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22 裏同盟

楽しんでいただければ幸いです。

1539年春 蘆名氏 ~黒川城~



俺は今回、ある使命を帯びて行有と蘆名氏の居城黒川城へ来ている。

「照行殿、よく参られた。して、此度はいかなることでいらっしゃったのかな」

こんなことを言っているが、既に事務レベルの折衝は済んでいる。

「はい盛舜もりきよ様、是非とも二階堂と同盟を結んでいただきたいと存じます」


一昨年に戦った者同士がこんな事を言うのに違和感を感じるかもしれないが、戦国時代なんでこんなものである。

それに先の戦がお互いに本気でないことは分かり合っているのだ。

約40万石の領地を持つ蘆名氏が本気になれば、松本城が落ちない訳がないのだ。

ちなみに二階堂の領地の石高は約5万石と言われている。8倍だ。


「我らは既に田村氏と二階堂氏に対する同盟を結んでおる。難しい話じゃなぁ」

松本城を攻める際に、蘆名氏が田村氏と同盟を結ぶのは当然だ。

だからと言って蘆名氏が二階堂と組めないわけでもない。

「盛舜様、蘆名氏と二階堂は現在、伊達氏より正室が嫁しております。おそらく、両家が争えば必ず伊達氏より仲裁が入るでしょう」


これは伊達氏、稙宗殿の外交戦略なのだが、大崎氏の例を見ても分かるように戦の仲裁に入ることで影響力を強め、最終的には伊達氏の子弟を猶子としていれて実質支配するのだ。

「そこは理解しておるのだがのう。それは田村氏も同じじゃから、あえて二階堂氏と結ぶことに利は無いぞ?」

田村氏は二階堂同じ程度の支配地域を持つので、数字の上だけではどちらを選ぶかは判断がつかない。


「盛舜様、二階堂は蘆名氏が今後も大きくなり得ると考えております。会津をそのお力で平定され、一族の反乱も抑えられた。さらに伊達氏へは稙宗殿へ正室を入れており、伊達氏に何かあれば影響力を及ぼすことすらあるでしょう」

「うむ、それで」

「しかし、現状では伊達氏の力が大きくなり過ぎ、蘆名氏がこれ以上支配を広げることは難しいでしょう」

「そうじゃな」

「それではもしもですが、近い将来に伊達氏が内部で割れればどうなるとお思いですか?」


これは俺達しか知らない天文の乱に係わることだが、現状でも内部に問題があることはすでに掴んでいる。

「稙宗殿の支配は盤石なものに見えるが、照行殿は違うと考えているのか」

「はい、稙宗殿は伊達氏へ力を集中させ、支配地や家臣の力を徐々に削いでゆく法を整えつつあります。しかし、これに反対する勢力が内部であるように見えます」

「なんと、伊達氏にも弱点があったか」


「そうです、蘆名氏が大きくなるためにはこれを利用しない手はありません。今はまだその時期ではございませんが、その際にはぜひ二階堂にも合力させていただきたく」<(_ _)>

「・・・照行殿は、儂が見えていないものが見えるらしいの。よろしい、二階堂氏との同盟を結ぼうではないか。晴行殿はよき後継を得た様じゃ、のう盛氏」

「はい父上、照行殿は優れた御仁とお見受けいたしました。大崎の戦で拝見しましたが、ここまでの方とは予想しておりませんでした。深く反省しております」


うぁ~盛舜殿と盛氏殿の評価が高すぎるぅ。

蘆名氏の英傑二人にこんな評価を受けると困るんですけどぉ。

俺はただのモブだからね。二階堂なのよ?

「身に余るお褒めのお言葉です。盛氏殿こそ御父上に並ぶ可能性がある、優れた方とお見受けしました」


「そう言ってもらえると嬉しいの。盛氏、どうじゃ?」

「はい、照行殿とはこれを機会にぜひとも誼を結んでいただければ」

なんと、友好関係を結びたいと思っていたけど、あっちからオファーが来たぞ!

「こちらに異存はございません。盛氏殿、よろしくお願いいたします」


「うむ、めでたいことじゃ。あまり表沙汰に出来ないのが残念じゃがの」

こうして俺は無事に蘆名氏との同盟という使命を果たすことが出来た。

しかし、これだけでは終わらないぞ。

「盛舜殿、実はもう一つお願いしたい儀がございます」

「照行殿はなかなか欲張りなお人じゃな。どんなことじゃ」


「二階堂領と交易を結んでいただきたいのです。実は、二階堂は石川氏、岩城氏との交易を始めております。ここを通る街道を使えば越後からだけではなく、岩城からも蘆名氏へ塩を得ることができます」

塩の他にもいろいろあるが、塩は戦略物資なので代表して上げてみた。

「ほう、二階堂氏はそこまで話を進めておったのか。伊達氏に対する合従連合とも見えるの」

「これはあくまで交易。もちろん将来のことは分かりませんが、今伊達氏を刺激するつもりは毛頭ございません」

「よろしい、交易を結ぼうではないか。して、その要衝となるは二階堂氏は大きな利益を得るのじゃろう?」

「そ、それほどの事はございませんが・・・」

「「ははははは」」


何とか笑って誤魔化したが、盛舜殿にはやはりそこまで見えるのだなぁ。

為政者として足りないものを補い合うことで国力が上がることは普通に予想できるが、経済の目線まで持っているとは。

それでも盛舜殿は最終的に蘆名氏へ利益が見えれば決断できる人なのだ。敵わない人だ。

しかし、これで南東北の東西を結ぶ交易ルートが見えてきた。

商都須賀川を目指して頑張るぞ!


読んでいただきありがとうございます。

暫定的でも評価いただければ幸いです。

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