26 侵攻2
楽しんでいただければ幸いです。
1540年初夏 二階堂氏 ~伊東領笹川城~
二階堂の兵は整備された街道などを使って真夜中に集まり、夜明けを待って出陣し二手に分かれて攻城戦を開始した。
俺は父晴行や須田氏らとともに笹川城攻めに印地隊を率いて加わった。
この戦いでは攻める二階堂の兵500に対し、笹川城の兵は150程度だと考えている。
電光石火の攻城戦のおかげで城側は兵を揃えられなかったようだ。
笹川城は笹川御所とも呼ばれた安積郡南部の拠点だ。
東側は阿武隈川、南側にも支流の小さな川が流れており、これを堀としてかなり大きな城郭となっている。
古くは室町幕府が安積郡支配のために鎌倉公方足利氏の縁者をこの地に派遣したことがその由来だ。
ただし、安積郡の伊東氏は独立性が高かったために支配することが出来ず、笹川御所の足利氏は周辺の蘆名氏や田村氏から攻められた時だけ盟主として担がれる程度だったようだ。
現在は伊東氏の一族がここを守っているが、熱海で猪苗代氏と諍いがあるため一部の兵をそちらに派遣していることもあって兵力は少ない。
この絶好の機会を生かし、一気に笹川城を落として安積郡を攻略して行く。
「行有、印地隊に投石機を用意させよ」
「はっ、投石機を用意せよ!」
この戦いのために用意した新兵器はチート武器ではお馴染みの投石機だ。
今回は機動力を重視するため、輸送や組み立てに容易なバリスタ式の投石機を用意した。
その中でも安定した射出が可能なトレビュシェットの制作も考えたが、あまりにも巨大なため現場での組み立てや機材の移動に問題がありそうなので検討段階で断念した。
射程や威力は劣るが木製の城門を破るだけならバリスタで十分に役目が足りるからだ。
それよりも問題となったのは笹川城までの輸送方法だった。
戦国時代では、輸送の道具として江戸時代には一般的だった『大八車』が普及していなかったからだ。
既に類似する輸送手段である牛車は貴族の乗り物として京で普及していたが、田舎の奥州では殆ど見たことがなく輸送は人力か牛馬に直接載せるだけだった。
このため俺は大工に大八車改め『荷車』の構造を教えて、試作、製造させていたのだ。
なお、街道を整備させていたため近場の笹川城までは荷車の性能を十分生かすことが出来た。
それが無ければ投石機を短時間に運搬することは不可能だったろう。
夜間の移動もまつ姫の輿入れの時に街道を篝火で照らすやり方を予行練習?していたため問題なかった。
二階堂では領民を他と比べて大切にしているから賦役にも協力的だしね。
「父上、投石器の準備が整いました。御下知を」
「よし、城門を攻めよ!」
「「はっ」」
印地隊が投石器で笹川城の城門を攻撃し始めた。
最初は射程の距離が合わずに苦労したが、調整の結果徐々に精度が上がると石が城門に当たって大きな破壊音が生まれた。
その後、半刻(1時間)も攻め続けると城門は無残な姿となり防御力も殆ど無くなっていた。
「皆の者、かかれ!」
「「おおぅ!」」
父晴行の下知で須田殿ら多くの兵が笹川城へ攻め入った。
城側からも弓や投石があるものの、印地隊の攻撃がそれを妨害して有効的なものとさせない。
城門破壊後も味方に当てないような射線で投石機が城内を攻撃する。
建物が破壊され、直撃すれば死亡確定の大きな石が飛んで来るため城側の士気は下がっていった。
無理攻めをしなくても1刻(2時間)後には笹川城が落ちた。
半数以上の兵が死傷して戦えなくなり、早急な援軍も見込めないために降伏したのだ。
「皆の者、笹川城を落としたぞ!」
「「「えい、えい、お~!えい、えい、お~!」」
二階堂の兵から歓声が上がった。
だが、戦いはこれで終わりではない。
ここからが本当の始まりだった。
笹川城の守りを須田氏に任せた二階堂の兵は、さらに二手に分かれて安積郡の拠点を攻め続ける。
父晴行は成山城、俺は大槻城へ侵攻した。
伊東氏は完全に一体ではないが、外敵が来た際には氏族が集まり纏まって戦うことが出来る。
そこで素早く各個撃破することにより、纏まる前に攻略するのだ。
印地隊の半分を行有に率いさせて父へ付けた俺は別動隊を率いて大槻城へ向かった。
1540年初夏 二階堂氏 ~伊東領大槻城~
大槻城も堀や城郭が館を囲む安積郡では大きな城だが、平城のため防御力はそれほど高くない。
これならば2、3日もあれば俺達だけでどうにか落とせそうだ。
俺達の部隊は大槻城攻略後に只野館を攻めることになっている。
父たちは成山城攻略後に郡山城へ向かう予定だ。
ただし、その頃になれば畠山氏や田村氏も安積郡へ介入する気配を見せるはずだ。
別動隊が田村氏の守山城を攻めているが、あそこは陽動なので囲むだけにして三春の援軍が来れば後退して良いとの指示を出している。
最後は伊達氏が伊東氏に泣きつかれて仲裁に入るはずだ。
後は伊達氏の仲裁までに二階堂がどこまで安積郡を支配地に収められるのかが勝負になる。
「投石機で城門を攻めよ!」
俺は印地隊へそう指示を出すと、これからの戦略をもう一度頭の中で再編成していた。
ここが二階堂にとっての正念場だ!
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