39 農業振興
楽しんでいただければ幸いです。
1550年春 二階堂氏 ~二階堂領~
「照行様、本当にこれを撒くのですか」
「ああ、ここまで熟成させたんだ。いい出来になってるはずだ」
俺が領内の内政に公に係わることが出来なのは、安積郡への侵攻を成功させた後だった。
俺は保土原行有と一緒に領内の農業試験村へ来ている。
先進的な農業を研究、試験させている村の一つだ。
今回俺がやろうとしているのは人糞肥料だ。
昔は人糞を肥料として畑に撒いていたという話は聞いたことがあると思う。
ただし、これを排泄後に短時間で農作物に与えると刺激が強すぎで良くないらしい。
なので、肥料だと思って立ち〇ョンするのは良くないことだったのだ。
昔の漫画では、田舎の描写に肥溜めが良く登場していた。
誰かが肥溜めに落ちてひどい目に遭うのを笑うシーンは定番だった。
この農村にも理由があってたくさんの肥溜めを作っている。
人糞は農作物へすぐに与えると毒になるが、長期間熟成させると微生物が分解して立派な肥料となるのだ。
江戸近郊では、農家が人糞をお金を払って購入していたらしい。
それも食べる物がいいと良い肥料になるから身分が高い人達の物は高く取引されたとのこと。
熟成期間は地域によって違っていたらしいが、ここでは関東で一般的だった10年物を中心に試すつもりだ。
以前から農家へ作らせていた肥溜めがここで力を発揮するとは感慨深い。
ワインとかじゃないのに10年物って、まあ違和感もあるけどやるしかないよね。
それでも物によっては数十年掛かる農作物の品種改良よりは結果が出るのが早いはずだ。
「それではこれを水で薄めて畑へ撒くのだ。同じ条件で撒かない畑も作って比較する」
「分かりました。皆の者始めよ」
「「へぃ」」
村の男達が肥溜めから肥料を汲み上げて水で薄め、これを畑に撒いていく。
離れて見ているが匂いが漂ってきて鼻を刺激する。
作業している者達の臭さは大変だろうな。
こんなことをやらされる農民達からは余程反感があると思っていたが最近はそうでもない。
やっている試作で農作物がたくさん採れる例が増えてきているため期待感があるようだ。
試験農家へは失敗した場合の補償もしており、多く取れれば農家の収入が増えるため進んで試験を行っている。
畑を耕す際に土へ地力上げるため腐葉土を混ぜることもあるが、殆どの山は里山として管理されているため勝手に土を取ることは禁止されている。
また、今回の肥料は農作物が育つ途中の追肥という形でも行われることから、生育にどれ程の効果が出るのか期待しているようだ。
もちろん農作物にはいろいろな菌がつくため生食は厳禁だ。
サラダとかにしたら大変なことになる。水洗いでも除菌は出来ないからね。
その辺りの衛生管理は少しずつ領内にも広まっている様だ。
幼児を中心に死亡率も下がってきている様で人口も増加していると聞いている。
更に親類などを頼って領外から流入して来る者達がいるため、人別帳の管理が大変らしいが。
「作物が出来たら褒美として行有が一番に食べてよいぞ」
「いえいえ、この方法をいち早く取り入れさせた照行様がその実りを味わうべきかと」
お互いに譲り合う俺達を見て農家の者達が笑っている。
俺と行有は今年30になったいい大人だ。
でも仕方ないじゃん。頭で分かっていても心情的に受け入れるは別だから!
実は他にも最近増やしている牛や馬の糞でも堆肥を作っている。
こっちの方は藁などと一緒に重ねて置いて、発酵すれば使えるため先行して使われていたりする。
また、狩猟で廃棄された獣の骨なども堆肥にならないかと思い、集めて一定の場所へ廃棄させている。
匂いもするので日当たりがいい谷間へ捨てており、かなり溜まっている様だ。
ん~、そう言えばこんな所から何か採れるって聞いたことがある様な…。
読んでいただきありがとうございます。
主人公はドリフをチラ見していますが記憶が定かではない設定です。
基本はお馬鹿さんなんですよ、きっと。
(注)この物語はパラレルワールドでありフィクションです。設定ですから~