで落ち着くと思いますので読者の皆様におかれましてはご了承ください。


(注)この物語はパラレルワールドでありフィクションです。史実じゃなくて設定ですよ。

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