20 輿入れ
楽しんでいただければ幸いです。
1538年春 二階堂氏 ~須賀川城~
「それでは父上、行って参ります」
「うむ、稙宗殿にもよろしくの」
こうして俺は、伊達氏の居城である西山城へ出発した。
そう『納徴の儀』である。
現代では、結納という風習になっているこの儀式は、男家が嫁をもらう代償として女家にそれ相当の金品を渡すというものであり、中国の婚礼制度の一部が取り入れられたものだ。
ちなみに、この前段となる『納采の儀』は昨秋に二階堂の家老が伊達氏へ出向き、まつ姫の母親である下館殿へ挨拶を済ませている。
おそらく輿入れは、秋の吉日になると思うので今から楽しみだ。
今回の納徴の儀では、父にあるものを伊達氏へ贈ることを伝えた。
『羽毛布団』である。
これは俺のたっての希望で作成したものだ。
俺はこの時代の寝具の寝心地に正直耐えられなかった。
だって板張りの床に畳を敷いただけなで、ベッドや布団を知る俺には寝心地が良くないのだ。
木綿すらあまり普及しておらず、麻布の夜着らしきものを掛けて寝るしかなかった。
そこで、鳥打ちで手に入れた羽のうち、矢羽に向かないものを集めさせて羽毛布団を作ることにしたのだ。
これは大成功だった!
軽く柔らかな触感が俺を包み込んで安眠へと誘う。
もちろん、父にも長生きして欲しいので作成して贈呈済みだ。
そして、義母はもちろん、義父となる稙宗殿へも羽毛布団を贈ることにしたのだ。
ただし、稙宗殿へ贈った物は特別製で絹を使っている。
今回は、日本有数の絹織物の産地である伊達領より以前に贈られた反物を使わせていただいた。
おそらく最高の寝心地だろう。
俺も試しに少しだけ横になったが最高だった。
これで伊達氏との絆はより深まったのではないだろうか?
後日、伊達領から稙宗殿が大変喜んでいるとの話を聞くことが出来た。
さらに、なぜか晴宗殿から便りが来ていたので読んでみると「俺と久保姫のために羽毛布団を作って欲しい」とのお願いが長々と書かれていた。
羽毛布団の寝心地を稙宗殿が晴宗殿に余程自慢したようだ。
晴宗殿から手紙と一緒に絹織物が付いてきたのは、これで布団を作れと言うことだと思う。
よし、将来生まれる予定の息子の嫁(史実では久保姫の長女)のためにも喜んで作らせていただこう。
1538年秋 二階堂氏 ~須賀川城~
吉日に伊達氏より俺の正室となるまつ姫が無事輿入れした。
輿入れは夕方から夜に行われるため、花嫁を迎えるため奥州街道を照らす明かりが数多く焚かれた。
婚礼で初めて花嫁の顔を見ることも多いこの時代だが、俺は例外的に西山城で会うことがかなったので安心だ。
だって、夜の輿入れで始めて見る花嫁が化粧で顔を誤魔化してたら、もはや判別不可能だぞ?
まあ、普通は政略結婚だから断れないのであきらめるだろうけどね。(しかし、速攻で離縁したケースも江戸時代はあったらしい)
その点、俺は大当たりだ。勝ち組だ!
今はまつ姫が幼いので家族計画はまだ先になりそうだけど、既に美少女だから美人さんになるのは間違いない!
婚礼の儀式で俺がまつ姫の可愛らしい顔をのぞくと頬をほんのりと染めて恥ずかしがっている。
超可愛いくて抱きしめたくなる。
その後の披露宴でも下座にいた同年代の家臣から羨望の目が集まっているのが分かる。
だったら、本当に何年も夜の独り身を我慢できるのかって?
大丈夫、こういう時に大名の嫡男にはこっそり後家さんなどがあてがわれてあっちの経験をさせるのだ。
ほら、いざという時リード出来ないと困るからね。
その時までまつ姫は愛でるだけに留めることとなる。
もちろん俺は紳士だから問題ない。
披露宴も終わり出席者もやっと帰った。
空が少し明るくなるまで続いたので最後まで付き合うのが辛かったです。
まつ姫も夜半までは披露宴に出ていたから、いろいろ気遣いはしたが本人はかなり疲れたはずだ。
さてと、明日はまつ姫の疲れを癒すために用意しているあれを作ってあげよう。
きっと好感度がさらにアップするはず!
読んでいただきありがとうございます。
あのゲームの新作キャンペーンで二階堂がコラボ!?
皆さんもぜひご応募くださ~い!