表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/101

63 会談(本能寺)

楽しんで頂ければ幸いです。

1568年秋 二階堂氏 ~本能寺~



俺は織田より打診を受けていた信長殿との会談に臨むため本能寺を訪れた。

前回の上洛時にも場所は確認していたが、中に入るとその広大な敷地が良くわかる。

法華宗である本能寺は地方への布教にも積極的で、畿内を越えて遠くは種子島まで布教している。

そのため鉄砲や火薬との関連が深くなっており、信長殿が帰依している事もあって本能寺を織田が京の宿舎としているらしい。


何ともこの辺の宗教関係は血なまぐさいので深くは関わりたくないと思ってしまうが、京においてはそれだけでは済まないのだろう。

こうして本能寺の寺領へ足を踏み入れた俺は、織田の家臣に導かれ信長殿のいる宿坊の一つへと入って行った。

「輝行殿、その説は世話になり申した。さらに陸奥の産物まで頂きかたじけない」

「いやいや、心ばかりの品であり申した。信長殿、改めて上洛おめでとうございます」


信長殿は上洛を成功させ、義昭様の将軍宣下を成し遂げた為もあるのかリラックスしている様だ。

部屋には俺達二人と互いの近習が一人づついるだけであり、私的な空間となっている。

俺は信長殿へ上洛までに起こった戦の話などを質問し、これを褒め称えながら問題の無い範囲内で聞き出すことが出来た。

営業は話し上手ではなく、聞き上手でなくてはならないからな。


「さすれば信長殿、堺などの商人へ矢銭を要求されたと聞きましたが?」

「ええ、商人共は戦で物を売り買いして儲けを出しながら危険も無い。畿内を制圧するためにも少し力を貸して貰うつもりです」

「堺などは堀まで掘って織田の襲来に備えたそうですな」

「馬鹿な事をするものです。その程度で我が兵を抑える事などは出来ない事は確実。商人共の浅はかな考えですな」


その通りなのだ。少しぐらいの空堀などでは野党ならともかく、まともな兵の攻撃に耐えられる訳が無い。

「堺からは恭順の申し入れはあったのですか?信長殿は義昭様へは大津や堺などへ代官を置く事を願ったとか。町衆が簡単に従うとは思いませんが、どうするおつもりです」

「町衆の総意では無いでしょうが、今井などは誼を通じる様に動いておりますな。堺は潰すには惜しい存在ですから他を見せしめにしてもよい」

「怖いお方だ。しかし、畿内を制圧する上で商人を統制する事には賛成ですな。物の動きを掴んでおけば戦に有利となりますから」


「くくっ、輝行殿はお分かりと見えますな。銭だけではなく物を統制することで畿内を支配する。いくら寺社に銭があっても武器や食糧が無くては戦えますまい」

石山本願寺や法隆寺などにも資金の供出を要求しているが、従わなければ最終的には戦も辞さない考えなのだろう。

寺社は独自に座などの権益や流通を持っていて一部の利益を独占しているからな。

「貧しい信者から集めた銭で寺を造営し、飢饉で苦しむ民を助けもせずに高価な物を買い漁る者共をこのままにはしておけませんからな」

信長殿は宗教に全て敵対している訳では無い。民を救わない宗教は不要だと考えているに過ぎない。


「しかし、領内の寺社の統制は容易でも畿内などの権威ある寺社の統制は難しいでしょう」

「そうですな。それでも、民の事を考えれば必要だと考えております。あやつらのやり方は目に余る」

「信長殿は市井の者達と交流があると聞いております。ですから民の事を考えられるのでしょうな」

「そんな事までお知りか・・・。輝行殿も領内の民を幸せにするために日々努力して統治しているとか。それと同じ事です」


信長殿は後の世で根切りや焼き討ちなど敵対した者に対しては非道な戦を行った事で知られるが、領内においては平和的な統治をしている。

愁いを全て無くして自分が直接統治すれば民を導いて行けると考えているのかもしれない。

始めは幕府の一員としてそれが可能だと考えていたものが、実情を知りこれが難しいとなればどの様な道を選ぶだろう。

幕府や朝廷などの権威を利用するだけ利用し、織田が天下を統一する事を考えていったのだろうか。


「畿内の安寧を図るために動員した兵を維持するためには銭が必要。これに商人や寺社が貢献するのは当たり前の事だと思って貰わねばならぬ」

「某からも商人を通じて少しでも信長殿の真意を伝えましょう。戦などではなく、必要な人に必要な物を届ける事で利を生み出すのが商いですからな」

その後も俺達は意見を交わしてお互いの理解を深めて会談を終えた。

俺は今後も畿内が荒れる事は覚悟しているが、願わくば民の被害が少しでも減る事を祈るしか出来なかった。


読んで頂きありがとうございます。


(注)この物語はパラレルワールドでありフィクションです。史実じゃなくて設定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ