57 縁組(相関図あり)
楽しんで頂ければ幸いです。
1565年 二階堂氏 ~須賀川城~
蘆名盛氏殿から俺に書簡が送られて来た。二階堂との縁組についただ。
現在の当主である盛興殿は19歳でお年頃、そろそろ正室を迎えてもおかしくないのだ。
盛氏殿としては嫡男であり、唯一の直系男子である盛興殿の婚姻は重要事項だ。
それを二階堂から迎えたいと言っているのだから驚いた。
史実ならばうちより格上の伊達から姫を娶っているのだから、ここでもそうなるだろうと思っていた。
しかし、俺が奥州の領国関係を二階堂に有利にかき回したため状況が変わったらしい。
蘆名から攻められて危機に瀕しているはずの二階堂は同盟関係を結んで友好的になっている。
伊達も縁戚の二階堂を救援するために蘆名へ出兵しているはずだったが平和を保っているのだ。
盛興殿へ伊達晴宗の娘である彦姫が輿入れするのは、争っていた蘆名と伊達が和平を結んだタイミングだったのだが、すでに友好的な両者には無理をして婚姻を結ぶ必要がない状態だ。
それよりも同盟している二階堂との関係をより強固にしたい盛氏殿の意図が反映されているのだ。
伊達からは行盛に阿南姫が嫁いでいるので、これに対抗したいのかもしれない。
問題はこれを受けるかどうかなのだが、俺には娘が一人いる。
名はあい姫といい、歳は14とこの時代ならば結婚適齢期だ。
俺としては可愛い娘をもう少し手元に置いておきたい気持ちがあるが、結婚はタイミングも大切なのでこの良縁を逃すのもどうかと考えてしまう。
蘆名は盛氏殿の嫁がうちと同じ稙宗様の娘だから送り出すのも多少安心だし、行盛と盛興殿も親しい間柄だ。
ここはうちの嫁さんにも聞いてみるか。
「蘆名より盛興殿の正室としてうちのあい姫を迎えたいとの知らせがあった。まつはどう思う」
「とても良いご縁かと存じます。蘆名は大きなところですし、比較的近い土地ですから安心して送り出せます。それで夫となる盛興殿はどの様な方なのですか?」
「ふむ、交流のある行盛に聞いても盛興殿は誠実な人物らしい。しいて言えば酒が少し過ぎるらしいが・・・」
「若くしてお酒で身体を壊す様な方が夫では困りますね。いっそ禁酒とまでは言いませんが、お酒を控える事でも婚姻の条件にすればいかがでしょうか?あい姫には幸せな結婚生活を送って欲しいですからね」
酒か・・・、史実で盛興殿が若くして亡くなった理由に酒毒があげられていた。
盛氏殿が領内に禁酒令を出したと言う記録があったらしいからどんだけ飲んだのだろうか。
蘆名が今後も二階堂の同盟者として安定してもらうためには盛興殿に早死にして貰っては困る。
うちの平四郎が人質として蘆名に存在しない現在の状況ならば、後継がいないため内部の混乱は必須だ。
もし盛興殿に伊達の姫が嫁した後で彼が早く亡くなったとして、その後に想定されるのは蘆名が伊達や一族筋から養子を取ることだ。
そこで伊達からこの時期に養子が入る事となれば、蘆名が近い将来に伊達の従属と化す可能性が高まり、奥州の伊達支配が早まる可能性があるため避けたい。
「まつの意見を取り入れて盛氏殿へ返答してみるか」
「それがよろしいと存じます」
俺は娘の幸せと奥州の安定化を考え、蘆名との関係を強化するため縁組を進める事にした。
その後は、日本各地に二階堂が放った者達から情報が届けられた。
まずは畿内から将軍足利義輝様が三好と松永らによって弑されたとの凶報だ。
昨年に三好長慶殿が無くなって予想されていた事だが、これで畿内が混乱する事は確実だろう。
中央の問題には手を出さないと決めている俺としては静観するしかない。
次に武田からは、あの勝頼殿へ織田の姫が嫁したという事だ。
信長殿が武田との関係改善を進めている様だ。
そこから推測されるのは織田による美濃への本格侵攻が迫っているという事か。
秀吉殿が歴史の表舞台に立つ日が近いな。
自然に秀吉殿とお近づきになる機会は無いだろうか?
最後に、佐竹からは義昭殿が亡くなったとの知らせが入った。
35歳と言う若さだが以前から長く不調を抱えているとの噂があった。
既に家督相続を済ませている義重殿は未だに若いが侮れる相手では無い。
むしろ勇猛さではこちらの方が危険だろう。
佐竹に対抗するためには北条との連携も考えているが、一番は蘆名との同盟関係の再確認が重要となる。
蘆名との関係強化はやはり避けられない問題だと改めて思う。
後は親として娘の幸せを願うばかりだ。
盛興殿には酒の飲み過ぎに十分注意するよう俺からも伝えないとならんな。
俺も史実の寿命を超えたし出来るだけ長生きするぞ!
読んで頂きありがとうございます。
(注)この物語はパラレルワールドでありフィクションです。史実じゃなくて設定ですよ。