23 流通
楽しんでいただければ幸いです。
1539年春 二階堂氏 ~須賀川城~
「父上、蘆名氏との同盟、無事整いました」
「ご苦労じゃったの照行、行有」
ちなみに行有は蘆名氏の所に同行しましたが、空気だったのではなく、裏方の事務系をみんな丸投げして処理して貰ってました。
「はい、盛舜様より交易の許可も頂いてまいりました」
「それは良かったの。またお前のやりたいことが進められるではないか」
そう、俺がやりたかったことは流通改革だ。
二階堂領内には奥州街道が南北に縦断しており、これが物流の中心となっている。
次に阿武隈川を使った船による輸送や岩城街道を使った太平洋側への輸送が加わる。
ただし、岩城街道は田村領を通過するため安定的な流通ルートとは言えない。
なお、それ以外の輸送ルートは街道とはとても言えない、人ひとりがやっと通ることができる程度の道を使った交易が細々と行われていた。
今回はこれを整備して東西の流通を活発化させて、交易拠点として二階堂領を発展させたいと考えている。
「既に領内の街道整備は順調に進んでおります。こちらは須田殿と遠藤殿へ昨年よりお願いしておりますから」
当初は家臣の中からも「街道を整備すると攻められやすくなる」などと言う異論も出たが、十分な説明をした上で納得してもらった。
この街道整備は交易だけではなく、戦に勝つためにも必要な道なのだ。
これは武田氏が整備した棒道(武田道)と言われた軍事用道路の概念を取り入れている。
武田氏は領内にこの棒道と狼煙台を整備することで、高い機動力を生かした戦を行っていた。
二階堂氏には大きな軍事力(動員力)が無いため、他から攻められた場合は一斉に集まって対抗する必要がある。
街道そのものは、関などを用いればある程度敵の侵入を遅らせることができることから、兵の素早い参集を行えるように街道などの整備に力を入れることを納得してもらった。
武田に倣って関や砦に狼煙台を設置して、外敵の侵入をいち早く連絡出来る体制を整えている。
本来の目的である交易でも直接戦火を交えなかった岩城氏とは思ったよりも早く協力体制が進められている。
石鹸の製造で使う海藻灰も田畑の肥料として試験的に使うと言って運んでもらっており、石鹸の製法を秘している現在では疑われていない。
海に近い領地では畑に肥料として海藻を入れることがあるので不思議とは感じないはずだ。
また、岩城氏にとっては時折塩害により領内で不作が起こることから、米などを購入出来るルートが増えることは喜ばしいはずだ。
なにせ、南北の相馬氏や佐竹氏とは敵対しているので米の融通などして貰えないことは確定であり、米の生産地である会津からの入手が可能となれば戦略的にも大きいのだ。
その上、蘆名氏や二階堂が塩や海産物などを購入するいいお客様となってくれるのだから、余程の理由がない限りは今後も協力関係が期待できる。
将来的には、エゴマ油の生産を増やして石鹸を交易品にしたいと考えているが、京や大阪に運ぶ伝手がないので物理的手段は岩城氏へ近いうちに丸投げしようと思っている。
なお、街道の物流を活発にするため、道の整備に加えて宿場の整備や運送に使う馬や牛を他の領より買い入れている。
これは農耕や軍事目的にも転用できるので、公的資金も投入してどんどん進めているのだ。
同時に兵の増強も少しずつ進んでおり、俺が初陣した頃と比べても動員兵力は2割から3割上がっている。
農閑期における定期的な兵達の訓練や武器の向上などを合わせれば、実質5割増しと言っていいかもしれない。
内政改革による国力増強は、食糧生産の向上、生活の改善、人口の増加と確実に進んでいる。
岩城氏から海産物を購入するときに、なぜか海老が一番初めに思い浮かんだのは何かの呪いだろうか。
こうなれば、俺もこの二階堂氏における目標設定を考える必要がある。
あ、言っとくけど天下統一とか絶対無理だから。モブだからね!
読んでいただきありがとうございます。
暫定的でも評価いただければ幸いです。
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