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38 開発(地図あり)

楽しんでいただければ幸いです。

1549年春 二階堂氏 ~須賀川城~



「稙宗殿、二階堂領にて使う分国法の作成は進んでおりますかの」

「少しづつではあるが進んでおるところじゃ。領内の事が分からねば法が生きませんからな」

「その通りです父上。稙宗様へも急がずにやって頂くようお願いしております」

「そうか、お前がいろいろと面白いことを始めるから、それを法に落とし込んでいくのも一苦労じゃろうの」

「晴行殿、その通りなのじゃ。そこを学ばねばならぬから時間もかかるというものよ」


俺は家老達などを入れて稙宗様の助言を受けながら分国法の制定を進めている。

領内を安定的に治めるには分国法の制定が必要だからだ。

ただし、必要以上に権力を集中させると家臣の反発を招きかねない。

その為に比較的緩やかな集権制を執ろうと考えているのだ。


もちろん将来的には二階堂が主導権を握れる体制を取らなければならない。

直臣を増やして武力を家臣団だけに頼る状態を脱却することが必要だ。

また、家臣への報償も土地ではなく金銭などを充てる様にしていく。

これは功績に対して土地を与えていると、直轄地か少なくなり、それを解消する為に他領を侵略すると言う悪循環が発生するためだ。

『おきらくごくらく』をモットーとする俺には受け入れられない展開だ。


「照行、また何か始めるそうじゃな?」

「はい、以前から調べていたものがやっと見つかりました」

「照行殿、何が見つかったのじゃ?」

「安積郡の山から金が見つかったのです」

「「おおっ」」

父と義父がそろって声を上げた。


それもそのはずだ。

二階堂領内には目ぼしい鉱物資源が無く、これまで鉱山が採掘去れる事は無かった。

しかし、安積郡の猪苗代湖に近い山岳地帯で金が採掘出来ることは知識として知っていた。

南の結城領ではなく、安積郡を手に入れたかったのはこの為でもあった。

とは言え、金が採掘できる場所がピンポイントで分かるはずもないことから、数年前から信用できる一部の者に山で採取や試掘を行い鉱脈を探させていたのだ。


「今後は周りに秘して二階堂直轄で鉱山の開発を進めます」

「そうじゃな。狙われる可能性もあるから慎重に進めるべきじゃろうな」

「照行殿、蘆名氏が近いが危険ではないか?」

「恐らく蘆名氏はそれどころではないでしょう。私が熱海の地の金鉱山について猪苗代氏へ話していますし、そのうちに蘆名氏も金鉱山の事を知るでしょう。そうなればあちらへ掛かり切りのはずです」


猪苗代氏へ教えた熱海の金山は高玉金山の事だ。

正直に言って埋蔵量などから言えばここを抑えた方が、安積郡で見つけた鉱山を掘るよりも段違いにいい。

反面、あまりにも有力な鉱山であるため狙われやすいと考えている。

今の二階堂にこれ程の鉱山を防御して維持していく力は無いため、あえてここには手を出さなかった。

それに蘆名氏のように広大な領地を支える必要も無いので、軍の拡大は必要以上に行わない方針である事から、必要以上にリスクを増やすことを避けている。


「なぜ照行はそちらには手を出さなかったのじゃな?」

「儂であればぜひに押さえたいところじゃがのう。婿殿は無欲じゃ」

「分相応なもので満足するべきだと考えます。二階堂は他の所で発展させます」

領地が拡大したため一時的に開発資金が不足気味だ。

金が採掘出来れば開発資金に余裕が生まれるだろう。


ただし、資源は有限であるから今のうちに特産物を増やして発展の礎にしたいのだ。

農業関係は領内の各村で試験的に栽培実験を行っている。

今では米の増収など結果が出ているため積極的に協力してくれているようだ。

ただし、技術開発については秘匿する部分もあるので、人目に付きにくい場所で行う必要がある。


「金鉱山は直轄で開発し、同時に周辺の山を技術開発のために封鎖する予定です。なお、この仕事に『山人やまうど』の力を借りたいと考えております」

「大丈夫なのか照行、やつらは定住先を持たない山の民じゃ。情報が洩れる可能性が高くないか?」

「実は情報収集のために以前から山人へ接触しておりました。今回は協力体制を高めるため、高齢などで山の移動生活が難しくなった者達を取り込むつもりです」

「伊達でもその様な者達との接触はあった。しかし、照行殿の様に定住先を斡旋する程の待遇を用意する者はどこにもおらんじゃろうな」


山人は山岳地帯を移動して生活する定住先を持たないジプシーの様な者達だ。

呼び名は時代や地方でいろいろとあるが、明治時代までその一部が存在していた。

山伏などもこのカテゴリーに入ることがあり、各地を歩いて最新の情報を得ている彼らは俺にとっても重要な情報源の一つである。

彼らを二階堂の味方に付ければこれまで以上に情報を収集しやすくなるだろう。

それに将来の定住先があれば、そこを不安定にするような状況は好まないから、裏切る可能性も減るに違いない。


さて、これからどんな物を開発しようか。

でもよく考えて見ると自分が持つ知識は、比較的広く浅くである為肝心のところが分からない技術ばかりの様な気がする。

マジな話、小説や資料を少し読んだだけで使える技術には限界があるのだ。

これからは、トライアンドエラーで地道に開発するか。


挿絵(By みてみん)


読んでいただきありがとうございます。

伊達晴宗は天文の乱後に居城を西山城から米沢城へ移しています。

父稙宗の影響力がある場所を嫌ったのでしょうか?

(注)この物語はパラレルワールドでありフィクションです。設定ですから~

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