65 本圀寺の変1
楽しんで頂ければ幸いです。
投下ミスで日曜日の分です。
1569年正月 二階堂氏 ~京・青蓮院~
俺達二階堂の者は京に滞在する間の宿舎を東山の天台宗青蓮院に置いていた。
これは領内にある天台宗千用寺の伝手で用意して貰ったものだが、二階堂の菩提寺である長禄寺は曹洞宗である事から京に伝手が無かったためもある。
そこへ堺から火急の使者が俺の元を訪れた。
堺浦に襲来した三好勢が京を目指したとの知らせだった。
「父上、三好が京を目指していると言う事ですが、信長様が岐阜へお戻りになった隙を狙っていたと言う事でしょうか」
「恐らくそうであろう。未だ信長殿は畿内を制圧したとは言えん。義昭様を押さえるつもりか・・・」
織田勢が現在京へ置いている兵力はそれ程多くない。
今なら将軍を押さえて織田へ追討令を出せるとでも考えたのだろうか。
「二階堂は親織田と思われている。このまま見過ごしてもこちらに兵を向けられる可能性があるだろう。ここは義昭様の元へ向かい織田と合力する」
「はい、至急兵を纏めて出立の準備を行います」
「頼んだぞ」
こうして俺達は兵を率いて義昭様のいる本圀寺へ向かう事となった。
1569年正月 二階堂氏 ~京・本圀寺~
「二階堂様、ご助力頂きありがとうございます」
「義昭様の為に馳せ参じたまでの事だ。明智殿が気にする必要は無い。我が一族もいるのだから駆けつけるのは当たり前の事よ」
そうなのだ、二階堂一族は幕府に官僚として仕えているため本圀寺へ詰めている者もいるのだ。
遠縁とは言え身内を見捨てる選択肢は無かった。
「二階堂殿が来てくれるとは心強い。武勇の程は聞いておりますぞ」
「細川殿、恐らく身内の話ゆえ事が大きくなっておりましょう。ですが力の限り義昭様をお守りいたします」
「うむ、織田が既に池田殿や荒木殿ら摂津の者達へ援軍を求める使いを放っておる。それまで耐えればこちらの勝利は間違いない」
細川藤孝殿はこう言ったが、寡兵で三好や斎藤などから本圀寺にいる義昭様を守るのは容易ではない。
「父上、影の者からの報告では京に入る三好勢は時と共に増えており、一両日中にも本圀寺へ向かうとの事です」
これまで俺は自分は元より家臣の命も大切にして来たつもりだ。
しかし、この戦ではその考えを改めなければならないと思っている。
それは、この戦での評価が今後の二階堂に対する畿内での評価となっていくからだ。
ここで二階堂の精強さを強く印象付ける事には大きな意味がある。
だから俺は兵達を前に直接言葉を発する事にした。
「よいか皆の者。ここに三好ら奸賊が将軍である義昭様を狙って来る。その数はこの本圀寺にいる兵を上回るであろう。しかし、我等は幕府の臣として義昭様を必ず守り通さねばならん」
二階堂は幕府に係わりが深いため、兵達はこの様な非常時にも将軍を守ると言う事に大きな意義を感じてくれている様に見える。
「だからこそ無理を言う。もしもお主達に何かあった場合は儂が全て良きに計らおう。坂東の者達の言葉にこんなものがある。命を惜しむな、名を惜しめ!」
「「「おおおおっ!!」」」
大きな声が轟き兵達の士気が異常に上がっているのが分かる。
士気の向上には少し早いかとも思ったが、戦の直前にやると突貫しそうな気がするので余裕がある今の時期でよい。
何も無駄死にして欲しい訳では無いから、うちの兵達なら時間を置いて少し冷静になれば押し引きの判断が出来るはずだ。
こうして俺達は三好勢から本圀寺で義昭様を守る戦へと突入していった。
読んで頂きありがとうございます。
(注)この物語はパラレルワールドでありフィクションです。史実じゃなくて設定です。