40 祖父と孫
楽しんでいただければ幸いです。
1551年夏 二階堂氏 ~須賀川城~
二階堂の領内は戦が終わり、人々が活発に動き出しているため交易が拡大している。
会津から須賀川、岩城へと東西へ延びる街道や南北を縦断する奥州街道を多くの人や物が往来しているのだ。
街道の整備は現在も印地隊が中心に進めていて、安積郡の街道の整備も少しずつやっている。
賦役として領民へも一部負担させているが、北条氏の様に可能な限り賦役は減らしたい。
税についても4公6民とは行かなくても5公5民程度にして行くつもりだ。
新たに領地へ組み込んだ土地では一時期のみだが税の軽減をしており、領民に二階堂へ好印象を与えることで順調な統治にも繋がっていると聞く。
稙宗様の協力で『二階堂法度』と言う分国法も制定する事が出来た。
新たな領民も多いし、交易で流入する民もいるので広まるまでは時間が掛かるだろう。
辻で講話をさせたり、物語などで要点を広めることも検討している。
識字率が低いため法度を啓示しても読める者は僅かだろうからな。
また、領内発展に必要な技術者も領外から二階堂を訪れる事が増えた。
これも伊達氏の法に倣って技術者への税制優遇措置を取っているためだ。
更に二階堂領では民の差別を禁じるふれを出している。
河原者と呼ばれる民は定住しなかったり、獣の皮の処理をする事から差別の対象となっている。
しかし、肉食を黙認している二階堂領では皆がしているので無意味な事だからだ。
おかげでその筋の技術者が縁者を頼って領内を訪れるのだ。
昨年、畿内で細川晴元殿と三好長慶殿が争って焼け出された者達も一部いる様だ。
「照行、三人目の男子が生まれたそうじゃな。めでたい、めでたい」
「本当じゃ、儂の様にたくさん子供を設けるが良いぞ婿殿」
「ありがとうございます。今のところ私にはまつ姫だけで十分ですので、ちと稙宗様の様には行かぬかと」
「「ははははっ」」
稙宗様は正室に加え、知られているだけで5人の側室を持っていた。
子供も20人以上いるらしいからマネなど出来るはずが無い。
俺にハーレム属性は無いのだ。
そして、目線を移すと同じ部屋には嫡子の行盛がいる。
「行盛、またお爺様方のところへ来ていたのか?」
「はい父上、お爺様から面白い話を伺っていました」
「行盛は素直でかわいい子じゃ」
「そうじゃのう、婿殿よりもかわいげがあって良い子じゃ」
俺にかわいげはいらないから問題無いが、それにしても最近は行盛が爺様方と仲がいい様だ。
父上にとっては初孫だし、稙宗様も現在会うことが出来る外孫と言うことでかまってくれている。
俺も忙しくてあまりかまってやれないためありがたいし、二人とも優秀な領主経験者なのでためになる話をしてくれることだろう。
しかし、大丈夫だろうか?
史実では実現しなかった天然チート爺様二人組が行盛を育成するとどうなるのだろう。
「父上、おかしなことを行盛へ教えないでくださいよ?」
「大丈夫じゃ、領土の広げ方を少し教えているだけじゃ。のう稙宗殿?」
「そうじゃ、上手く行く調略の仕方などは覚えてい置くと為になるぞ?」
「ですからこれ以上大きく領土は広げないのでやめてください!」
まずいぞ、この二人はやはり混ぜてはいけない人物だった様だ。
このままでは行盛がどんなキャラへ育つのか全く読めない。
とは言え行盛を二人から理由もなく引き離すのは問題がある。
さてどうしたものか・・・。
そう考えていると小姓が部屋の外へ座った。
「失礼いたします。田村顕頼様が晴行様と稙宗様へご面会を申し出ておりますが、お通ししてもよろしいでしょうか?」
「顕頼殿が来たか。よい、こちらにお通しするのじゃ」
な、何で二階堂へ従属して守山城主となっている顕頼殿が来るんだ?
「失礼いたします。照行様、晴行様、稙宗様お久しぶりでございます」
「よう来たの顕頼殿。また爺の話を聞きに来たのか?」
「いえいえ、お二人は矍鑠としていらっしゃいますからその様な呼び方は似合いませんかと存じます」
「ほほほ、顕頼殿はお上手じゃな。照行もこれくらい言ってもいいのじゃぞ?」
「私はいつも心の中で感謝していますから」
「「ははははっ」」
「それでは政務があるので私はここで失礼いたします。顕頼殿、後はよしなに」
こうして俺は父達の下を後にした。
チート爺二人に加え、顕頼殿まで居るところで薫陶を受けた行盛はどう育つのだろう。
後で聞いたところによると行有も時折仲間に入っているらしいぞ。
・・・うん、考えても無理、放置だな。
読んでいただきありがとうございます。
37話に二階堂氏周辺の相関図を掲載しております。(41話にも掲載予定)
また、ぼたもちさんから頂いた須賀川城周辺の地図を36話に掲載しました。