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64 離反

楽しんで頂ければ幸いです。


1話当たりは短いですが、トータルで10万字を越えたようです。

積み重ねは大事ですね。

1568年秋 二階堂氏 ~堺~



本能寺での信長殿との会談を終えた俺達は情報収集も兼ねて堺を訪れていた。

そしてそこへ領国からの知らせが盛義(行盛)に入り、俺に伝えられることになった。

「父上、揚北衆の離反が成ったとの知らせです」

「そうか、蘆名と伊達の援護で成し遂げる事が出来たか」

「はい、誠に喜ばしい事です」


上杉からの揚北衆離反は俺と蘆名盛氏殿が数年前から工作していた策略だ。

何度も越後に侵攻し、本庄や新発田などの揚北衆に撃退される事をここ数年繰り返してきた。

揚北衆の国人は優秀な武将が多く、武田や北条などとの戦でも活躍している。

しかし、上杉輝虎殿は身辺の家臣へは恩賞を与えたものの、揚北衆へは満足出来る恩賞を与えなかった。


この不満が揚北衆が上杉から離反する大きな材料となるのだが、ここで問題となったのが新発田 長敦ながあつ殿だった。

長敦殿は上杉の侍大将となる程優れた武将でありながら、外交手腕にも優れており独立の気風がある揚北衆など越後の国人を纏めていた有能な人物だ。

しかし、思い返すと史実では輝虎殿が亡くなった後に景勝殿を後押しして国人領主を纏め、御館の乱を乗り切った功績があったにも関わらず恩賞が得られないまま不遇の生涯を終えていた。


だからこそ長敦殿には別の道を提示する事で、異なる人生を歩んで欲しかった。

蘆名から何度も新発田城周辺へ侵攻された長敦殿には、輝虎殿が家臣の負担も顧みずに関東や信濃で起こす戦により、さらに疲弊していく領民が見えていた。

なのに怪我をして戦えなくなった兵に補償出来る恩賞すらも輝虎殿からは与えられない。

既に多くの揚北衆からは不満の声が多く聞かれ、本庄殿などは今にも爆発寸前の状態となっていた。


外交にも明るく有能な武将である長敦殿には、上杉から離反すれば猛将である輝虎殿から攻められて戦に敗れる未来しか見えなかったからこそ揚北衆を自らが抑えたはずだ。

しかし、ここで揚北衆の離反に蘆名と伊達による大きな援助があるとなれば話は違ってくるのだ。

このまま上杉に使い潰されるならば、これを転機に揚北衆を独立させる事も可能かもしれない。

盛氏殿は長敦殿にこう思わせる事にとうとう成功したのだった。


「して、離反した揚北衆と輝虎殿の戦はどうなったのだ?」

「はい、まずは出羽の本庄殿と大宝寺殿が離反の狼煙を上げると、輝虎殿は越中から戻って鎮圧に乗り出しました」

「そうだろうな。そこで計画の通りに時間稼ぎは出来たのか?」

「はい、北上してきた輝虎殿の兵を村上の山岳地帯にいくつか築いた砦で進軍を遅らせ、昼夜を問わずに戦いを仕掛けて時と兵糧を費やさせたとの事です」


「そこで手はずの通りに新発田が寝返ると言う訳だな」

「はい、会津から越後を伺っていた蘆名を押さえていたはずの新発田勢が、南から蘆名と共に輝虎殿の後衛の兵を襲いました」

「さすがに輝虎殿も南北から挟まれれば肝を冷やしただろうな」

「恐らくその通りかと。輝虎殿は軍を率いて北から追撃を受けながら南に血路を開いて春日山城へと帰還したようです」


まあ軍神様はこんなところで倒れたりはしないだろうから、結果としては上手く行ったと言えるだろうな。

揚北衆が離反したことで上杉は兵力を2,3割減らした事になるはずだし、撤退戦でも大きな被害を出した事だろう。

ただし、一部の揚北衆は様子を見て城に籠った者もいるらしいため監視が必要だ。

これから冬に入れば雪で軍を動かす事は出来なくなるので、その間に揚北衆をこちらの陣営に引き込めるよう蘆名や伊達と話し合う必要があるな。


「揚北衆は度重なる戦で疲弊している。蘆名や伊達と共に米は無理でも蕎麦や芋などの食糧を安く援助するのだ」

「これでさらに恩義を感じてくれましょう。海と海を結ぶ街道による交易の活性化と言う父上の構想も現実のものとなりますね」

「ああ、さらに奥州、出羽を跨いで街道を整備して交易を広げたいものだ。儂の生きている間は無理だろうが、お前に引き継いでおくぞ」

「いえいえ、是非とも長生きして父上が成し遂げてください。私にはとてもとても」

「「ははははっ」」


その後も俺達は織田の上洛でくすぶりの残る畿内で活動を続けていた。

今回は危険度が高いため領地から百名程の精鋭を選んで警護などのために連れてきている。

まさかそれが大いに生きる事になるとは、細かな歴史を覚えていなかった俺は安堵と後悔を覚える事になる。


読んで頂きありがとうございます。


(注)この物語はパラレルワールドでありフィクションです。史実じゃなくて設定です。

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