52 談合
楽しんで頂ければ幸いです。
1562年秋 蘆名氏 ~長沼城~
此度は輝行殿の呼びかけにより長沼城へ足を延ばした。
これも昨年に家督を盛興に譲った事により、以前よりも儂が動きやすくなったために叶った事だ。
ただし、実権はまだまだ未熟な盛興に渡せる訳では無いので重要な案件は儂が判断する事にしている。
恐らく輝行殿との話も外交的に重要なものとなるであろうな。
「盛氏殿、此度は長沼までご足労頂き感謝申す」
「輝行殿、儂も家督を譲った身であるから、この様な行脚は以前から望んでおったのじゃ。お気になさるな」
領内では家督相続を反対する勢力も殆ど無く安定している。
一族の氏方殿がその兆しを見せたが、無益な行動を周りがいさめたと聞く。
猪苗代も輝行殿に諭されたからか反乱の兆しすら見せていない。
その代わりに盛興に一族の娘を娶らせようとする動きがあるが、これも輝行殿の入れ知恵であろうか。
「かたじけない。此度は盛氏殿、蘆名へ提案を持って参った」
「ほう・・・、その提案とは如何なる事ですかな?」
「今後の事を考え北条や武田と同盟を結ぶ事が出来ればと考えておる次第」
「北条と武田とは、これはまた遠方の領国ですな」
「然り然り、ただし盛氏殿にはこの両者と同盟を結ぶ意味を推測できるのではないですかな?」
「敵(佐竹、上杉)の敵(北条、武田)は味方と言う訳ですな」
「その通り。さすがは盛氏殿、話が早い」
「儂もその事を全く考えていない訳では無かったですからな。輝行殿はそれをこの時期にする理由があると考えている訳ですな」
「ええ、今この時期がよろしいかと。まず、北条ですが昨年は上杉勢に小田原まで攻め込まれ、領国もかなり疲弊しておりましょう。そこへ我らが援助すると同時に同盟を持ち掛ければ色よい返事が得られると考えておるところでしてな」
「ふむ、儂が北条だとしても受けるでしょうな。お互いに利のある話じゃ。それもどちらかと言えば北条の」
「そうですな、武蔵や上野の諸将は領内の略奪を恐れて寝返りを繰り返しておる。利害関係があるとは言え確実に味方に付く領主がいる事は魅力でしょうな。それが蘆名だとすればより重きを置かれる事は間違いない」
「とすると、武田も苦しい状況にあると言う事を輝行殿はご存知の様ですな?」
「武田も昨年に上杉と川中島で戦い、信玄殿の実弟信繁殿など有力な将を討ち取られ大きな痛手を被っていると聞いております。上杉を牽制出来る勢力があれば大いに助かると思う事でしょうな」
「こちらが上杉を攻めれば、上杉と結んで支配地を広げる佐竹を牽制する事が出来るのう」
「なれば両者とも同盟を受け入れる可能性は高いと見込んでおりますぞ」
「うむ、蘆名に異存はござらん。輝行殿、同盟の件は進めてくだされ」
「承った」
同盟は輝行殿へ任せれば上手く行くじゃろう。
こうなれば本格的に上杉へ侵攻する策を考えねばのう。
読んで頂きありがとうございます。
ぼたもちさんより地図の提供を頂きました。
「47佐竹北進01」に戦場の周辺地図を、「49生と死と」に周辺勢力図を掲載しております。
どうぞご覧ください。
なお、現在不定期投稿中です。
(注)この物語はパラレルワールドでありフィクションです。史実じゃなくて設定ですよ。