44 行盛の婚姻
楽しんでいただければ幸いです。
1558年秋 二階堂氏 ~須賀川城~
二階堂行盛と伊達晴宗の長女阿南姫の婚姻が盛大に執り行われた。
奥羽でも有数の大名である伊達氏と領地が増えて経済発展も著しい二階堂が更に結びつきを強くする事は地域の安定に繋がることだ。
同盟関係を結ぶ蘆名氏を中心とした大名や領主からたくさんの書簡や祝いの品が使者と共に送られて来た。
そのあまりの量で小さな蔵が一ついっぱいになる程だ。
中には幕府関係からの書簡もあり、両氏の更なる発展を願うとの内容だった。
恐らく発展して幕府へ更に援助して欲しいと言う事なのだろう。
意外なところでは北条氏からも祝いの品と書簡が届いた。
交易で小田原へ船が立ち寄る為、以前から蘆名氏や伊達氏と共に書簡などを送り交友に努めていた。
二階堂のことは大名に張り付いている領主程度の認識だと思うが、伊達ブランドが生きたのかもしれない。
尊敬する氏康殿に倣い、領民の賦役を軽減する政策を進めているが、銭の量が少ないためデフレ気味だ。
とりあえずは領内で算出した粒金などを貨幣代わりにしているが、今後は交易品を畿内へ送って銭を仕入れて来る必要があるだろう。
会津ならば鉱物資源も豊富なので蘆名氏へ私鋳銭の製造をお願いすることも考えている。
蘆名氏は西の長尾氏や南の佐竹氏との戦も視野に入れているので資金はいくらあってもいいはずだ。
「照行様、阿南と申します。不束者ではございますが、どうぞよろしくお願いいたします」
「阿南姫、こちらこそ不肖の息子だがよろしく頼む」
行盛は15歳、阿南姫が18歳といい年頃の二人だ。
それに流石は久保姫の娘、二階堂領内にはなかなかいない美少女だぞ。
「照行、何を言っておるのじゃ。行盛が不肖なわけが無いであろう」
「そうじゃ照行殿、儂らの可愛い行盛を貶めるなど、言語道断じゃ」
いや行盛は俺の息子だからね?あんたらの息子じゃないよ、分かってんのかな。
「そこは言葉の綾と言うものですよ。行盛、お前からも何か言葉を掛けよ」
「阿南姫、あなたの様な美しく聡明な妻を得ることが出来て、私は日の本一の幸せ者だ。これから末永くよろしく頼みます」
「はい」
おお、阿南姫が行盛の言葉を聞いて、赤くなってポーっとしてる。早速デレたな。
爺どもがうんうん頷いているぞ?さては、あんたらの仕込みか!
全くどこまで行盛を育成すれば気が済むのだろうか・・・。
でもまあ俺よりも頼もしくなってくれそうだからいいか。
そう言えば岩城氏からの書状にいくつか面白い事が書いてあった。
まず、堺に南蛮船が入港したらしい。
九州には既に何度も現れて交易をしていたらしいが、とうとう畿内まで来たようだ。
商人としては大きな市場を目指すから当然の結果だろう。
そうなると歴史で習ったフランシスコ・ザビエルも来るのかな?
不謹慎かもしれないが本物に会いたいな。
二階堂領は基本的に法を守る限り、どんな宗教の布教も自由だから来てくれる可能性もある。
ただし、既にある寺社との付き合いもあるから簡単ではなさそうだけどね。
ヨーロッパでは絹織物が高額で取引されるから伊達氏と組めばいい商売が出来そうだ。
交易船の出資に伊達氏も誘ってみようかな。
経済でガッツリ繋がりが出来れば戦うことの不利益がより強調されて平和になる可能性が高くなる。
それに金持ち喧嘩せずって言うから領内が豊かならば戦う理由など普通は無いのだ。
さて、もう一つの話題は織田氏の事だ。
岩城氏の船が立ち寄った熱田で聞いたところによると、信長殿が弟の信行を討ったとの事だ。
あれだよね、仮病を使っておびき寄せて騙し討ちにしたやつ。
奥州とは違ってあちらでは史実どおりに物事が流れている様だ。
ただし、俺が既に二階堂にいるから今後はどんな影響が出るのやら。
読んでいただきありがとうございます。
史実の阿南姫は20歳ぐらいで嫁しているので少し早い時期の嫁入りとなりました。
大名の娘としては遅めですね。15歳前後で結婚する場合も多い様です。
晴宗は可愛い長女を嫁に出すのが惜しかったのでしょうか?