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46 上洛(信長編)

楽しんでいただければ幸いです。

信長視点です。

1559年冬 織田氏 ~京・斯波家仮御所~ 



「織田殿、こちらへどうぞ」

俺は尾張統一を果たし、家臣達を連れて義輝様へ謁見するため御所へ来た。

ここは元々斯波武衛家の邸宅だったと聞く。

斯波武衛家は俺が尾張から追放したので、おかしな巡り合わせというのはあるものだ。


廊下を進むと前から謁見を終えたと思われる者が歩いて来た。

とても静かなたたずまいから官僚の一人であろうと想像する。

目礼だけを交わしてすれ違った後で案内の者へ声を掛ける。

「あの方は近臣の方か?」

「いえ、陸奥国の二階堂殿でございます」


あれが二階堂殿か。

義輝様が将軍へ就任した折には遠方にも係わらず六角氏などと一緒に援助したと聞いている。

あの頃の織田は斎藤氏と和睦して俺が濃を娶ることとなり外に目を向ける余裕が無かった。

父信秀も知っていれば名を売る良い機会とばかりに援助しただろう。

幕府内にも一族が居ると聞くからその手の情報にも敏感なのも頷ける。



1559年冬 織田氏 ~堺~



今回の上洛は義輝様への謁見だけが目的ではない。

堺へ来ることも大きな理由の一つだ。

俺は国友村へ大量の鉄砲を発注しているが、これも火薬が無ければ打つことが出来ない。

その火薬も南蛮からの購入に大きく頼っているのが実情だ。


俺は熱田商人の伝手で堺の南蛮物を扱う商人と交渉し、何とか一定量の火薬を手に入れることが出来た。

尾張を統一したと言っても斎藤氏や今川氏などが領内を伺う状況は変わっていない。

その為に動員できる兵力以上の力を持ってこれを撥ね退けねばならぬのだ。

その力の一つが鉄砲と言う武器だ。


これがあれば普通の農民が長く武芸を極めた者でさえも倒すことが出来る。

この鉄砲で必ず戦のやり方が変わる時が来るはずだ。

まだこの意味が理解できない者も多くて困るが、時が経てば皆も理解する事だろう。

そんな事を考えていると前から見知った者が歩いて来たので声を掛ける。

とても領主とは思えない砕けた様子から慎重になったが。


「失礼だが、御所でお会いしませんでしたかな」

「これはご挨拶が遅れましたな。陸奥国から参った二階堂輝行でござる。織田信長殿とお見受けしたが」

「やはり二階堂殿でしたか。お噂はかねがね」

間違い無かった様だ。それにこちらの事も知っているとは御所で確認したのだろうか。


「ははは、二階堂の様な小領主をお知りとは珍しい方ですな」

「こちらには熱田からの知らせが良く入るのです。ですから岩城殿と組んで交易を行っている二階堂殿の事も耳に入っておりました」

「そうですか。今後は奥州の産物を各地で販売するつもりです。ぜひ交易が盛んな熱田にもご協力頂きたいですな」

「ははは、ぜひお願いした。一層熱田の港が賑わう事でしょう」

「そうなれば織田殿も潤いますかな?」

「「ははははっ」」


和やかな雰囲気で話が進んだ。

領地を治めるために商売がいかに大切かを知る領主が少ない中で、さすがに二階堂殿は一味違う様だ。

この様な御仁ならば俺の考えている領地経営の方法も理解してもらえるかもしれんな。

一度じっくりと時間を設けて話してみたいものだ。


すると別れ際に二階堂殿が俺に断って近づき耳元で囁いた。

「今川殿に不穏な動きがあります。ご用心を」

その瞬間、俺は一瞬だけ威圧感が辺りに放ってしまう。

しまった、すぐにそれを収めた俺は、「かたじけない」と二階堂殿へ伝えた。


「勝三郎、参るぞ」

俺はその場を離れると乳兄弟の勝三郎へ尋ねた。

「今の話、誠だと思うか」

「恐らく真実かと。陸奥国の二階堂殿が知る程ですから今川に大きな動きがある事は間違いございません」


斯波氏を追い出して今川氏の誘引を防いだばかりだと言うのに面倒な事だ。

「なぜ二階堂殿が織田を助ける様な事を言ったと思う?少し考えれば今川に付いた方が有利だと分かるはずだぞ?」

「私にも分かりません。聞くところによれば、二階堂殿は見た目と違い初陣で敵将を一騎打ちで討ち取り、僅か十日で三つの城を落とす程の武略を持つ方。何かを信長様に感じ取ったのではないでしょうか」

ふむ、こればかりは考えても分からんか。

それにしても、これ程の武勇を誇りながらあのような静かな佇まいを見せるとは、まだまだ俺も人を見る目が足りない様だ。


「勝三郎、戻って急ぎ支度を整えるぞ」

「はっ」

今回の上洛では面白い御仁に出会えた。

次に会う機会があれば礼を申すと共に、領国などの事も語り合いたいものだ。


読んでいただきありがとうございます。

噂と言うのは大きくなるもので照行が知ったら悶えそうな話になってます。

主人公のポーカーフェイスが機能したため信長の評価も過大に。

フラグが立っちゃったかもですね(^^;)


(注)この物語はパラレルワールドでありフィクションです。設定ですから~

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