表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/101

33 天文の乱5

楽しんでいただければ幸いです。

1544年夏 二階堂氏 ~須賀川城~



晴宗殿より密書が俺に届いた。

どんな重要な事が書かれているのかと思ったら、次男が生まれたとのことだった。

これって政宗の父になる輝宗か?

実は既に昨年長男も生まれていたが、久保姫を岩城氏が嫁に出す際に長男を養子に出す約束を稙宗様がしていたため、その時素直に喜べなかったようだ。

それに岩城氏は晴宗殿の陣営で戦っているので、やっぱり止めますとも言えない。


俺は手紙でお祝いを述べ、お味方するまでもう少し待って欲しいと伝えることにした。

「以上が晴宗殿より来た手紙の内容です」

もちろん俺はこの事を父晴行へ伝えた。報連相ほうれんそうは大切だ。

「全体の状況としては稙宗殿が晴宗殿を押していると言えるかの」

「はい、勢力としては稙宗様の方が厚いと感じます。ただし、このままならですが」


「そこにお前が楔を討つのじゃろう?」

「ええ、そのためにも父上にご協力いただきたいのです」

「何をすればいいのじゃ」

「京の幕府に仕える二階堂の一族へ繋ぎを付けていただきたい。幕府の権威を利用するために」


二階堂は鎌倉幕府の執事職を代々務めた氏族であり、室町幕府となってからも官僚として評定衆に名を連ねている。

ここは将来に天文の乱を終結させるための足掛かりを作っておくべきなのだ。

内政改革が上手くいっているおかげで、戦の後とは言え幕府へ寄進する程度の資金は残してある。

本当は内政に資金を投入したいが、政治的な重要度からすれば幕府との繋がりは何物にも代えがたい。


「よかろう、評定衆となっている一族の者に連絡することとしようぞ」

「ありがとうございます。これも必要な一手なのです」

「分かっておる。面倒くさがりのお前が無駄な手など打つはずがない。のう行有」

「誠にもってそのとおりかと。時折、物事を結論から話し始めて我らを困惑させる方ですから」


ひどい評価ではあるが一理ある。

俺は結果を知っているものがあるため、思い至らずに結論から話し始めてしまう事があるのだ。

更にひどいのは、俺が結論しか知らないのでそれ以外の研究等を全て丸投げしてしまう事だと思う。

家臣達の頑張りに心から感謝したい。南無www



こうして二階堂はまず家老らを京へ派遣して一族との連絡を取ることにした。

ただし、彼らが幕府の関係者と連絡を取るためには困難を極めた。

現在の将軍足利義晴は菅領の細川晴元と幕府内の権威で争い、たびたび敗れて京から近江坂本や朽木へ逃れていたのだ。

時には六角氏のところへ身を寄せる時もあったようで、会うまでにかなり苦労したらしい。

やっと彼らが二階堂領へ戻ったのは一年後の夏だった。



1545年夏 二階堂氏 ~須賀川城~



京から戻った家老の浜尾殿が報告したところによると、義晴様は菅領の細川殿に戦で何度も負けて逃げ回っている状態らしい。

本来ならば殺されていてもおかしくないが、細川殿も将軍殺しの悪名は避けたいのだろう。

そして義晴様は、子息の義輝様へ将軍を譲るお考えがあるらしい。

ただし、儀式を行う資金が無いらしく六角氏へもお願いしているが、二階堂からも援助をお願いしたい、と評定衆を務めている一族の者から言付けを受けたとのことだ。


これならば資金を援助すればこちらの『お願い』も聞いてもらえそうだ。

金子は手元にあまり無いので京の周辺で高値で売れそうな、出来るだけ嵩張らないものを来年の春までに準備しておこう。

あちらで現金化してから資金を将軍家へ献上すればよい。


その為にも来年早々には動く必要がある。

父上にはそろそろご病気になっていただいて政務から形だけ身を引いてもらおう。

そして、晴宗殿へ密書を出すのだ。お味方に付くと。

最後はこれを合図に同盟者達と田村領へ攻め入る!


読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ