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54 方針

楽しんで頂ければ幸いです。


1563年冬 二階堂氏 ~須賀川城~



二階堂と蘆名は、佐竹や上杉に対抗するため北条、武田と同盟を結んだ。

この同盟には嫡男の行盛と田村顕頼を名代として派遣したが、これは外交能力の向上と見聞を広める意味がある。

二人は亡くなった父晴行や稙宗様の薫陶を受けているため、その能力はかなり高いレベルにあるだろう。

しかし、上には上がいる事を知って成長して欲しいと感じていたのだ。


まず、北条で二階堂を越える統治体制を見て理解を深め、武田では日の本でも有数の武威を誇る者達を感じて欲しかった。

このため、北条に対しては親密さを増すために食料援助を行い、同盟も含めて二階堂の名を高める事とした。

しかし、武田に対しては織田政権となった時の事も考え、深く係わらないよう蘆名の有力一族である猪苗代殿を前面に出して外交を行ったのだ。

おかげで二階堂は蘆名に臣従していると言う誤った認識がされたと聞いたが、そんな事は些細な事だ。

佐竹との戦でそう見えたのかもしれんが、万が一敵対した事を考えれば侮って貰った方がやり易いから問題ない。


「行盛、顕頼殿、ご苦労であった」

「はっ、父上のお言いつけどおり無事同盟を結んで参りました」

「顕頼殿、此度は行盛を支えて貰い感謝する」

「とんでもございません。行盛様は輝行様の名代として立派に役目を果たされました。北条では氏康様からもお褒めの言葉を掛けられておいででした」


「ほう、氏康殿にな。これは嬉しい事だ。行盛、実際に氏康殿にお会いしてどう感じた?」

「父上に伺っていた以上に素晴らしい方でした。早雲様の事や領国統治の事についてお聞きしましたが、丁寧にお答え頂き参考となる事ばかりでございました」

いいなぁ、リアル氏康に会ってみたい。

それに小田原城を実際に見て縄張りなどを参考にしたい。

俺のまったりライフ達成のためにも須賀川城を総構えにしたいんだよなぁ。


「それはいい経験をしたな。氏康殿には今後も教えを請いたいものよ。して、武田はいかがであった?」

「尚武の国とでも申しましょうか、どの兵も精悍に感じられました。中でも武田信玄殿の迫力は格別で、その存在だけで場が支配されるような感覚でした」

「それも得難い体験よ。我らが武田と戦う事は無いが、それに匹敵する上杉とは戦う事があるかもしれんからな。もしも戦う場合はその強さを武田を目安として少しでも理解して欲しかったのだ」

「そう考えると上杉と戦うのは出来るだけ避けたいと思慮します。父上はどうお考えですか」


「行盛、此度はその事も含めて儂の存念を示す必要があると感じておる。よってこの場に有行にも来てもらったのだ」

「そういう事でしたか。それではぜひ我らにご教示ください」

三人が頭を下げてから俺に注目する。

リアルに優秀な者達を前にプレゼンするのは少し緊張するが、ここでは上司である俺の方針を理解して貰う事が重要だからな。


「結論から言えば、佐竹の陸奥進出を抑えると同時に上杉を牽制するが、上杉とは可能な限り戦いを避ける事としたい」

「父上、それには些か矛盾があるのでは?上杉と戦わずして牽制は望めないかと」

「うむ、だからこそ可能な限りだ。二階堂としては出来るだけ兵を出したくないと思うておる。まともに戦っても勝てる相手では無いからな」

「それではどの様にして同盟の約を履行するのですか?」


「身の程を心得て対応するだけだ。戦いは主に蘆名へ任せ、二階堂は支援に回る事とする。戦働きを望む者達には少々不満も出るであろうが、我が兵をいたずらに危険に晒したくは無いからな」

「武田を見ればこれを何度も退ける上杉の強さを想像できます。私も二階堂の兵を上杉に当てて損なう事は出来るだけ避けたいと思います」

行盛はある程度理解してくれた様だ。現代の日本と同じ様な立ち位置とも感じられるかもしれない。

しかし、俺の腹心の保土原行有から意見が出る。


「輝行様、しかしそれで蘆名が納得するでしょうか。やもすれば二階堂への不信感が起こるのでは?」

「そうだな。全く無いとは儂も考えておらん。よってこちらからは蘆名も出来るだけ戦わなくて済むように上杉へ仕掛ける」

「そうですか、輝行様は上杉への調略をお考えですな」

「その通りだ。蘆名と共に上杉の反体制勢力の武将を支援して反乱を起こさせる」


上杉は当主である謙信が越後守護代の長尾氏の出身であるが、一族の中でも対立があった。

更には国人衆も全てが謙信へ臣従している訳では無く、不満を持つ国人などが何度も反乱を起こしている。

「よって盛氏殿へもこの事を伝えて調略を進める必要がある。行有、会津へ行ってくれ」

「承りました」


聞くところによれば盛氏殿は家督を譲った後も精力的に動き、築城も進めているらしい。

精強な兵で知られる上杉と戦うにしても内乱で疲弊した状態を狙って戦い方がいいから盛氏殿からも良い返事がもらえるだろう。

さて、調略するとすれは誰だろう。長尾一族や本庄氏あたりが狙い目かなぁ・・・


読んで頂きありがとうございます。

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