37 天文の乱9(相関図あり)
楽しんでいただければ幸いです。
天文の乱編最終回!少し長めです。
1547年初冬 二階堂氏 ~須賀川城~
「父上、幕府との交渉ご苦労様でした。長旅でお疲れでしょう」
「年寄りにはちと疲れたのう。まぁ、交渉も上手くいってなによりじゃった」
父晴行が幕府との交渉を終えて畿内から戻ってきた。
二階堂は六角氏や伊達氏と共に足利義輝様が将軍へ就任をする儀式の資金を用意したが、近江坂本で無事に将軍宣下を行ったそうだ。
「先代の義晴様も大変喜んでおられた。まだ若い将軍ゆえ皆で支えて欲しいとおっしゃっておったわ」
「そうですか。これは援助した甲斐があったようですね」
義輝様は義晴様が権力闘争で菅領細川晴元殿に敗れ、京から逃げて亡命生活を送っている。
幕府の体制が心細い所への援助は大きく心に残ったはずだ。
「では父上、稙宗様への和睦の仲裁についても義輝様より一筆頂いたのですね」
「おう、これじゃ」
父が書簡箱を取り出し蓋を開けて将軍の花押が入った書簡を見せてくれた。
「これで伊達氏の内乱も終結することでしょう」
二階堂と蘆名氏などが晴宗方として本宮で稙宗方の軍を破った事が契機となり、現在は最上義守殿や伊達実元殿などが晴宗方へ付いた。
形勢が逆転して陣営は晴宗殿が有利となっている。
「そう言えば、お前も二人目が出来たそうだからゆっくりしたいじゃろう?」
「父上も孫を構いたいでしょうに」
「「ははははっ」」
俺とまつ姫に二人目の男の子が授かった。
母子供に健康で名前を行憲と名付けた。
行盛を支える賢い将に育った欲しい。
「しかし、本当に大丈夫かのう。お前の最後の策は儂の想像を越えるものじゃったからなぁ?」
「これから晴宗殿と最後の交渉を行いますが、勝算は御座います」
「ふむ、まあやってみるがよい。成功すれば儲けものじゃ」
「はい、二階堂の為にもぜひ成功させとう御座います」
よし、冬の間に史実に無い結末に向けて晴宗殿と交渉だ。
1548年冬 二階堂氏 ~西山城~
「照行殿、まずは此度の幕府との交渉の件、纏めて頂き感謝する」
「とんでもございません。二階堂として晴宗殿へのお味方が遅くなり申し訳ございませんでした」
「いやいや、蘆名氏や石川氏を引き入れ、相手陣営の軍を蹴散らした働きには感服した。あれで一気にすう勢が決まったようなものだ」
田村氏との争いで寝返った史実と違って、俺が晴宗方へ引き入れた事になったので感謝しているようだ。
相馬氏や大崎氏を警戒して晴宗殿はこちらに援軍を送れなかったからな。
「これも晴宗殿が二階堂を信頼頂いたからこそです。幕府との交渉も伊達氏の後ろ盾が効きました。幕府としても今は少しでもお味方が欲しいところでしたから」
「うむ、しかし幼い義輝様を将軍に擁立するとはのう。二階堂氏は幕臣にも一族の者がおるのでこれからも頼られるであろう。今後も幕府との繫ぎを頼みましたぞ」
「承りました。それで、稙宗様は隠居を受け入れられたのですか?」
「ああ、渋々ではあったが受け入れてくれたわ。こちらにすう勢が傾き将軍からも仲裁の親書が届いた。流石にこれ以上伊達を混乱させるのは為にならぬと思うてくれた」
稙宗様ならば状況を論理的に考えればこの判断が出来るからな。
「よう御座いました。それではあちらの件も伊達氏内でご了解頂いたのでしょうか?」
「家臣の中から異論も出たが、利点もある故に俺が決断した。照行殿、よろしく頼みましたぞ」
「はい、お任せ下さい。伊達氏の同盟者として責任を持ちまする」
現在晴宗殿はある程度家臣を統制下へ置く事に成功している様だ。
家臣との力関係が史実より強くなっていると良いのだが・・・。
1548年春 二階堂氏 ~須賀川城~
「して、なぜ儂はここに居るのじゃ照行殿」
須賀川城の一室、俺の前には伊達稙宗様が座っている。
史実では隠居して伊具郡丸森城へ蟄居した稙宗様だが、俺からすればこれは勿体ない扱いだと思っていた。
優秀な統治者である稙宗様の知識をどうにかして生かしたいと思ったのだ。
そのため、隠居して蟄居する先を丸森城ではなく、二階堂の須賀川城とするよう伊達氏と交渉したのだ。
始めは難しいと考えていたこの案だったが、伊達氏にも有利な点があって許可される事となった。
まず、丸森城へ蟄居させるためには城の維持や多数の監視など必要となるため、人と金が数多く必要となる。
それに比べて須賀川城へ送れば、武田氏の様に隠居料を送るだけで良いのだ。
二つ目に、丸森城へ居ると旧勢力がそのまま近隣に居る為に、乱の再発防止を常に考えなければならないが、須賀川城へ送れば、簡単に旧勢力が稙宗様へ接触する可能性を軽減できるのだ。
三つ目は伊達氏の利点ではないが、稙宗様の待遇が良くなることだ。
伊達氏の晴宗方への家臣からすれば稙宗様は謀反人であり、場合によっては暗殺も考えられる。
しかし、二階堂へ来れば稙宗様は当主の義父であり、嫡子である行盛の祖父であるから大切なお客様となるため城内とは言え生活も自由が利くのだ。
伊達氏の為を思って争った父子だが、心の中ではどこか通じているところがあるのだろう。
「此度の件では裏で照行殿がかなり動いていた事は分かっておる。まんまとしてやられたわ」
「申し訳ございません。私が伊達内の不和を止める事は到底無理でしたので、少し利用させて頂きました」
「それで儂をどうするつもりなんじゃ照行殿」
「伊達氏へどうこうするつもりは微塵もございません。稙宗様には主に二階堂領内の法整備と振興についてご助言を頂きたいと考えております」
「ふん、儂のやり方は伊達では結果的に否定されたのじゃぞ。それなのに手伝えと言うのか?」
「はい、稙宗様なら失敗を糧に二階堂領内に合った法整備などについてご助言頂けるものと思っております」
「はぁ、照行殿は年寄りの扱いが厳しいのう。そうは思わぬか晴行殿」
「然り、然り。照行は本当に年寄りの扱いが酷いのじゃ。儂も隠居させられた上に、畿内へ使い走りに出されましたからのう」
「何と!それでは儂もこれからどんなことをさせられるのか心配じゃ。も少し親を大事にする気持ちがあるべきじゃのう」
「その通りじゃ。照行はもっと年寄りを労わるべきじゃ」
何だか話の形成が悪くなってきたようだ。
この二人は混ぜるな危険だったのかもしれない・・・。
しかし、過ぎてしまった事は仕方がない。
必要なのは、この二人をどれだけ有効活用させることが出来るかだからな。
天文の乱も終わった事だし内政ターンに移行するぞ!
読んでいただきありがとうございます。
(注)この物語はパラレルワールドでありフィクションです。もちろんご都合主義です(^^;)
あ、ストックが切れそうで毎日投稿に暗雲が・・・